勇者アナスイ 質問配信
エキドナの屋敷。
今日は少し変わった配信が始まろうとしていた。
「みんなー!」
EVの前にマドカが座っている。
「今日は特別企画!」
その隣には、少し緊張した様子のアナスイ。
「色欲の勇者アナスイさんに、みんなから集まった質問に答えてもらいまーす!」
「よろしくお願いしますわ~!」
『きたー!』
『アナスイ質問回!』
『勇者に聞きたいこといっぱいあるぞ』
『ナナリー様もいる?』
「いるよー」
マドカの横からナナリーが顔を出す。
「私は今日は見学です!」
「見学なんだ?」
「もちろん。アナスイさんがどんなことを話すのか気になりますから」
「ナナリー様が見てくださるなら頑張りますわ!」
『出たw』
『アナスイのテンションが一段上がった』
『ナナリー効果すげえ』
さらにその奥。
「私も聞いているわよ」
リゼットが普通にお茶を飲んでいる。
『大賢者もいるw』
『豪華すぎるだろ』
『勇者一人の質問回の圧じゃない』
そして少し離れたところから。
「……私も見ていていいんですかね?」
シルヴァの声も入った。
「もちろん!」
マドカが答える。
「じゃあ始めるよー!」
画面に一問目が表示された。
### 第一問
『色欲の勇者は、どうやって選ばれるんですか?』
「これはかなり気になる質問ですわね」
アナスイが少し姿勢を正した。
「色欲はいかに美しいか、での選定が強いんですわ」
『美しさ!?』
『勇者選考そこ!?』
『なるほど色欲らしい』
「私が美しく強かった。それだけのこと」
「言い切った!」
マドカが笑う。
「皆さんもご存じのように、色欲は素晴らしい歌、踊り、芸術、絵画などもありますわ」
アナスイは楽しそうに続ける。
「つまり、美を求める傾向にありますの」
「それって、戦いも?」
ナナリーが尋ねる。
「もちろんですわ!」
アナスイが頷く。
「剣術や魔法、武術なども、いかに優雅に、圧倒的に、そして美しくを求められますわね」
『戦闘まで美しさ基準なのかw』
『色欲すげえな』
『強さだけじゃないんだ』
「まぁ、私って色欲でも人気の高いSランク冒険者でしたから」
アナスイが胸を張る。
「スカウトされましたわ」
『Sランク冒険者から勇者へか』
『そりゃスカウトされるわ』
「なるほどねー」
マドカが頷く。
「強い上に美しいから選ばれたんだ」
「その通りですわ!」
『自分で言い切るの好きw』
『アナスイ様らしい』
画面に二問目。
### 第二問
『勇者になってから、普段はどんな仕事をしていますか?』
「そうですねー」
アナスイが考える。
「モンスター討伐はもちろんですわ」
「やっぱり勇者だね」
「国の要人の護衛など、戦闘方面のお仕事もありますわね」
「うんうん」
「ただ、最近ですと――」
一拍。
「ファッションモデルや、装備品の宣伝の仕事が多くなっていますわ」
『え?』
『モデル!?』
『そっちもやるの?』
「色欲らしいね」
マドカが笑う。
「ええ」
アナスイも頷く。
「色欲ではEVや配信などは教会が販売管理していますので、EVで教会所属の聖女様や、これから来る歌姫などとの対談などで配信をすることが多くなっていますわ」
「へえー」
ナナリーが興味深そうに聞いている。
「歌姫との対談……」
「ナナリー、そこ気になる?」
「少しだけ!」
『ナナリーも配信者だしな』
『色欲の配信事情気になる』
『聖女と勇者の対談とか豪華すぎる』
「つまり、勇者だけど結構芸能活動もしてるんだ」
マドカがまとめる。
「はい」
アナスイが笑顔で答える。
「美しいものを広めるのも、色欲の勇者として大切なお仕事ですもの」
『なるほどな』
### 第三問
『今まで戦った相手で、一番強いと思った人は誰ですか?』
「あら」
アナスイが少しだけ困ったように笑う。
「マドカさんですね……」
