飛空艇計画
ダンジョンマスタールーム、会議場。
リゼットに案内され、アナスイ、シルヴァ、メアリーの三人が会議場へと足を踏み入れた。
そこには、すでに大勢のエキドナメンバーが集まっていた。
マドカ、ニコラ、カトリーヌ、グレタ、エジソン、ナナリー。
そして、その中心にいたのは、二十代半ばほどに見える黒髪黒目の男だった。
男は三人の姿を確認すると、気さくに片手を上げた。
「おう。リゼットから聞いたか? 俺がゲンナイ・ヒラガ。ダンジョンマスターだ」
そう名乗った男は、三人を順番に見渡した。
「っても、お前らに害を与えようとは思ってないから、殺気なんか飛ばすのはやめてくれや」
「……あら、失礼しましたわ」
アナスイは微笑みながら、静かに気配を収めた。
初対面の相手がダンジョンマスターともなれば、警戒するなというほうが難しい。
ましてや、先ほどまでリゼットから聞かされていた話を考えれば、目の前の男がただ者でないことは明らかだった。
ゲンナイは気にした様子もなく、豪快に笑った。
「俺はエキドナの奴が認めたなら、俺の仲間だと思ってる。これからの計画はかなりでかいことになるからな。よろしく頼むわ」
「色欲勇者アナスイですわ。よろしくお願いしますわね」
「強欲勇者シルヴァです。ニコラ博士のご先祖様なんて、すごい頭脳の持ち主なのでしょう?! 僕も発明家なので、よろしくお願いします!」
シルヴァは目を輝かせながら、ゲンナイへと一歩近づいた。
「お、おう。元気がいいな、お前」
「ぜひ、いろいろなお話を聞かせてください!」
「時間があればな。これから忙しくなるぞ」
「色欲賢者メアリーです! ご本人に会うのは今日が初めてですね! よろしくお願いします!」
メアリーも明るく挨拶した。
三人の自己紹介を聞いたゲンナイは、満足そうに頷いた。
「おう。こちらこそよろしくな」
「ゲンナイ、もう三人ともエキドナ所属よ。隠すことは何もないわ」
リゼットがそう告げると、ゲンナイは少し目を丸くした。
「お、そうなのか。そいつは話が早い」
「さてと、お前らが欲しい施設関係は俺は知らん」
ゲンナイは、机に並べられた資料を眺めながら、あっさりと言い放った。
「俺が用意するのは三つだ。まず、手作業が器用なダンジョンモンスター。こいつらを作業員に使え。次に、新しいダンジョン階層。建造場所が必要なんだろ? 好きに使えばいい」
ゲンナイは指を三本立てた。
「最後に、素材だ。必要なもんは好きなだけ出してやる」
「……好きなだけ、ですか?」
シルヴァが思わず聞き返した。
「そうだが?」
「いえ、あの……大型飛空艇ですよね? 必要な素材の量は相当なものになると思うのですが……」
「だから何だ?」
ゲンナイは不思議そうに首を傾げた。
「必要なら出す。それだけだろ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!」
今度はアナスイが声を上げた。
「それでは、制作に必要な素材費がほとんどかからないということですの? 通常なら、希少素材を集めるだけでも莫大な費用がかかるはずですわよ?」
「素材費?」
ゲンナイは一瞬考え込んだ。
「ああ、そういう話か」
そして、何でもないことのように答えた。
「俺、千八百年くらいダンジョンをいじってなかったんだよな。ダンジョンポイントなんて腐るほどあるぜ。レア素材だろうが何だろうが、必要なら好きなだけ出せる」
「せ、千八百年……!?」
シルヴァが絶句した。
「それだけの期間、ダンジョンを運営していたということですの……?」
「まあ、そんなところだな」
「……これがダンジョンマスター、ということなのですわね」
アナスイは額に手を当てた。
「希少素材の確保そのものが問題にならないなんて……。普通なら、その素材を入手するためだけに何年もかかることだってありますのに」
「いや、そこらへんは気にすんな」
ゲンナイは面倒くさそうに手を振った。
「エキドナと暇つぶしに作る飛空艇だ。いいじゃねぇか。金儲けのためにやるわけでもねえんだし、細かいことを考えても仕方ねえだろ」
「暇つぶしで世界有数の希少素材を大量投入するのですか……」
シルヴァは、もはや笑うしかなかった。
