お披露目
# エキドナの修行編――新装備と自称勇者のこだわり
エキドナの拠点。
この日は、新しく仲間に加わったアナスイ、シルヴァ、メアリーの三人にとって、少し特別な日だった。
三人の前には、グレタ、ニコラ、カトリーヌの三人が用意した新しい装備が並べられている。そして、その隣には、いつものように妙に自信満々な表情を浮かべたジャスティスが立っていた。
「ふふふ……ついにこの時が来たか。新たな装備を得た仲間たちとともに、己の力を磨く修行の時が!」
「ジャスティス、あなたは何も新しい装備を受け取っていないでしょう」
「装備の有無など些細な問題だ! 重要なのは、己の魂を燃やし、限界を超えることなのだからな!」
「そういうところが疲れるんですわ……」
アナスイは呆れたようにため息をついたが、目の前に置かれた装備を見ると、すぐに表情を明るくした。
赤を基調としたドレスアーマー。その装飾は華やかだが、動きやすさを損なわないように設計されている。そして、隣には深紅の刀身を持つ長剣が用意されていた。
「まあ、素敵ですわ! 以前の装備も悪くありませんでしたけれど、これは見た目からして違いますわね。防具なのにドレスの美しさを損なっていませんし、剣も私にぴったりの色ですわ!」
アナスイは剣を手に取り、軽く振ってみた。重さの偏りがなく、手に吸い付くような感覚がある。少し動かしただけでも、以前の武器との違いがはっきりと分かった。
「……驚きましたわ。こんなに軽やかに扱えるなんて。見た目だけではなく、実際の戦闘でもかなり動きやすそうですわね」
「防具は動きやすさを優先して調整したんだ~。アナスイは剣を振るときの動作が大きいから、その邪魔にならないようにしてあるよ~。剣のほうも、君の魔力を通しやすい素材を使っているから、実際に戦えばもっと違いが分かると思うな~」
ニコラがのんびりと説明すると、アナスイは嬉しそうに剣を見つめた。
「ありがとうございますわ。せっかくここまで整えていただいたのですもの。きちんと使いこなしてみせますわ!」
その隣では、シルヴァが青を基調とした軽装鎧に袖を通していた。
装飾は必要最低限に抑えられているが、細部の仕上げは丁寧だ。武器として用意された剣は、淡い水色の刀身を持っている。光を受けると、刃の内側を水が流れているかのように、かすかな輝きが走った。
シルヴァは剣を手に取り、何度か構えを変えて感触を確かめた。
「これは……想像以上ですね。軽いだけではありません。剣を構えたときの安定感もありますし、魔力を流した際の反応も以前とはまるで違います」
「シルヴァは水魔法を使うからね~。剣にも水属性との相性がいい素材を選んであるよ~。魔法を使いながら接近戦もするなら、武器の重さや魔力の伝わり方は大事だから~」
「なるほど。単純に強度を上げるだけではなく、使用者の戦い方に合わせて調整してあるのですね」
シルヴァは納得したように頷き、剣を軽く振った。
「これなら、魔法を使った直後でも次の動作に移りやすそうです。ありがとうございます。期待に応えられるよう、しっかりと訓練します」
最後に、メアリーが新しい装備を受け取った。
彼女の前に用意されていたのは、魔法使いらしいローブと一本の杖だ。杖の先端には、世界樹の枝から作られた素材を加工した結晶が取り付けられている。淡い光をたたえた結晶は、周囲の魔力に反応するようにきらきらと輝いていた。
「えっ、これが私のですか!? すごい……! この結晶、普通の魔石とは全然違いますよね?」
メアリーは杖を両手で受け取り、慎重に持ち上げた。
「世界樹の枝から作った素材を使っているのよ。魔力の通りをよくするために加工してあるわ。ローブのほうも、魔法を使うときに動きを妨げないようにしてあるから、まずは実際に使って確かめなさい」
カトリーヌが説明すると、メアリーは目を輝かせた。
