勇者会議22
『マドカ【エキドナ公式】:まぁさ、とりあえず私たちは999を目指す! そのついでに、色んな物を作ったりしてるわけなんだ!』
いつもの明るい声で、マドカは話を続けた。
『マドカ【エキドナ公式】:ふざけるなって思う人も多いと思う。実際、そうなんだろうね。ゴールの常識に合わせるなってコメントもよく見るしさ! キシリアさんもプライドさんも、変人を見るような目で私たちを見てるのがEVに映ってるし!』
「ちょっと! 私はそこまで変な目で見てないわよ!」
キシリアが慌てて反論した。
「いや、お前は結構そういう顔をしていただろうが……」
「プライド! あんたは黙ってなさい!」
そんな二人のやり取りを聞きながら、マドカは楽しそうに笑った。
『マドカ【エキドナ公式】:でも、私たちには私たちの理由があるんだよね!』
「……そうね」
キシリアは、ふっと表情を変えた。
「リゼット様のことを考えて、あなたたちはこれからの人生を生きようとしている。素敵じゃない!」
彼女は拳を握り、目を輝かせた。
「私もそんな憧れる女性を目指すわ! そして、みんなに愛されて生きていくの!」
『マドカ【エキドナ公式】:おおー! いいね! キシリアさん、頑張って!』
「ふふん! 任せなさい!」
キシリアはすっかり調子を取り戻していた。
その様子を見て、プライドは少し居心地が悪そうに頭を掻いた。
「……俺も、お前らをただのふざけた奴らだとずっと思っていた」
普段なら決して簡単には認めない言葉だった。
「だが、死ぬ思いまでして必死にレベリングしてんだろ?」
『マドカ【エキドナ公式】:んー? 最近はもう作業かなー』
「おい!! 茶化すな!」
プライドが即座に怒鳴った。
「せっかく真面目に話してんだろうが!」
『マドカ【エキドナ公式】:あはは、ごめんごめん!』
「……ったく」
プライドは大きく息を吐いた。
「お前らがリゼット殿を家族と慕ってるのは分かった。お前らはすげぇ! そこは認めてやる!」
そして、勢いよく机を叩いた。
「だがな! 今日はお前らの情報量が多すぎるんだわ! ふざけんな!!」
アナスイとシルヴァは、とうとうこらえきれず、くすくすと笑い始めた。
「ふふっ……確かに、今日は色々とありすぎましたわね」
「レベル999に不老の話、そしてジークフリートさんの過去まで……。一度に聞くには、なかなか濃い内容でしたね」
『マドカ【エキドナ公式】:でしょー? 私も話してて、なんか色々出てきたなって思った!』
「お前が言うな!」
プライドのツッコミが、再び会議室に響いた。
ひとしきり笑ったあと、マドカはふと思い出したように続けた。
『マドカ【エキドナ公式】:まぁ、あなたたちの大陸とは、まだ交流がないんだけどさー』
「……ん?」
シルヴァが顔を上げる。
『マドカ【エキドナ公式】:ゴールに行くのと、地元に帰るための転移アイテムはあげてもいいよ?』
「「「「……え?」」」」
勇者たちの声が重なった。
『マドカ【エキドナ公式】:その会場にアナスイから渡してもらえば、わざわざエキドナまで来なくてもいいんじゃないの?』
「…………」
一瞬、誰も反応できなかった。
アナスイが、ゆっくりと瞬きをする。
「……わたくしが、渡すのですか?」
『マドカ【エキドナ公式】:うん! ゴールと、それぞれの地元を行き来できるようになったら便利でしょ? もちろん、使い方とか注意点はちゃんと説明するよ!』
「ちょ、ちょっと待ちなさいよおおおおお!!」
キシリアが椅子から立ち上がった。
「それって、他の大陸と行き来できるようになるってこと!? そんな重大な話を、どうして今そんな軽い感じで言うのよ!?」
「……おい、マドカ」
プライドも、今度ばかりは笑っていなかった。
「お前、さっきまで情報過多だって言われてたのを聞いてなかったのか?」
『マドカ【エキドナ公式】:え? だって、便利じゃない?』
「便利とかそういう問題じゃねえんだよ!!」
アナスイとシルヴァは顔を見合わせた。
そして、二人そろって苦笑した。
「……これは、持ち帰って慎重に検討する必要がありますわね」
「ええ。交流のない大陸同士をつなぐとなれば、移動手段以上の意味を持ちますからね」
勇者たちは、改めて画面の向こうの少女を見つめた。
レベル999を目指すついでに、飛空艇を作る。
そのついでに、他大陸との転移手段まで提供しようとする。
「……本当に、何なんだよ、エキドナって……」
プライドの呟きに、今度は誰も反論しなかった。
