強欲の勇者シルヴァ 質問配信
エキドナの屋敷。
先日のアナスイに続いて――。
今日は強欲の勇者、シルヴァによる質問配信が行われていた。
「それじゃあ!」
マドカがEVの前に座る。
「今日はシルヴァさんへの質問回でーす!」
「よろしくお願いします」
シルヴァが少し緊張した様子で頭を下げる。
「前回のアナスイさんとは、また違った質問が多いみたいだよ」
「そうでしょうね」
「シルヴァさん、いっぱい答えてね!」
「もちろんです」
『シルヴァ編きた!』
『アナスイとは違う方向で楽しみ』
『質問かなり送ったぞ』
その後ろでは。
「私も楽しみです」
ナナリーが笑う。
「それでは一問目です!」
マドカがEVへ向き直る。
### 第一問
『強欲の勇者として、一番得意な戦い方は何ですか?』
「そうですね」
シルヴァが少し考える。
「僕は自分でも、知識欲の塊だと思っています」
『いきなりシルヴァらしいw』
「興味のあることは、剣術、魔法、魔道具作り――様々なことをしてきました」
「銃も作ってたよね?」
マドカが聞く。
「ええ。銃なども作っています」
「やっぱり」
「ですから、僕の戦い方も一つには決まっていません」
シルヴァは指を折りながら説明していく。
「薬剤を使って相手を弱体化させたり、道具を使って隙を作ったりして――」
「最後に魔法、というパターンが多いですね」
『戦い方が完全に研究者w』
『正面から殴らないタイプ』
『勇者らしいのかこれw』
「でも強かったよ?」
マドカが笑う。
「もちろん、弱いわけではありませんよ」
シルヴァも苦笑した。
「使えるものは全部使う。それが僕の戦い方です」
### 第二問
『魔法・剣・魔道具の中で、一番好きなのはどれですか?』
「これも少し答えにくいですね」
シルヴァが笑う。
「僕は、自分を勇者だと思っていないんですよ」
「え?」
マドカが瞬きをする。
『どういうこと!?』
『勇者なのにw』
「まぁ、勇者という地位をもらっていますが」
シルヴァは落ち着いて話す。
「自分は発明家に一番近いと思っています」
「発明家?」
「はい」
シルヴァの目が少し輝いた。
「色々な知識を吸収して、自分の役に立ちそうなアイテムを作り出す」
「最高じゃないですか」
『めっちゃ楽しそうに話すじゃんw』
『勇者より発明家が本職なのか』
『エキドナに来る理由が分かるw』
「シルヴァさん、エキドナ来るときもそんな感じだよね」
「そうですね」
シルヴァが即答した。
「知らないものがあるなら、見に行きたくなるでしょう?」
「それは分かる!」
マドカも頷いた。
### 第三問
『これまで戦った相手の中で、一番苦戦した相手は誰ですか?』
「僕は――」
シルヴァが迷わず答える。
「エキドナ全体ですね」
「えっ」
マドカが固まる。
『全体w』
『個人じゃないのかよ』
「マドカさんが分かりやすい近接型だとすると――」
シルヴァが続ける。
「ムサシさんは、その師匠でもある」
「うん」
マドカが頷く。
「そしてマドカさん自身、放出系の魔法が苦手なようですが――」
『マドカ放出系苦手なんだ』
『それであれなの?』
「余った魔力が自動的に身体強化に使われてしまう」
「今、何気なくそこに立っていますけど」
シルヴァがマドカを見る。
「魔力を抑えている状態でも、そこらの勇者と同等なんです」
「そこらの勇者って……」
マドカが微妙な顔をする。
『基準が勇者w』
『怖い評価だな』
「一度だけ、本気を出したのを見ましたけど――」
シルヴァの表情が少し真剣になる。
「おかしい……」
「そこまで?」
「ええ」
そして。
「他のエキドナの皆さんも、もうすでに六百レベルを超えているそうですよ?」
「……」
マドカが黙る。
「あり得ます?」
『wwwww』
『シルヴァさん、それ聞きたいのはこっちだよw』
『エキドナ基準がおかしい』
『六百って何だよ』
「まあ、強い人多いからね!」
「軽い……」
シルヴァが苦笑した。
### 第四問
『マドカさんと戦って、一番驚いたことは何ですか?』
「まぁ――」
シルヴァがマドカを見る。
「剣の天才というのは、こういう子なのではないでしょうかね」
「剣の天才……」
マドカが少し照れる。
「今さら言うことでもないでしょう?」
『本人が一番普通の反応w』
『マドカに今さら説明不要』
『Sランクの剣士だからな』
「戦っている最中、こちらが何か考える前に決まってしまう感じでしたから」
「うーん」
マドカは首を傾げる。
「私、そんなに変だった?」
「変ですよ」
シルヴァが即答した。
「ひどい!」
『www』
「褒めているんです」
「ならいいけど」