「世界樹の素材って、そんなに簡単に使っていいものなんですか!? 私、まだ修行中なのに……!」
「だからこそ、使いこなせるようになりなさいな。せっかく用意したのだから、飾っておくだけでは意味がないでしょう?」
リゼットがあっさりと言う。
メアリーは慌てて背筋を伸ばした。
「は、はい! 絶対に使いこなしてみせます!」
杖を握り直し、試しに魔力を流してみる。
すると、結晶が淡く輝き、杖の先端に小さな光の粒が集まった。
「わっ……! すごい! いつもより魔力が素直に流れます! 今までなら、もっと集中しないといけなかったのに……!」
「それだけ扱いやすくなったということだな。だが、道具がよくなったからといって、使い手まで自動的に強くなるわけじゃない。そこは勘違いするなよ」
グレタが釘を刺す。
「分かっています! 装備に頼りきりにならないよう、ちゃんと練習します!」
「よし。その意気だ」
グレタは短く頷いた。
三人が新しい装備を確かめている間、ジャスティスは腕を組み、満足げにその様子を眺めていた。
「素晴らしい! 新たな装備を手にした者たちの瞳には、未来を切り開く輝きが宿っている! ならば、次に必要なのは――」
「修行よ」
ジャスティスの言葉を、リゼットがあっさり遮った。
彼女は三人とジャスティスを見渡すと、面倒くさそうに肩をすくめた。
「あなた達、弱いんだから修行しなさい。新しい装備を用意してもらったのなら、ちゃんと使いこなせるようにならないと意味がないでしょう?」
「うっ……!」
メアリーが思わず言葉に詰まる。
アナスイも苦笑し、シルヴァは静かに頷いた。
「おっしゃる通りですわ。私たちがエキドナの仲間として活動していく以上、今のままでは力不足ですものね」
「僕も同意します。装備が優れていることと、自分自身が十分な戦力であることは別の話ですから」
「わ、私も頑張ります! リゼット様のお弟子として、いつまでも未熟なままではいられませんから!」
三人が素直に受け入れる一方で、ジャスティスは胸に手を当て、芝居がかった仕草で顔を上げた。
「無論だ! この俺もまた、さらなる高みを目指す者! いつの日か真の英雄として認められ、怠惰の勇者の称号を継ぐにふさわしい存在となるため、鍛錬を怠るわけにはいかぬ!」
「はいはい。まずはSランクになって、ちゃんと実績を積みなさいな。話はそれからよ」
リゼットは興味なさそうに手を振った。
「くっ……! 確かに、今の俺はまだAランク! だが、Sランク冒険者となり、国の危機を救うような功績を打ち立て、強大な魔物を討ち果たしたならば! 誰もが俺を認めざるを得なくなるはずだ!」
「そういうことよ。自称するだけなら自由だけれど、周りに認めてもらいたいのなら結果を出しなさいな」
「その言葉、胸に刻もう! いつの日か必ず、あなたに認めさせてみせる!」
「はいはい。期待しないで待っているわ」
リゼットの反応は実にそっけなかった。
それでもジャスティスは、まるで大きな試練を与えられたかのように力強く頷く。
その様子を見て、アナスイが小さな声でシルヴァに話しかけた。
「……あの方、いつもあんな感じなんですの?」
「ええ。本人は至って真剣ですから、あまり気にしないほうがいいと思います」
「そ、そうですか……。真剣なのは分かるのですけれど、どうしても勢いに圧倒されてしまいますわね」
メアリーもこっそり頷いていた。
そのやり取りを見ていたリゼットは、三人とジャスティスへ手を向けた。
「それじゃあ、そろそろ始めるわよ。準備はいいわね?」
「いつでもどうぞ」
「私も問題ありませんわ」
「は、はい!」
「ふふふ……! いざ、己の限界を超える戦いへ!」
「その前に、あなたの詠唱を少し短くするところから始めたほうがいいんじゃないかしら」
「なにっ!?」
ジャスティスが驚いて振り向いたが、リゼットは気にする様子もなく魔法を発動させた。
