僕は僕なんで
――本日もトンチンカンのダンジョン攻略配信、始まります!
「よーし! 今日はどんどん進むぞー!」
「トーイ、先走らないでよ! また罠を踏むからね!」
「踏まねえよ! ……たぶん!」
「たぶんって言ったわ!」
「チティ、今のは聞かなかったことにしてくれ!」
いつも通りの騒がしい三人組。
トーイが先頭を走り、チティが呆れながら追いかけ、カーンは二人の様子を見ながら魔物の動きを観察していた。
世界中を騒がせた暗殺事件も、子爵家との話し合いも、今ではひとまず決着がついている。
だが、配信のコメント欄では、まだカーンの話題が尽きないようだった。
『そういえばカーンって、結局あの子爵家の血筋なんだよな?』
『魔眼持ちって本当?』
『本人はどう思ってるんだろう』
『子爵家を継ぐとか、そういう話はないの?』
「ん? 僕?」
コメントを見つけたカーンが、首を傾げた。
「いや、別に何も?」
『何もってwww』
『世界中が気にしてるんだぞw』
『お前の人生が変わるかもしれない話なんだが!?』
「そうなの?」
カーンは本気で不思議そうな顔をした。
「でも、僕は僕なんで」
あまりにもあっさりした答えだった。
「今まで通り、トーイとチティと冒険して、面白いことを見つけたら勉強して。エキドナの正式なメンバーにもなりたいしね」
「おっ、いいこと言うじゃねえか!」
「カーンらしいね!」
二人が笑う。
『ブレないなあw』
『そういうところが好きだわ』
『子爵家よりダンジョンと勉強www』
『本人が幸せならそれでいいか』
「ほら、二人とも! あっちの魔物、ちょっと珍しい動きをしてるよ!」
カーンはすっかり興味を移していた。
「おっしゃ、ぶっ飛ばすぞ!」
「だから、先に突っ込まないの!」
「わかってるって!」
「絶対わかってないわんお!」
再び始まる、いつもの騒動。
血筋も、魔眼も、家の継承も。
そんなものがカーンの人生に関係してくることは、これからもあるのかもしれない。
けれど、今の彼にとって一番大切なのは、目の前にいる仲間たちと一緒に冒険することだった。
カーンはカーン。
それ以上でも、それ以下でもない。
そして今日も、トンチンカンの配信は賑やかに続いていくのだった。