『マドカ【エキドナ公式】:てか、今さらじゃない? シルヴァもアナスイも、なんかいつの間にか「エキドナのメンバーですが何か?」みたいな顔して、正式メンバーになってない状態で屋敷を歩いてたじゃん!』
「ちょっと待ってくださいまし!?」
アナスイが思わず声を上げた。
「いえ、確かに最初はそうでしたけれど、あれは色々と事情がありまして……!」
「そうなの!?」
キシリアが勢いよく二人を振り返った。
「自称なのは、あんたたちもなんじゃない!」
「自称ではありません! 今はきちんと正式メンバーですわ!」
アナスイが慌てて訂正する。
「ええ。僕たちは正式にエキドナのメンバーとして認められていますよ」
シルヴァも苦笑しながら補足した。
「……いつの間にか、そこまで馴染んでいたのか」
プライドが呆れたように呟く。
『マドカ【エキドナ公式】:まぁ、そうだね! 勇者の仕事が、ただの間引き程度で終わらずに、国の仕事もしっかりしてくれるなら、エキドナは何も言わないよ!』
「間引き程度って……」
シルヴァが小さく苦笑した。
『マドカ【エキドナ公式】:他の勇者さんたちも、息抜き程度で遊んだら? まだ若いんだしさ!』
「十三歳が言うな!」
プライドのツッコミが飛んだ。
『マドカ【エキドナ公式】:えー? でも、ずっと勇者の仕事ばっかりしてるのも大変でしょ? たまには違う場所で過ごすのもいいと思うけどなー』
「……それは、まあ」
プライドも否定しきれず、口をつぐんだ。
キシリアは腕を組み、何やら考え込んでいる。
「つまり、エキドナに行って遊ぶのも、勇者としての仕事をきちんとしていれば問題ないってこと?」
『マドカ【エキドナ公式】:そうそう! もちろん、国の仕事を放り出して遊び回るのは駄目だけどね!』
「なるほど……!」
キシリアの目が輝いた。
「それなら私もエキドナに行ってみたいわ! どんなところなのか、ずっと気になっていたのよ!」
『マドカ【エキドナ公式】:おいでおいで! 歓迎するよ!』
「……おい、勝手に話を進めるな」
プライドは頭を抱えたが、マドカは気にした様子もない。
『マドカ【エキドナ公式】:まぁ、私が言いたいのはさ……』
そこでマドカは、少しだけ声の調子を変えた。
『マドカ【エキドナ公式】:色欲と強欲は、勝手に行き来してるくせに、他の三人に渡すのを渋るのって、どうなの?』
「…………」
アナスイとシルヴァの動きが止まった。
「……マドカさん?」
「いや、ちょっと待ってください」
二人が同時に声を上げる。
『マドカ【エキドナ公式】:だって、二人はもうエキドナに来て、屋敷も歩き回って、色んなことをしてるでしょ? なのに、他の勇者さんたちには行き来する手段を渡さないほうがいいって考えるのは、ちょっと不公平じゃない?』
「そ、それは……」
アナスイが言葉に詰まった。
シルヴァも困ったように頬を掻く。
「……確かに、僕たちだけが自由に行き来できる状態というのは、説明が難しいですね」
「ええ……。交流のない大陸への移動手段を簡単に渡していいのか、という問題を考えていたのですけれど……」
アナスイはそこで、はっとしたように顔を上げた。
「そもそも、わたくしたちはすでに行き来している側ですものね……」
『マドカ【エキドナ公式】:そういうこと! もちろん、渡すなら使い方やルールは決めるよ? でも、最初から駄目ってする必要はないんじゃないかな!』
『正論で殴られる色欲と強欲w』
『自分たちは行き来自由なのに、他の三人には駄目って言いづらいな』
『マドカ、十三歳なのに外交問題の核心を突いてくる』
『勇者会議、いつの間にか大陸間交流の相談になってるぞ!』
「……分かりましたわ…」
キシリアが、ぱっと顔を輝かせた。
「つまり、私たちもエキドナに行ける可能性があるってことね!」
「まだ決まったわけではありませんわ!」
アナスイが慌てて釘を刺した。
「そうですね。移動手段の管理や、各国との調整も必要ですから」
シルヴァはそう言いつつも、完全に否定することはできなかった。
プライドは二人を見て、深々とため息をついた。
「……お前ら、もうエキドナ側の人間みたいになってんじゃねえか」
「「正式に認められてます!」」
二人の声が重なった。
『マドカ【エキドナ公式】:まぁそうだね 私達が飛空艇計画をしようとしてる時点で絡んできそうで面倒だし覚悟はあるか聞いたらやるって言ったからメンバーにしたんだよ』
「なるほどね!!」