次の瞬間、周囲の景色が一変した。
彼らが転移した先は、魔物の気配が漂うダンジョンの一角だった。
石造りの通路の先には広い空間が広がり、壁には魔力を帯びた鉱石が点在している。遠くから、何かが地面を踏みしめる音が聞こえてきた。
「ここなら、思いきり動けそうですね」
シルヴァが周囲を確認しながら言う。
「そうね。新しい装備の性能も、自分の戦い方も、実際に動いてみなければ分からないわ。細かいことは戦いながら考えなさいな」
リゼットはそう言って、少し離れた場所へ移動した。
「では、行きますわよ!」
アナスイが剣を抜いた。
深紅の刀身が光を受けて輝く。その正面から、数体の魔物が姿を現した。
アナスイは慌てずに呼吸を整え、剣を構える。
「さあ、私の新しい装備の力、試させていただきますわ!」
彼女の剣が赤い光を帯びた。
踏み込むと同時に、深紅の斬撃が刃から放たれる。飛翔した斬撃は魔物の群れを横切り、先頭にいた魔物をまとめて吹き飛ばした。
「えっ……!?」
メアリーが思わず声を上げる。
アナスイ自身も一瞬驚いたようだったが、すぐに笑みを浮かべた。
「なるほど……! 剣に魔力を込める感覚が、以前よりずっと分かりやすいですわ! これなら、遠くの相手にも攻撃を届かせられますわね!」
倒れた魔物の向こうから、別の魔物が飛びかかってくる。
アナスイは身体をひねって攻撃をかわし、そのまま横薙ぎに剣を振るった。赤い光をまとった刃が魔物を弾き飛ばし、間髪入れずに二撃目の斬撃が追い打ちをかける。
「ふふっ、いいですわね! 攻撃の幅が広がっただけではなく、次の動きにも移りやすいですわ!」
彼女は流れるような動作で魔物を相手取り、最後の一体を深紅の斬撃で倒した。
「お見事です。以前よりも攻撃の選択肢が増えていますね」
シルヴァが声をかける。
「ええ! ただ、まだ少し魔力の込め方に改善の余地がありそうですわ。威力を優先しすぎると、次の攻撃に使う魔力まで消費してしまいますもの」
「そこまで分かっているなら上出来よ。あとは何度も使って、自分に合う加減を見つけなさいな」
リゼットの言葉に、アナスイは満足そうに頷いた。
そのころ、シルヴァの前にも魔物が集まっていた。
彼は剣を構えつつ、反対の手を軽く動かす。足元に水が集まり、薄い膜となって地面を覆った。
「正面からすべて相手にする必要はありませんね。まずは動きを制限させてもらいましょう」
水が細い帯となって伸び、魔物たちの足元へ絡みつく。
動きが鈍ったところへ、シルヴァは剣を振るった。淡い水色の刃が魔力に反応し、鋭い水流を伴って魔物を切り裂く。
さらに彼は、懐から小さな装置を取り出した。
「こちらも試してみましょうか」
装置を起動すると、甲高い音が響いた。
魔物たちが一瞬だけ動きを止める。その隙を逃さず、シルヴァは水魔法で相手の隊列を崩し、剣による攻撃を重ねていった。
「武器だけでなく、道具も組み合わせて戦うのですね……!」
メアリーが感心したように見つめる。
「はい。真正面から力比べをして勝てる相手ばかりとは限りませんから。相手の動きを妨害し、こちらが有利な状況を作ってから攻撃する。そうすれば、無駄な消耗を抑えられます」
シルヴァは落ち着いた口調で説明しながら、最後の魔物を水の刃で倒した。
「もちろん、道具に頼りすぎるのも危険です。壊れることもあれば、使う暇がないこともある。だから剣も魔法も、どれか一つに偏らず扱えるようにしておきたいですね」
「なるほど……。とても参考になりますわ」
アナスイが感心したように頷いた。
しかし、シルヴァの戦いはまだ終わっていなかった。
奥の通路から、ひときわ大きな魔物が現れたのだ。
シルヴァは剣を構えたまま、静かに息を吐いた。
「それでは、少し大きな技を試してみましょう」
彼が手を掲げると、周囲に散っていた水が一斉に集まり始めた。