「……エキドナの皆さんの規模が、少しずつわかってきた気がします」
「そうか? まあ、慣れるだろ」
ゲンナイは興味を失ったように椅子へ背中を預けた。
「設備の話はお前らに任せる。必要なものが決まったら言ってくれ」
周囲にいたエキドナのメンバーたちも、新しい仲間を歓迎するように笑顔を向けていた。
アナスイはその光景を眺め、少しだけ肩の力を抜いた。
これだけの面々が、ダンジョンマスターであるゲンナイを仲間として受け入れている。
ならば、自分たちも余計な警戒を続ける必要はないだろう。
「さて、それじゃあ本題に入りましょうか」
リゼットが会議場の前方へ進み、集まった面々を見渡した。
「今回の議題は、大型飛空艇の建造についてよ」
「おお、いよいよか!」
グレタが待ってましたとばかりに声を上げた。
「あれもこれも、全部大型飛空艇のためなんだ! やっと素材が集まったからな! 早く形にしてやりてぇ!」
その目は、すでに完成した飛空艇が空を飛ぶ光景を思い描いているかのように輝いていた。
「そういえば、強欲大陸でいろいろと派手に動いていたわね」
リゼットは、アナスイたちへ視線を向けた。
「私たちが強欲大陸でカジノやダンジョンを潰したり、まあ、いろいろしたわね。あれも、計画に必要な素材を集めるためだったの」
「……いろいろ、で済ませるには随分と派手でしたけどね」
アナスイが苦笑した。
強欲大陸での一連の出来事は、いま思い返しても簡単に説明できるものではない。
「なるほど……。あのダンジョン攻略も、飛空艇の素材集めだったわけですか」
シルヴァは納得したように頷いた。
「そういうことね。必要な素材を持っていた豪商のエリックが、面白いものが見たいと言うので配信しただけよ」
「いやあ、あれは僕も楽しかったですね!」
シルヴァが満面の笑みを浮かべる。
「……配信することまで計画の一部だったのですね」
「ええ。素材も集まったし、エリックも満足していたし、悪くない結果だったわ」
リゼットは何でもないことのように言った。
アナスイは、改めてエキドナという組織の規模を思い知らされた気がした。
一連の騒動さえ、大きな計画の一部だったのだ。
「んでだが」
ゲンナイが話を引き継いだ。
「ダンジョンマスターの俺は、この怠惰の大陸にある素材を、ダンジョンのポイントを使って呼び出すことができるっつーわけだな」
彼は会議場に置かれた大きな机へ手をついた。
「だから、必要な素材は出してもいいんだが……何が足りない?」
「まずは、どんな飛空艇にするかだね!」
マドカが勢いよく手を挙げた。
「……というわけで、今回は大型飛空艇を作ろうと思うんだよね!」
その言葉に、集まっていた面々がそれぞれ反応した。
「ついに、あれもこれも形にできるんだな!」
グレタが期待に満ちた声を上げる。
これまでダンジョン探索を通じて集めてきた素材。
特殊な設備を作るために必要な希少素材も、すでに十分な量が確保できている。
当初から構想していた大型飛空艇を、いよいよ本格的に建造する段階まで来ていたのだ。
「ふふ。ようやくね」
リゼットは資料を確認しながら、穏やかに微笑んだ。
「ただ、今回は単に大きな飛空艇を作ればいいという話ではないわ。せっかく建造するのだから、乗ること自体を楽しめる施設にしたいところね」
「そうそう! ただ移動するだけなんてもったいないじゃないか!」
マドカが勢いよく頷いた。
「せっかくの大型飛空艇なんだよ! ライブもできて、泊まれて、おいしいものを食べられて、景色も楽しめる。そんな船にしたいよね!」
「なるほど。百人くらいが乗れる飛空艇を考えていたんだが、中身によっては、もっと大きくする必要がありそうだな」
ゲンナイは腕を組んだ。
「船体を大きくするだけなら、どうにでもなる。問題は、どんな設備を積むかだ」
「だったら、まずはライブ会場から考えていこう!」
マドカが資料に目を落とした。
「ライブをするなら、ステージや音響、照明もきちんと整えたいですね」
ナナリーも楽しそうに話に加わった。
「お客さんが見やすい配置にして、演出に合わせて照明や舞台装置を使えるようにしたいです。せっかくの特別な会場ですから!」
