飛空艇計画
「……さて、基本的な施設については、ひと通り案が出そろったわね」
リゼットは、机の上に並べられた資料を見ながら口を開いた。
「ここからは、空を飛ぶ船だからこそ実現できる施設について考えてみましょう」
「はいはい! それなら、まだまだ面白いものを考えられるよ!」
エジソンが勢いよく手を挙げた。
「透明な天井の話もそうだけど、せっかく空を飛ぶんだから、地上の建物ではできない体験を用意したいよね!」
「そうそう!」
マドカも大きく頷いた。
「せっかくの大型飛空艇なんだよ! ただ泊まって、食事をして、ライブを楽しむだけじゃもったいないじゃない! 空にいることそのものを楽しめる場所が欲しいよね!」
「それなら、まずは景色を楽しむ場所から考えてみましょうか」
リゼットは資料に新しい項目を書き加えた。
「透明な天井や船体上部を活かして、ゆっくりと景色を眺められる空間を設けるのはどうかしら」
「天空展望ラウンジだね!」
マドカがすぐに反応した。
「大きな窓から雲海を見たり、夕日を眺めたり、夜には星空を楽しんだりできる場所! ソファなんかも置いて、ゆっくり過ごせるようにしたいな!」
「いいですね!」
ナナリーも頷いた。
「ライブやイベントがない時間でも、宿泊する人たちがそれぞれ好きなように過ごせる場所になりますね。昼と夜で、まったく違う景色を楽しめそうです」
「夜景を見られるようにするなら、船体の照明も工夫したいね!」
エジソンが楽しそうに言った。
「室内の明るさを調整して、窓に光が映り込みにくいようにすれば、夜空も見やすくなるはずだよ!」
「安全面も考えなきゃならねえな」
ゲンナイが補足した。
「透明な部分を広く取るなら、構造材の強度や耐久性を確認する必要がある。日差しで室温が上がる問題や、結露への対策も必要になるだろうな」
「なるほど。景色がきれいなだけでは駄目なのね」
リゼットは頷いた。
「設計段階から、快適性と安全性を両立できるように検討しましょう」
「じゃあ、次はプール!」
マドカが勢いよく資料を指差した。
「前にプールの話も出たけど、せっかく空を飛ぶんだから、普通のプールとは違うものにしたいんだよね!」
「空を飛ぶ船ならではのプール、ですか?」
ナナリーが尋ねる。
「そう! たとえば、雲海と水面がつながっているように見えるインフィニティプール!」
マドカは両手を広げた。
「プールの向こう側に雲が広がっていて、まるで空の中を泳いでいるみたいに見えるんだよ!」
「おお、それは面白そうだね!」
エジソンが声を弾ませる。
「ただし、水が外へ流れ出ないようにする構造や、飛行中の揺れへの対策が必要になりそうだよ。水は重いから、船体への負担も考えないとね!」
「水の重量だけじゃねえぞ。乗客が一か所に集まったときの重心の変化も考えなきゃならん」
ゲンナイが頷いた。
「安全柵や水の流出を防ぐ仕組みも含めて、技術陣で設計を検討しましょう」
「安全なのは大事だけど、せっかくなら開放感も欲しいね!」
マドカが考え込む。
「景色を邪魔しない透明な防護設備を使えれば、空に浮かんでいるような雰囲気を保てそうだよね!」
「夜も楽しめるようにしたいですね」
ナナリーが提案した。
「照明を工夫すれば、星空を眺めながら泳げるかもしれません。もちろん、安全に利用できる時間や条件を決める必要はありますけど」
「いいね! 雲海インフィニティプール、採用候補だね!」
マドカは嬉しそうに書き加えた。
「次は植物園なんてどうかな~?」
ニコラが、のんびりと口を開いた。
「空の上に温室を作って、いろんな花や植物を育てるんだよ~。地上では見られない景色を楽しめるし、植物の香りに包まれて過ごすのも気持ちよさそうだね~」
「空中植物園か!」
マドカの目が輝いた。
「それもいいね! 花がたくさん咲いている場所や、小さな森みたいな場所があっても楽しそう!」
「植物の種類によって、必要な日照や温度、湿度も違いますね」
カトリーヌが資料を見ながら言った。
「鑑賞するための花だけでなく、ゆっくり散策できる小道や、休憩できる場所も設けるとよいでしょう」
「光る植物なんかも面白そうだね~」
ニコラが付け加えた。
「夜になると淡く光る花や、魔力に反応して色が変わる植物があったら、幻想的な空間になりそうだよ~」
「それは見てみたい!」
マドカがすぐに賛同する。
「ただ、植物の管理も必要になるわね」
リゼットは落ち着いて指摘した。
「水やり、温度管理、病害への対応など、完成後も継続して手入れをする体制を考えなければいけないわ」
「植物の性質に合わせた設備を整える必要があるな」
ゲンナイが答えた。
「温室の中をいくつかの区画に分ければ、環境の違う植物も管理しやすくなるだろう」
「うんうん。じゃあ、空中植物園も候補に追加だね~」
ニコラが満足そうに頷いた。
リゼットは資料に三つの案を書き加えた。
天空展望ラウンジ。
雲海インフィニティプール。
空中植物園。
景色を眺め、空の上で泳ぎ、植物に囲まれて過ごす。どれも大型飛空艇だからこそ、特別な体験にできそうな施設だった。
「ほかにも、空を飛ぶ船ならではの設備はあるかしら?」
リゼットが尋ねると、今度はエジソンが勢いよく手を挙げた。
