勇者会議7
「他にも何かあるんじゃないの!? 教えなさいよ!」
嫉妬が机に身を乗り出し、シルヴァへと迫った。
「エアバイクに大型飛空艇……。まだ何か隠してるんでしょ!?」
「隠しているというわけではないんですが……そうですね」
シルヴァは少し考え、ふと思い出したように口を開いた。
「あ! 女性向けファッションアイテムのお店がオープンする予定ですね」
「女性向け!?」
嫉妬の目が輝いた。
「なんだよ、女向けかよ」
傲慢は興味を失ったように椅子へもたれかかる。
「ちょっと! あんたは黙ってなさい!」
「はぁ!? なんでだよ!」
「今、大事な話をしてるの!」
「お前にとって大事な話だろうが!」
二人の言い合いをよそに、シルヴァは説明を続けた。
「香水や、希少素材で作ったアクセサリー、ドレス。それから、和の国の生地を使った和装も取り扱う予定だそうです」
「和装まであるの!?」
嫉妬が食いついた。
「ええ。ほかにもバッグや、髪色や髪型を一瞬で変えられる魔道具なども扱う予定ですね」
「髪色も髪型も、一瞬で!?」
「そういう魔道具も開発されているようです。着替えやおしゃれを楽しむ際に、便利なのではないでしょうか」
「なによそれ……! すごく便利じゃない!」
嫉妬は興奮した様子で、次々と商品を想像しているようだった。
『女性向けのお店!? 急に話の方向が変わったぞw』
『希少素材のアクセサリーは気になるな』
『和の国の生地を使った和装って、どんなデザインなんだろう』
『髪色と髪型を一瞬で変えられる魔道具!? それは便利すぎる』
『毎日違う髪型にできるってことか?』
『いや、待て。髪型を変える仕組みが気になるんだがw』
『嫉妬、さっきから食いつきがすごいwww』
『傲慢との温度差よw』
「それから、コボルトや猫たちのペット用品もありますね」
「ペット用品?」
嫉妬が聞き返す。
「はい。首輪やアクセサリーなど、ペットたちと暮らす人向けの商品も扱う予定だそうです」
「……なるほど。そっちも需要がありそうね」
アナスイが上品に頷いた。
「ジュリエットたちにも似合うものがあるかもしれませんわね」
「ええ。あとは、クリスティーナ公爵夫人がデザインした作品なども扱う予定だそうです」
「クリスティーナ公爵夫人の作品まで!?」
嫉妬はまたしても声を上げた。
「ちょっと待って! それって、普通のお店じゃなかなか手に入らないような品も並ぶってこと!?」
「品揃えの詳細までは僕も把握していませんが、そうした作品も取り扱う予定だと聞いています」
「……エキドナって、いったいどこまで手を広げてるのよ」
嫉妬は額に手を当てた。
空飛ぶ乗り物を量産し、巨大な空中リゾートを建造し、今度はファッションアイテムの店まで開こうとしている。
活動の幅が広すぎて、もはや一つの組織として捉えていいのかすら分からなくなってきた。
「それと、トライアングルのステージ衣装を模した商品なども販売する予定でしょうか」
シルヴァが付け加えた。
「トライアングルのステージ衣装……」
嫉妬の声が、ぴたりと止まった。
先ほどまでの興奮とは、明らかに違う反応だった。
「……それは、取り寄せできるの?」
少し身を乗り出し、慎重に尋ねる。
「ええと……ゴール限定じゃないです?」
「ゴール限定……?」
傲慢が眉をひそめた。
「なんだそれ?」
「ゴール限定っていうのは、トライアングルの衣装を模した商品が、ゴールでしか買えないんじゃないか、という意味ですわね」
アナスイが説明すると、嫉妬は慌てて首を振った。
「ち、違うわよ! 別に欲しいって言ったわけじゃないでしょ! 取り寄せできるか聞いただけよ!」
「まだ販売方法が決まっていないなら、取り寄せに対応するかどうかも分からないですね」
シルヴァは苦笑した。
「そのあたりは、お店の運営側が決めることになると思います」
「そ、そう……。なら、いいわよ」
嫉妬はそっぽを向いた。
だが、配信画面には、彼女の反応を見逃さなかった視聴者たちのコメントが流れていた。
『トライアングルの衣装に反応したwww』
『さっきまで商品全般に食いついてたのに、今の反応は別格だぞw』
『取り寄せできるか確認するの、大事ですよね!』
『情報収集の一環ですもんね、分かりますw』
『ゴール限定かどうか、本人が一番気にしてそう』
『これ、店がオープンしたら嫉妬が一番詳しくなってるやつでは?』
『エキドナの新事業を聞く会議が、いつの間にか買い物相談になってるw』
「コメント! 余計なことを書かないで!」
嫉妬が画面へ向かって叫んだ。
「ふふっ。ですが、女性向けの商品は、わたくしも少し気になりますわね」
アナスイは楽しそうに微笑んだ。
「香水やアクセサリーだけでなく、和装まであるのでしょう? ジュリエットたちの用品も含めて、どのような品揃えになるのか楽しみですわ」
「僕も、技術的な面では髪色や髪型を変えられる魔道具が気になりますね。どのような仕組みで実現しているのか、興味があります」
「……あんたたちまで興味を持つの!?」
嫉妬は二人を振り返った。
「ええ。面白そうですから」
シルヴァはあっさり答えた。
「まぁ、まだオープン前ですし、詳しい商品や販売方法はこれから決まる部分もあるのでしょうね」
アナスイが話をまとめる。
「そうですわね。エアバイクも大型飛空艇も、そしてファッションのお店も……エキドナは、まだまだ新しいことを始めるようですわ」
「……本当に、何なのよあの組織」
嫉妬は呆れたように呟いた。
しかし、その表情からは、もはや警戒だけではない感情が見て取れた。
空飛ぶ乗り物も、空の上のリゾートも、希少素材を使ったアクセサリーも。
エキドナが次々と生み出すものは、どれも彼女の好奇心を刺激してやまないのだった。