「うんうん! 座席は二百席くらいかな。大きすぎず、小さすぎず、みんながステージを楽しめるくらいの規模で!」
マドカが提案すると、ナナリーも頷いた。
「二百席なら、ステージとの距離も調整しやすそうですね。音響設備や照明設備も、その規模に合わせて設計できます」
「んー、トライアングルのライブ会場として使うなら、二百席はほしいです!」
「二百席か……」
ゲンナイは少し考え込んだ。
「まあ、ライブ会場に使う分には構わねえな。ただ、客室やほかの施設との兼ね合いもある」
「そうね。ライブ開催日と宿泊中心の日を分けるのはどうかしら」
リゼットが提案した。
「ライブの日はライブを思いっきり楽しんでもらう。それ以外の日は、宿泊施設として楽しんでもらう。そうやって使い分ければ、それぞれの目的に合わせて運営できるわ」
「だったら、ライブの日は宿泊客はなし!」
マドカが元気よく宣言した。
「えっ、宿泊客なし?」
エジソンが首を傾げる。
「だって、ライブをやるならステージも客席も使うでしょ? 宿泊客まで受け入れたら、いろいろ大変じゃない?」
「まあ、確かに……」
ナナリーも考え込んだ。
「宿泊営業とライブ営業を分ければ、会場の準備や片付けもやりやすくなりますね。ライブの日はライブに集中して、それ以外の日は宿泊や遊覧を楽しんでもらう。わかりやすいと思います!」
「営業日を決めて、予約制で飛ばすのはどうですか?」
メアリーが提案した。
「毎日運航する必要はありませんし、イベントに合わせて営業日を決めれば、準備もしやすいと思います」
「それはいいわね」
リゼットは頷いた。
「宿泊客の予約も管理しやすくなるし、営業日を楽しみにしてもらえるでしょう。まずは、宿泊営業、遊覧営業、ライブ営業の三つを軸に考えましょうか」
「そうだね。基本の運用は分けておいて、必要に応じて組み合わせる形がよさそうだね」
カトリーヌが賛同した。
「では、次は宿泊施設ね」
リゼットは資料をめくった。
「客室は五十室ほど。一般のお客さん用の部屋は、一室につき最大三名まで宿泊できるようにしましょう。それとは別に、エキドナのメンバー用として十室ほど確保しておきたいわ」
「五十室かあ。けっこうな数だね!」
マドカが感心したように声を上げる。
「五十室あれば、かなりの人数を泊められますね。ただ、重量は大丈夫でしょうか? プールや温泉も積むとなると、かなりの重量になるはずです」
シルヴァが指摘した。
「そこはこれから設計するところだな。素材はいくらでも調達できるが、浮遊能力と船体のバランスは考えなきゃならん」
ゲンナイは真剣な表情で答えた。
「必要なら、新しい素材を開発することも考える。せっかく造るんだ。中途半端なものにはしたくねえからな」
その言葉に、シルヴァの目が再び輝いた。
「新しい浮遊素材の開発ですか?! それはぜひ参加させてください!」
「おう。頼りにしてるぜ」
ゲンナイは笑った。
「客室については、一般のお客さん用ならベッドとシャワー、トイレを備えた使いやすいものにする。浴槽は各室には設けず、共用の温泉施設を充実させる方向でどうかしら」
「それなら温泉を楽しんでもらう理由にもなるね!」
「ええ。広い浴場や露天風呂があれば、空の上で温泉に入るという特別な体験にもなるでしょう」
リゼットの言葉に、マドカは目を輝かせた。
「空の上の温泉! いいね、それ!」
「温泉だけじゃなくて、プールも欲しいな!」
「すでに候補に入っていますよ」
リゼットが微笑む。
「温泉とプールは、宿泊施設としての魅力を高める設備になりそうね。ただし、水の重量や給排水の仕組みも含めて設計する必要があるわ」
「そこは技術陣で検討しよう。水を積むとなれば、船体への負担も大きいからな」
ゲンナイが頷いた。
「レストランも必要ですね」
カトリーヌが優雅に頷いた。
「景色を楽しみながら食事ができる場所があれば、宿泊そのものの満足度も高くなるでしょう。客室とは別に、ゆっくり食事を楽しめる空間を設けたいですね」
「いいね! 窓の外に雲海が広がっていたら、それだけで特別な食事になりそう!」
マドカが想像を膨らませる。
「料理を提供するなら、厨房や食材の保管場所も必要になるわね。客室や娯楽施設だけでなく、運営に必要な設備も忘れずに考えておきましょう」