「あるよ! 大型飛空艇から、小型飛空艇を発進させられるようにするのはどうかな!」
「小型飛空艇を?」
マドカが首を傾げる。
「そう! 大型飛空艇を母船にして、そこから小型飛空艇を出せるようにするんだ。空中で発進して、目的地を巡ったあとに戻ってこられたら面白いでしょ!」
「それは確かに、空の上ならではの遊び方になりそうですね」
ナナリーが頷いた。
「大型飛空艇で景色を楽しみながら、小型飛空艇で近くの名所を巡ることもできるかもしれません」
「ただし、発進と帰還のための設備が必要になるな」
ゲンナイが資料を確認した。
「格納庫だけじゃなく、飛行中に安全に発着できるドックや、機体を固定する仕組みも考えなきゃならねえ。風の影響や、母船との位置関係も重要になるだろうな」
「うん。だから、小型飛空艇専用のドックを作るんだ!」
エジソンは元気よく続けた。
「格納庫から発進用のデッキへ移動できて、飛行中でも安全に発進・回収できるような構造にする。もちろん、天候や風の状態によっては発着を制限する仕組みも必要だね!」
「大型飛空艇の中に、さらに飛空艇の格納庫があるんだ……!」
マドカが想像を膨らませる。
「なんだか、すごく本格的になってきたね!」
「大型飛空艇そのものが、空の上の拠点になるわけね」
リゼットも興味深そうに資料を見た。
「ただ、発進や回収を行うなら、操縦する人員や整備を担当する人員も必要になるでしょう。設備だけでなく、運用方法も一緒に検討する必要があるわ」
「もちろん! 機体の点検や整備をする場所も用意しよう!」
エジソンが頷く。
「発進前の確認や、戻ってきた機体の点検ができる整備スペースも必要だね!」
「それなら、エアカーやエアバイクの格納庫も欲しいところだね~」
ニコラが楽しそうに口を挟んだ。
「小型飛空艇だけじゃなくて、エアカーやエアバイクも載せておけるようにするんだよ~。空中で使う乗り物がいろいろあったら、行動の幅が広がりそうだね~」
「確かに!」
マドカが頷く。
「大型飛空艇からエアカーやエアバイクを使って移動できたら便利そうだね!」
「ただし、種類ごとに必要な保管場所や整備設備は違うだろうな」
ゲンナイが説明した。
「格納庫を区画分けして、充電や燃料補給、点検なんかを安全に行える設備を設ける必要がある。機体を固定する場所や、作業員が安全に動ける通路も確保しなきゃならねえ」
「そういう細かいところも大事だね!」
エジソンは大きく頷いた。
「ただ乗り物を積み込むだけじゃなくて、ちゃんと整備して、いつでも使える状態にしておけるようにしないと!」
「小型飛空艇のドックと、エアカー・エアバイクの格納庫。それに整備や補給の設備ね」
リゼットは項目を整理した。
「このあたりは技術陣を中心に、実現可能性と必要な人員を検討してもらいましょう」
「了解!」
エジソンが元気よく答えた。
「こういう設備なら、設計を考えるだけでも楽しそうだよ!」
「格納庫の配置や船体の強度については、俺も確認する」
ゲンナイが続けた。
「乗り物の重さや配置は、飛空艇全体の重心や重量配分に影響するからな。ほかの施設との兼ね合いも考えて決めなきゃならねえ」
「うん。どれもまだ候補だけれども、検討する価値は十分にあるわね」
リゼットは資料をまとめた。
「施設の構造、安全性、必要な人員、完成後の管理方法。それぞれを確認したうえで、実際に採用するものを決めていきましょう」
「うわあ、ますますすごい船になってきたね!」
マドカは嬉しそうに笑った。
「最初は大型飛空艇を作るだけだったのに、空の景色を楽しめて、泳げて、植物園があって、さらに小型飛空艇まで発進できるなんて!」
「でも、施設が増えるほど、設計と運営の検討も必要になるわ」
リゼットは念を押した。
「安全性、重量、設備の維持管理、必要な人員。それぞれを確認して、実現できる形にまとめていきましょう」
「そうだね。作って終わりじゃなくて、完成したあともみんなが楽しめる船にしたいからね!」
マドカの言葉に、ナナリーも頷いた。
「ライブの日はライブを楽しんでもらう。宿泊の日は景色や施設をゆっくり楽しんでもらう。そして、特別なイベントの日には、また違った体験を用意する。そんな使い方ができたら素敵ですね」
「ええ。そのためにも、施設の構成と運営計画を並行して考えていきましょう」
リゼットは最後に資料を閉じた。
こうして、大型飛空艇の設備案には、空を一望できる天空展望ラウンジ、雲海に浮かんでいるような感覚を味わえるインフィニティプール、幻想的な植物を楽しめる空中植物園が加わった。
さらに、小型飛空艇を発進・回収するためのドックと、エアカーやエアバイクを保管・整備するための格納庫も候補となった。
もちろん、どれもまだ設計前の案である。
だが、素材も建造場所も作業員も、ゲンナイの協力によって十分に確保できる見込みがある。あとは技術陣が実現方法を検討し、リゼットたちが施設の配置と運営をまとめていけばいい。
当初は大型飛空艇を一隻作るだけのつもりだった。
それが今では、宿泊施設や娯楽施設に加え、空そのものを楽しみ、さらに小型の乗り物で空を巡ることまでできる、巨大な空中リゾートへと発展しつつあった。




