勇者会議11
「まあ、僕たちは転移アイテムでいつでも帰れますので、無料ですけどね」
シルヴァが、いつもの調子でさらりと付け加えた。
『…………』
『おいwww』
『今それ言う必要あった!?』
『五万金貨の話をした直後にそれは草』
『エキドナのメンバー、移動費すら気にしてなさそうw』
「……あんた、一言多いのよ!!」
キシリアが勢いよく叫んだ。
「えっ!? いや、事実を説明しただけですが!?」
「それが一言多いって言ってるのよ! こっちは五万金貨をどうやって用意するか考えてるのに、あんたたちは転移アイテムで無料です、って! 嫌味!? 嫌味なの!?」
「そ、そんなつもりはありませんよ!」
シルヴァは慌てて両手を振った。
「ただ、僕たちの場合は帰還手段が別にあるので、転移魔法陣の通行料を払う必要がないというだけで……」
「だから、それを今言わなくていいでしょうが!!」
『シルヴァさん、悪気がないのが一番ひどいw』
『嫉妬様の気持ちも分かるw』
『自分たちは転移アイテムで移動できる、一般利用者は一回金貨一枚』
『エキドナの便利さがまた一つ判明したな』
『シルヴァ、火に油を注ぐ天才か?』
「……ふっ」
憤怒の勇者が、口元をわずかに緩めた。
「おい、憤怒! 笑ってるんじゃないわよ!」
「……いや、別に」
「絶対笑ったでしょう!?」
「……気のせいだ」
「そんなわけないでしょうが!」
キシリアが憤怒に食ってかかる一方、傲慢の勇者は腕を組んで考え込んでいた。
「しかし、転移アイテムまで持ってるのか……。転移魔法陣を設置してもらう費用だけじゃなく、エキドナ自身はその設備に頼らず大陸間を移動できるってことだろ?」
「ええ。少なくとも、僕たちはそうですね」
シルヴァが答える。
「……なんなんだよ、あいつら」
傲慢の勇者は、呆れたように天井を仰いだ。
「技術もある、資金もある、転移手段まである。しかも、ダンジョンを攻略したり、飛空艇を造ったり、店まで出そうとしてるんだろ?」
「そうですわね。活動の幅は、これからも広がっていくのではありませんかしら」
アナスイが優雅に微笑む。
「……もういいわ」
キシリアは椅子に深く腰掛け、疲れたように額を押さえた。
「エキドナの連中が便利なのは、もう十分に分かったわよ……」
「それなら、話は早いですね」
「シルヴァ、あんたは少し黙ってなさい!!」
「はい……」
『即座に黙らされてて草』
『今日のシルヴァさん、何回怒られてるんだw』
『本人はずっと普通に説明してるだけなのに』
『エキドナの情報を聞くたびに勇者たちの胃が痛くなる会議』
こうして、転移魔法陣の設置費用や国同士の契約についての話は、ひとまず一区切りとなった。
ただ、キシリアの中では新たな疑問が生まれていた。
――転移アイテムまで使えるエキドナは、いったいどこまでのことを実現できるのか。
そして、それを知るためには、やはり直接会って話を聞く必要があるのではないか。
「……やっぱり、一度くらいエキドナの連中を色欲に呼ぶべきかしら」
「おや。ようやく素直になりましたわね」
「情報収集よ!!」
アナスイの一言に、キシリアの声が再び会場に響き渡った。