リゼットが資料に書き加えた。
「それから、カジノなんてどうでしょう?」
シルヴァが、思い出したように口を開いた。
「カードゲームやルーレット、スロットなどを用意して、落ち着いて遊べる娯楽施設にするんです。もちろん、安全に楽しめる運営方法を考える必要はありますけどね」
「カジノかあ!」
マドカが資料に書き加える。
「大人向けの娯楽施設としては、面白そうだね!」
「賭け金や景品の扱いは、あとでちゃんと決めましょう。まずは施設の候補として考えておくわ」
リゼットが整理した。
「娯楽施設なら、闘技場も候補に入れてはどうでしょう?」
リゼットが続けて提案した。
「モンバトやヒロバトを開催できるコロシアムがあれば、ライブとは別のイベントも開催できるわ」
「おお! それは盛り上がりそうだね!」
エジソンが身を乗り出した。
「観客席だけじゃなくて、戦闘を安全に観戦できる設備や、競技場の状態を確認する仕組みも必要になりそうだね!」
「ええ。規模や安全性を考慮しながら、設計を進めましょう」
リゼットは頷いた。
「ただし、ライブ会場や客室との兼ね合いもあるから、コロシアムの規模は船体の大きさが見えてから決める必要がありそうね」
「それから、エキドナのオリジナルグッズを販売するショップも欲しいところね」
「グッズショップ!」
マドカが嬉しそうに反応した。
「ライブに来てくれた人たちが、記念に何か買って帰れるようにしたいよね!」
「そうだね~。飛空艇そのものをモチーフにしたグッズも面白そうだよ~」
ニコラがのんびりと話に加わる。
「たとえば、飛空艇の形をした配信カメラとか~。飾ってもかわいいし、記念品にもなるんじゃないかな~?」
「それ、いいね!」
マドカがすぐに頷いた。
「船の形をしたグッズなら、今回の飛空艇ならではの記念品になるよ!」
「実際に動くものにするなら、機能や安全性も考える必要がありますね」
エジソンが興味深そうに資料を覗き込んだ。
「でも、技術的には検討する価値がありそうだよ!」
「商品化するものは、使いやすさや品質も含めて考えていきましょう」
リゼットが話をまとめた。
「ところで、設計面では何か考えていることがあるのかしら?」
リゼットがエジソンへ視線を向けた。
「あるよ!」
エジソンは待っていましたとばかりに答えた。
「せっかく空を飛ぶんだから、船の上から空を見られるようにしたいんだ。天井や船体上部の一部を透明にすれば、夜空を眺めたり、空から街を見下ろしたりできるでしょ!」
「透明な天井……」
リゼットは少し考え込んだ。
「確かに、それなら飛空艇ならではの体験になるわね」
「地球にあった、細長い気球みたいな構造を参考にできるかもしれねえな」
ゲンナイが口を開いた。
「船体を楕円形にするなり、形を工夫すりゃ、透明な部分も広く取れるかもしれねえ。ただ、船体の強度と浮力のバランスは考えなきゃならん」
「そこは任せて! どうせ作るなら、思い切り景色を楽しめるものにするよ!」
エジソンが元気よく宣言する。
「ただ、船体を大きくするなら、浮かせるための仕組みも重要になってくるわね」
リゼットが指摘すると、ゲンナイは頷いた。
「その点なら、俺とニコラで開発を進めている巨大浮遊石が使えるかもしれねえ。浮力を補助できりゃ、船体の形状や設備の配置にも余裕が生まれるだろうな」
「巨大浮遊石かあ……」
マドカが興味深そうに呟いた。
「それがうまくいけば、いろいろな施設を載せられそうだね!」
「まあ、まだ実際に試してみなきゃわからねえが、可能性は十分あるぜ」
ゲンナイは自信ありげに答えた。
「船体の重さや重心、浮力の配分を確認しながら、技術陣で検討していこう」
「それなら、景色を楽しめる場所も作りたいね!」
マドカが再び資料を覗き込む。
「窓のそばでゆっくり過ごせる場所があれば、宿泊する人も喜んでくれそう!」
「透明な天井を活かした展望スペースも候補に加えましょう。夜空や雲海を楽しめる場所があれば、飛空艇ならではの魅力になるわ」
リゼットは資料に書き加えた。
「ほかにも、何か提案はあるかしら?」
「水族館はどうかな?」
マドカが手を挙げた。