大量の水が渦を巻き、空中へと立ち上る。やがてそれは巨大な蛇の形を取り、長い胴体をくねらせながら魔物を見下ろした。
水でできた大蛇が、低い唸りのような水音を響かせる。
「これが、僕の得意な水魔法です」
シルヴァが手を振り下ろした。
大蛇が一気に突進し、巨大な魔物を丸ごと飲み込むように押し流した。激しい水流が空間を駆け抜け、魔物は抵抗する間もなく地面へ叩きつけられる。
水が引いたときには、戦いは終わっていた。
「……すごい」
メアリーは杖を握ったまま、しばらく言葉を失っていた。
「水をあれほど自在に操れるなんて……。しかも、あの大きさなのに制御が乱れていませんでしたわ」
アナスイも驚きを隠せない様子だった。
シルヴァは少し照れたように笑った。
「ありがとうございます。ただ、大技は魔力の消費も大きいですから、いつでも使えばいいというものではありません。相手や状況を見て、必要なときに使うのが大切ですね」
『水の蛇、規模がすごすぎるだろ……!』
『剣も魔法も道具も使えるの、戦い方がかなり器用だな』
『あの水の大蛇、操作しながら別のこともできるのか?』
『新しい装備を使い始めたばかりでこれなら、今後どうなるんだ……』
視聴者のコメントも、シルヴァの戦いぶりに驚くものが目立っていた。
その間に、メアリーも自分の力を試していた。
彼女は魔物の攻撃を受け止めるのではなく、杖を握って集中する。足元の空間が淡く揺らいだ。
次の瞬間、メアリーの姿が消えた。
魔物が戸惑ったように周囲を見回す。その背後にメアリーが現れ、杖を振るった。
「えいっ!」
杖の先から魔力弾が放たれ、魔物の背中へ直撃した。
「やった! うまくいきました!」
メアリーは嬉しそうに声を上げたものの、すぐに次の魔物が迫ってくることに気づいた。
「わわっ、まだ来るんですか!?」
慌てて横へ飛び退こうとしたが、そこで新しい杖の感触を思い出した。
魔力を流す。結晶が光る。
そして、短距離の転移。
メアリーの姿が再び消え、魔物の攻撃は空を切った。
「今度はこっちです!」
背後に回り込んだメアリーが杖を向ける。魔法陣が展開し、複数の小さな光弾が魔物へ飛んでいった。
一発、二発、三発。
連続して命中した魔法弾に、魔物がよろめく。
メアリーはさらに距離を取り、転移と魔法攻撃を組み合わせて相手を翻弄した。
「ふう……! や、やりました!」
魔物が倒れるのを見届け、メアリーはほっと胸を撫で下ろした。
「すごいです! 今までなら、あんなに連続して魔法を使うのは難しかったのに……!」
「杖のおかげで魔力の制御が安定しているようね。ただ、転移を繰り返すときは周囲の確認を忘れないこと。移動先に別の魔物がいたら、今度は自分が不利になるわよ」
リゼットが指摘する。
「はい! 確かに、さっきは目の前の魔物ばかり気にしていました……。次からは、移動する前に周りも確認します!」
「それでいいわ。失敗すること自体は構わないのよ。同じ失敗を何度も繰り返すのが問題なのだから」
メアリーは真剣な表情で頷いた。
新しい装備の扱いに慣れ始めた三人を見て、ジャスティスもまた剣を構えた。
「ふっ……! 仲間たちが見事な成長を見せてくれたのだ。ならば、この俺も負けてはいられない!」
彼の前に、複数の魔物が姿を現す。
ジャスティスは剣を掲げ、堂々と声を張り上げた。
「聞け、深淵に眠る闇よ! 天を覆い、地を穿ち、万象を統べる混沌の理よ! 今こそ我が魂に応え、封じられし力の一端を解き放て! この剣に宿りし意志は、偽りの平穏を打ち砕き、明日へ続く道を切り開くためにある! さあ、刮目せよ! 運命の歯車が回り始めるその瞬間を――!」
「長いですわ!!」
アナスイが思わず叫んだ。
「まだ剣を振ってすらいませんよ!?」
メアリーも驚きのあまり声を上げる。
「ジャスティス、詠唱中に攻撃されたらどうするんですか……!」
シルヴァまで、さすがに心配そうな顔をしていた。
