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落内円は落ちている  作者: 七風


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勇者会議3

「それで、あんた達どう変わったのよ!」


 憤怒の一言で話が途切れたところに、嫉妬が身を乗り出した。


 アナスイとシルヴァへ向けられた視線には、先ほどまでのエキドナへの疑念とは別の、純粋な興味が混じっていた。


「どう、とは?」


 アナスイが首を傾げる。


「だから! エキドナに所属するようになって、何が変わったのかって聞いてんのよ! 装備をもらったとか、強くなったとか、そういう話でしょ!」


「要は、エキドナってのは何なんだって事だろうが!」


 傲慢が横から乱暴に言葉を挟んだ。


「勇者協会に所属してるくせに、別の組織にまで所属する。しかも、そこの装備やら支援やらを受けてるんだろ? いったい何を企んでやがる!」


 会議場の空気が、再び少しだけ張り詰める。


 配信画面にも、視聴者のコメントが次々と流れ始めた。


『嫉妬、そこが一番気になってたのかwww』

『質問が直球すぎるw』

『いや、でも実際に所属してる二人の話は聞きたい』

『傲慢、疑問自体は分かるけど言い方ァ!』

『エキドナって何をする組織なのか、まだ全貌が見えないんだよな』

『装備を配るだけの組織じゃないのは確かっぽいけど』

『嫉妬は今にも装備の性能を聞き出しそうwww』


「企んでいる、ですか……」


 シルヴァは困ったように笑った。


「少なくとも、僕たちは勇者協会を辞めたわけではありませんよ。今までどおり勇者としての仕事も続けていますし、協会からの支援や給料も変わっていません」


「そうですわね。エキドナに所属したからといって、これまでの立場を捨てる必要はありませんもの」


 アナスイも落ち着いて答えた。


「じゃぁ、エキドナは何のための組織なんだ?」


 今度は傲慢が問い返す。


 アナスイは少し考えてから、言葉を選んだ。


「ひと言で説明するのは難しいですわね。技術開発もしますし、装備の製作もします。ダンジョンの攻略や素材の収集、それから配信活動もしていますわ」


「……随分と手広いんだな」


「ええ。ですから、単純に勇者を支援するためだけの組織、というわけでもありませんわ」


 シルヴァが頷いて続ける。


「僕自身、発明家として技術面で協力できることもあります。エキドナから受け取るものがある一方で、僕たちも自分の知識や能力を活かして組織に貢献する。そういう関係ですね」


「なるほどね……」


 嫉妬は腕を組み、二人をじっと見つめた。


「じゃあ、所属したことで強くなったの? 装備が変わったのは配信で見たけど、それだけじゃないんでしょ?」


「少なくとも、新しい装備によって戦闘の選択肢は増えましたわ。以前なら届かなかった距離にも攻撃できますし、動きやすさも向上していますもの」


「僕も同じです。装備だけでなく、技術や道具について学べる機会も増えました。これから先、どれほど成長できるかは自分次第ですが、得られるものは多いと感じています」


『おっ、やっぱり装備はかなり変わってるんだな』

『以前なら届かなかった距離って、武器の射程が伸びたのか?』

『動きやすさも向上……防具も改良されてるってことかな』

『技術まで学べるのは大きいな。装備をもらって終わりじゃないのか』

『嫉妬、質問がどんどん具体的になってるwww』

『そのうち装備の詳細を根掘り葉掘り聞きそう』


「ふん。結局、優れた装備を与えられているだけじゃねぇか!」


 傲慢は鼻を鳴らした。


「それだけでエキドナが特別な組織だとでも言うつもりかよ?」


「誰もそんなことは言っていませんわ」


 アナスイは微笑みを崩さずに返した。


「ただ、わたくしたちは実際に恩恵を受けています。それを否定するつもりはありませんし、だからといって勇者としての責任を放棄するつもりもありませんわ」


 傲慢は不満そうに舌打ちしたが、今度はすぐに反論しなかった。


『協会を辞めたわけじゃないのか』

『勇者活動とエキドナの活動は両立してるんだな』

『装備だけじゃなくて技術交流もあるのか』

『結局、エキドナの全容はまだ分からないな』

『でも所属してる二人が普通に説明してくれるのはありがたい』

『傲慢、装備の話に持ち込もうとしてるけど、二人とも別に隠してないんだよなw』

『そもそも、装備が良いだけで全部説明できるなら苦労しないんだよなぁ』


 嫉妬はコメントをちらりと見てから、改めて二人に尋ねた。


「それで、あんた達はエキドナに入ってよかったと思ってるわけ?」


「ええ。わたくしはそう思っていますわ」


 アナスイは迷わず答えた。


「僕もです。新しい仲間と出会えましたし、これまで知らなかった技術や考え方にも触れられましたから」


 二人の返事には、取り繕った様子がなかった。


『あ、これは本当に満足してる顔だ』

『給料も立場もそのままで、新しい技術や仲間まで得られるなら、そりゃメリットは大きいよな』

『もちろん、実際に何を得られるかは人それぞれだろうけど』

『二人とも自分の言葉で答えてるのがいいな』


 嫉妬は一瞬だけ黙り込み、それから小さく鼻を鳴らした。


「……ふうん。まあ、本人たちが納得してるならいいけど」


 そう言いつつも、まだ聞きたいことが残っているらしい。


 会議は、エキドナという組織の実態を探る方向へと、少しずつ話題を移していった。


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