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落内円は落ちている  作者: 七風


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勇者会議14

『マドカ【エキドナ公式】:あ、忘れてた!』


「……ん?」


 EVの画面に再びマドカの名前が表示された瞬間、傲慢の勇者が露骨に顔をしかめた。


「おい! また来たぞ!」


『マドカちゃん、おかえりw』

『何か思い出した顔してる』

『さっき帰ったばかりじゃないかw』


『マドカ【エキドナ公式】:さっきアーノルドの話してたでしょ? なんか用があったのかなーって』


「おや、どうしたんです?」


 シルヴァが興味深そうに画面を見つめる。すると、待ってましたとばかりにキシリアが身を乗り出した。


「そうよ! マドカ! それが聞きたかったの! なんで暴食の勇者がエキドナにいるのよ!」


『そこが気になってたw』

『確かに、勇者が他国の組織に所属してるってどういうこと?』

『本人がいないところで話題になってたもんな』


『マドカ【エキドナ公式】:んー……じゃあ、アーノルド呼んでくるから待っててね!』


「いや、ちょっと待て!」


 傲慢の勇者が思わず声を上げた。


「呼んでくるって、そんな気軽に呼べるのかよ! あいつ勇者だろ! ここに来させろよ!」


「さすがに『来い』は無理ですわよ」


 アナスイが呆れたように肩をすくめた。


「あの方、『俺はエキドナの料理人だ』としか言いませんもの。たまに暴食の大陸へは行っているようですから、勇者としての仕事もしているのではありません?」


「んならいいがよ!」


『料理人という認識でいいのか、暴食の勇者w』

『本人の肩書きが強すぎる』

『勇者会議で呼び出される料理人、なかなかいないぞw』


 しばらくして、EVの画面に新しい公式アカウントのコメントが表示された。


『アーノルド【エキドナ公式】:なんか用か?』


「来たわね!」


 キシリアは待ち構えていたかのように、すぐさま問い詰めた。


「あなた! なんでエキドナに就職してるのよ!」


『直球www』

『挨拶より先にそこかw』

『キシリア様、ずっと気になってたんだな』


『アーノルド【エキドナ公式】:いや、俺は怠惰のダンジョンで配信をしてたら、リゼットさんにスカウトされただけだが』


「……は?」


 キシリアが固まった。


 傲慢の勇者も、思わず眉をひそめる。


「スカウト? 配信? いや、待て。そもそもなんで怠惰のダンジョンにいたんだ?」


『マドカ【エキドナ公式】:あー、それ私も聞きたかったけど、まぁいいかってほっといたやつ! なんで暴食の勇者が怠惰にいたの?』


「確かにおかしいよな!」


 傲慢の勇者も勢いよく頷いた。


「暴食の大陸の勇者が、どうやって怠惰のダンジョンに行ったんだよ!?」


『アーノルド【エキドナ公式】:いや、俺は王都の外を散歩していたら転移魔法陣を見つけたんだ。それで入ったら怠惰の二十階層だったのだが……』


「はああああ!?」


 キシリアの叫びが、勇者会議の会場に響き渡った。


「そんな偶然ありえるわけないでしょうが!!」


『偶然で二十階層!?』

『転移魔法陣を見つけて入ったら、って軽く言ってるけど大事件では?』

『そもそも王都の外にそんなものがあったのか?』


「初耳ですわね……」


 アナスイもさすがに驚いた様子で目を瞬かせた。


 しかし、マドカだけは何かを思い出したように声を上げた。


『マドカ【エキドナ公式】:ああ、あれかぁ!』


「おや?」


 シルヴァがすぐさま反応する。


「マドカさん、何かご存じなんですか?」


『マドカ【エキドナ公式】:うん! エキドナが怠惰の最難関ダンジョンをクリアしたのは知ってるよね?』


「ええ、もちろんですわ」


 アナスイが頷いた。あのダンジョンを攻略したという話は、勇者たちにとっても無視できない実績だ。


『マドカ【エキドナ公式】:昔、あそこには大きなダンジョン都市があったみたいでね。各国に通じた転移魔法陣もあったらしいの』


「それが暴食につながってたってこと!?」


 キシリアがすかさず声を上げた。


『アーノルド【エキドナ公式】:そういうことなのか?』


『マドカ【エキドナ公式】:あはは、いや、ちょっと違うかな!』


 マドカは楽しそうに続けた。


『マドカ【エキドナ公式】:エキドナがまだ弱かった頃、十九階層でよく修行してたの! それで、ティニアって子とで十九階層をうろうろして遊んでたんだけどさー。二十階層にはモンスターがまったく湧かないセーフティーエリアがあるって分かってたから、そこで休んでたわけだね!』


「……は?」


 傲慢の勇者の顔から、表情が消えた。


「お前、何歳なんだよ……。ダンジョンの十九階層を二人で、だと……?」


『マドカ【エキドナ公式】:十三歳!当時だと冒険者登録して1か月くらいだから十二歳』


『十ニ歳!?』

『待って、そこに一番驚くところ!?』

『十九階層をペアで修行ってどういうことだよw』

『マドカちゃん、さらっととんでもない過去を出してきたな』


『マドカ【エキドナ公式】:でね、そこの転移魔法陣はもう全部壊れてたはずなんだけど、誰もいなかったから全力を出してみようって思ったわけ! そしたら空間がゆがんで、暴食の転移魔法陣の残骸あたりに変な反応があってさ! そのまま吸い込まれて暴食! 笑えるよね!』


「笑えないわよ!!」


 キシリアのツッコミが、再び会場に響き渡った。


『マドカちゃんの「笑えるよね!」で済ませていい話じゃないw』

『十ニ歳の頃から規格外すぎる』

『そもそも全力を出したら空間がゆがむって何!?』


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