「大きな水槽があって、いろんな魚を見られる場所! 空の上の水族館なんて、珍しいと思うんだよね!」
「面白い案だな。ただ、水槽を設けるなら、水の重さだけじゃねえ。ろ過設備や清掃、それに動物の飼育環境も考えなきゃならん」
ゲンナイは指を折りながら説明した。
「造るときだけ考えりゃいいってもんじゃねえぞ。完成したあとも、ずっと管理していく必要がある。設備の重さもそうだし、水漏れへの対策も欠かせねえな」
「そっか……。作れば終わりってわけじゃないんだね」
マドカは少し考え込んだ。
「うん。でも、できたら楽しそうだから、候補として残しておこうよ!」
「そうね。実現方法と維持管理の体制を含めて検討しましょう」
リゼットが頷いた。
「それなら、動物たちと触れ合える場所も欲しいな~」
ニコラが、いつもの調子で提案した。
「猫さんやコボルトたち、それから錬金獣や小型のドラゴンたちと遊べる場所だよ~」
「それはいいね!」
マドカが笑顔になる。
「宿泊する人たちが動物と触れ合える施設があったら、子供たちにも喜ばれそう!」
「錬金獣は魔力を食べて活動するから、普通の動物とは少し違うんだけどね~。排泄物も出さないし、飼育環境は比較的整えやすいと思うよ~」
ニコラが説明する。
「でも、普通の食べ物を食べるのが好きな子もいるんだよね~」
「わんお!」
話に反応したように、コボルトが鳴いた。
「ふふ。食べることを楽しんでいる姿もかわいいものですわ」
アナスイが優雅に微笑む。
「ジュリエットも、食事の時間を楽しんでいますもの。動物たちにとっても、食べることは大切な楽しみなのでしょうね」
「そうそう! そういう姿も見られるふれあい施設にしたいな!」
マドカが頷いた。
「では、ふれあい施設も候補に加えましょう。具体的な設備や動物たちの管理については、ニコラを中心に検討してもらえるかしら」
「は~い。楽しそうな施設になりそうだね~」
ニコラは嬉しそうに答えた。
リゼットは資料を整理し、全員を見渡した。
「それでは、現時点での候補をまとめるわね」
ライブ会場は二百席規模。
一般客用の客室は五十室、エキドナメンバー用の客室は別に十室。
共用の温泉とプールにレストラン。
さらに、カジノ、コロシアム、オリジナルグッズショップ。
透明な天井を活かした展望スペース、水族館、動物たちとのふれあい施設も候補に加わった。
当初は百人ほどが乗れる飛空艇を造るという話だったはずなのに、計画はすでに、豪華な宿泊施設と娯楽施設を備えた空中リゾートへと変わりつつあった。
「……ねえ、ゲンナイ」
リゼットが顔を上げた。
「最初に百人乗りと考えていたけれど、施設をこれだけ積むなら、もう少し大きくする必要がありそうね」
「ああ。俺もそう思ってたところだ」
ゲンナイは楽しそうに笑った。
「どうせ造るなら、思い切りやろうぜ。素材ならいくらでも呼び出せるんだからな」
「そうだね~。せっかくなら、すごいのを造りたいよね~」
ニコラがにこにこと頷く。
「うん! 絶対にかっこいい飛空艇にしよう!」
エジソンが声を弾ませた。
「ただし、設備を増やせば、それだけ重量も増えるわ。浮遊能力や船体の強度だけでなく、完成後の運営方法も含めて考えなければいけないわね」
リゼットが念を押した。
「もちろん、これですべてが決定したわけではないわ。今後は設計や設備の重量、完成後の運営方法も含めて、ひとつずつ検討していきましょう」
「うん!」
マドカは元気よく頷いた。
「せっかく作るんだから、みんなが楽しめる飛空艇にしようね!」
「それから、細かい設備についても、これから順番に考えていく必要があるわね」
リゼットが資料を整えながら続けた。
「空を飛ぶ船だからこそできることもあるでしょうし、普通の宿泊施設とは違う魅力を作っていきたいところだわ」
「それなら、まだまだ案があるよ~」
ニコラが楽しそうに笑った。
「空の上ならではの施設とか、乗り物を載せるための設備とかね~」
「乗り物?」
マドカが顔を上げる。
「うん~。せっかく大きな飛空艇を造るんだから、いろいろ考えられると思うんだよね~」
「なるほど……」
リゼットは少し考え込んだあと、資料の新しいページを開いた。
「空を飛ぶ船ならではの施設を検討しましょうか」