### 第五問
『魔道具発表会や強欲のダンジョンを見て、エキドナをどう思いましたか?』
「僕は早いうちから、EV、モンバト、ヒロバト、転移装置を作ったのはエキドナだと知っていました」
『そこから知ってたの!?』
『やっぱり情報収集早いw』
「ですから、とても興味がありました」
シルヴァの声が少し弾む。
「新しい知識を、僕にもっと教えてほしい!」
「と思っていたところで――」
一拍。
「出したのは、マジックバック」
『あ』
『マジックバックw』
「おや?」
シルヴァが少し首を傾げる。
「普通だな?」
「シルヴァさん、失礼だよ!」
マドカが笑う。
「少し落胆しました」
『マジックバックにケチつける勇者w』
『普通にすごいんだけどなw』
「ですが」
シルヴァの表情が変わる。
「中から出てきたのは十匹の猫」
『猫www』
『知識欲が加速してる』
「普通、マジックバックというのは――」
シルヴァが説明する。
「生きた生物が入ったら、中の空気がなくて生存できません」
「ですから事故防止のため、生物は入れることができない」
「これは、この世界の常識です」
マドカが頷く。
「うん」
「それを覆してしまった」
「そして、あの猫も」
シルヴァが少し興奮気味になる。
「細胞を採取して人工的に作り出した、元の猫との同一存在というべきものなんですよ」
「クローンという言葉を聞いた事があります。分身のような本物を作る技術。あれなのかもしれませんね。」
「実際、僕もマジックバックに入ってみましたが――」
「なんというか」
一拍。
「住める、と思いましたね」
『自分で入ったの!?』
『そこまでやるかw』
『やっぱり研究者だ』
「危なくないの?」
マドカが尋ねる。
「だからこそ確認したんですよ」
「そこがシルヴァさんらしいね」
ナナリーが笑った。
### 第六問
『強欲のダンジョン攻略を見て、どんな感想を持ちましたか?』
「……」
シルヴァは少し黙った。
「今までの僕達は、なんだったんだと」
『重いw』
『そんなに!?』
『ダンジョン攻略で人生観変わってるw』
「圧倒的すぎる」
シルヴァが淡々と続ける。
「これがエキドナか……」
「まぁ」
少しだけ苦笑する。
「僕も弱いわけではないんですよ?一応、勇者ですし」
「でも――」
シルヴァの視線が遠くなる。
「ただ、おまけでついてきたという気持ちでいっぱいでした」
『シルヴァ様www』
『自信なくなってるじゃん』
『いや元々強いから!』
「ニコラ博士の簡易シールド装置を、僕は貫通もできないんですよ」
『あれ簡易だもんな』
『それな』
「エキドナが本気で防御に回ったら――」
シルヴァが真剣な顔になる。
「誰が突破できるんです?」
「……」
マドカも少し考える。
「分かんない」
『本人も分からないw』
『エキドナ防御陣やばすぎ』
シルヴァは、ふっと笑った。
「まぁ、面白かったです!」
「最後は楽しんでた!」
マドカが笑う。
### 第七問
『これから勇者として、どうなりたいですか?』
最後の質問。
シルヴァは少し考えた。
「リゼット様に、ニコラ博士」
「エキドナでは様々な天才がいます」
「剣ではムサシさんもですし」
「鍛冶ではグレタさん」
「料理だと、ヒナタさんと――」
一瞬、シルヴァが思い出す。
「暴食勇者アーノルドさんですね」
「……あ」
マドカが反応する。
「そういえばアーノルドもいたね」
「ええ」
シルヴァが頷く。
「あの人、エキドナで働いてたんですね」
『そこ!?』
『今さら知ったのw』
『暴食勇者、普通にエキドナ社員』
「僕も通いで働きたい!」
「勇者が就職希望してる!?」
マドカが笑う。
「エキドナ、勇者まで社員にするの?」
「ぜひお願いしたいです!」
「お姉ちゃんに聞いてみたら?」
マドカがリゼットを見る。
リゼットはお茶を飲みながら。
「いいんじゃない?」
「本当ですか!?」
シルヴァの顔が明るくなる。
「やった!」
『www』
『勇者の目標がエキドナ勤務になった』
『シルヴァさん本当にエキドナ好きだな』
『通いで働く勇者w』
マドカがEVへ向かって手を振る。
「というわけで!」
「シルヴァ編、終了ー!」
「ありがとうございました」
シルヴァも頭を下げる。
「……さて」
マドカがシルヴァを見る。
「明日も来る?」
「もちろんです」
「早いな!」
ナナリーが笑う。
「また新しいものを見せてもらえるかもしれませんし」
「もう完全にファンじゃん」
「研究者です!」
『それ何回言うんだよw』
こうして。
アナスイに続く、強欲の勇者シルヴァの質問配信も終了した。
しかし。
エキドナの屋敷から帰る気配は――。
シルヴァには、まだなかった。