しかしジャスティスは、まったく動じなかった。
「心配無用! この程度の詠唱、我が魂を燃え上がらせるための重要な儀式なのだ! これを省略してしまえば、俺の真の力は目覚めぬ!」
「いや、今のところ目覚めるのは相手の攻撃の機会だけですわよ!」
アナスイの鋭い指摘にも、ジャスティスは胸を張る。
「ダメだ! これをなくしたら俺じゃねぇからな! それにかっこいいだろ?!」
三人は顔を見合わせた。
「……かっこいいかどうか以前に、実用性の問題なのですが」
「そうですわね。もう少し短くすれば、もっと戦いやすくなると思いますわ」
「私もそう思います……。せめて、魔物が近くにいるときだけでも……」
「否! この詠唱こそが、俺という存在の証明なのだ! たとえどれほど時間がかかろうとも、俺はこの様式美を捨てるつもりはない!」
そう言い切ると、ジャスティスはようやく剣を振り下ろした。
剣から魔力が放たれ、魔物の群れをまとめて吹き飛ばす。続けて魔法を発動させ、残った魔物を一気に倒した。
詠唱の長さはともかく、戦闘そのものは決して悪くない。
むしろ、剣と魔法を組み合わせた戦い方には確かな実力が感じられた。
「……戦い方自体は、ちゃんとしているんですわよね」
「ええ。詠唱さえ短ければ、もっと効率よく戦えると思うのですが……」
「ふふふ! 見たか! これぞ、未来の英雄たる俺の実力!」
「未来の英雄になる前に、まずは詠唱を短くしてください!」
メアリーの叫びが、ダンジョンに響き渡った。
『詠唱が長いwww』
『敵が待ってくれてるわけじゃないんだぞ!』
『でも、攻撃は普通に強いのが余計に面白い』
『アナスイたちが完全に保護者みたいになってるじゃないか』
『未来の英雄、まずは詠唱時間の短縮から』
コメント欄も、ジャスティスの独特な戦い方に大いに盛り上がっていた。
その後も、四人は何度も魔物と戦った。
アナスイは赤い斬撃を使い分け、シルヴァは水魔法と道具、剣を組み合わせ、メアリーは短距離転移を交えながら魔法を放つ。それぞれが新しい装備の特性を確かめ、戦いの中で自分の課題を見つけていった。
ジャスティスも剣と魔法で奮闘していたが、長い詠唱を始めるたびに三人から短縮を勧められ、そのたびに断固として拒否していた。
やがて、ひと区切りついたところで、リゼットが手を叩いた。
「ここまでよ。装備の使い心地も分かっただろうし、戦い方の課題も見えてきたはずよね」
四人はそれぞれ武器を収め、息を整えた。
「はい。新しい装備の性能には驚かされましたが、それ以上に、自分の戦い方を見直すいい機会になりました」
シルヴァが答える。
「私もですわ。遠距離への攻撃は大きな強みになりそうですけれど、魔力の配分はもっと練習する必要がありますわね」
アナスイも頷いた。
「私も、転移する前に周囲を確認することを忘れないようにします! それから、もっと魔法を正確に当てられるようになりたいです!」
メアリーは杖を大切そうに抱えながら、決意を新たにしていた。
「うむ! そして俺もまた、己の技をさらに磨き上げ、いつの日かSランク冒険者となり、真の英雄として認められるその日まで――!」
「はいはい。続きは帰ってからにしなさいな」
「なっ!? まだ最後まで言っていないぞ!」
「だから長いのよ。帰るわよ」
リゼットが転移魔法を発動させると、四人の姿はダンジョンから消えた。
残された視聴者コメントには、戦闘への感想とともに、ジャスティスの詠唱に対するツッコミがいつまでも流れ続けていた。
『新装備、みんな似合ってたな!』
『シルヴァの水の大蛇は圧巻だった』
『メアリーの転移魔法、使い方次第ですごく強そう』
『アナスイの赤い斬撃もかっこよかった!』
『で、ジャスティスの詠唱はいつ短くなるんですか?』
もちろん、その最後の質問に答えられる者は、誰もいなかった。