「私!?」
『きたw』
『やっぱりマドカか』
『Sランク同士の評価』
「ジャスティスさんも悪くはないのですよ?」
アナスイが続ける。
「ただ、元々私がSで、あちらはA。あれは指導試合という気分で対戦しましたから」
「まあ、あれはそうだったね」
マドカが頷く。
「マドカさんは、もうなんというか――」
アナスイが少し言葉を探す。
「いつの間にか勝負が決まっていた、という感覚ですね」
『怖い評価w』
『分かるけどw』
『マドカの戦闘ってそんな感じなのか』
「へぇー」
マドカ本人は、あまり実感がないらしい。
「まだリゼット様やムサシさんと戦ったことがありませんので」
アナスイがリゼットを見る。
「配信を見て、足元にも及ばないという気持ちはありますが――」
「そこまで卑下しなくてもいいわよ」
リゼットが口を挟む。
「実際に戦うこともないでしょうけれど」
「はい」
アナスイも頷いた。
『大賢者と剣聖は別格か』
『戦ってないのに配信だけで察してるw』
「あと、強欲大陸の時も思いましたけど」
アナスイがマドカを見る。
「やっぱり、エキドナはおかしいですわね」
「またそれ?」
マドカが苦笑する。
### 第四問
『マドカさんと戦った時、実際にはどんな印象でしたか?』
「もちろんEVでは拝見していましたよ?」
アナスイが即答した。
「この子、何なのでしょう? 十三歳でここまで完成されるのか? と、いつも思っていましたね」
『分かるw』
『十三歳でSランク』
『改めて聞くとヤバい』
「ただ――」
アナスイが少し笑う。
「マドカさんは、たまに見るくらいで」
「え?」
「私はいつもナナリー様の配信ばかり追っていましたので!」
「……あ」
マドカが横を見る。
ナナリーは苦笑していた。
「ありがとうございます……?」
『そっちが本命だったw』
『アナスイ、ブレない』
『マドカよりナナリーなの草』
「もちろん、マドカちゃんとアリシアさんのトライアングルも最高ですけどね?」
「ありがと!」
マドカが笑う。
アナスイは続ける。
「そして実際に戦ってみると――」
少しだけ真剣な顔になる。
「この子は、傲慢、憤怒の勇者と同等――」
一拍。
「いや、それ以上では?」
『え』
『傲慢・憤怒と同等以上!?』
『アナスイが言うと重い』
『マドカまた評価上がってるw』
「そんなに?」
マドカは首を傾げた。
「自分じゃよく分かんないんだけど」
「そこが一番怖いのよね」
リゼットが静かに呟いた。
「お姉ちゃん!?」
『大賢者から追撃w』
### 第五問
『ナナリーさんのどんなところが好きなんですか?』
「…………」
アナスイが画面を見る。
『待ってました』
『これを聞きたかった』
『回答お願いします』
『本題』
「皆さん、妙に楽しそうですわね……」
アナスイは苦笑した。
「私は美しいだけじゃなく、美しい歌や踊りも大好きなのです」
そしてナナリーを見る。
「ナナリー様は聖女になってから、とても頑張っていましたわね」
ナナリーが少し照れる。
「そして怠惰でも活動を開始」
「うん」
「配信で毎日のように活動」
『毎日見てるのかw』
『ガチファンだ』
「色欲でもEVが流行しはじめて、色欲国民からも大人気」
「ありがとうございます……」
「そして色欲ダンジョン制覇!」
「そこ!?」
ナナリーが驚く。
「まだ私が挑戦中だったんですよ?」
『www』
『そこ悔しかったのかw』
『色欲勇者より先に制覇した聖女』
「強くて聖女、最高じゃありません?」
「熱量がすごい……」
マドカが引いている。
「私は好きですよ」
ナナリーが笑う。
「……!」
アナスイが固まった。
『アナスイ停止w』
『ナナリー様の一言で固まったぞ』
「……はい」
小さく返事をした。
### 第六問
『勇者の中で仲のいい人、逆にあまり関わりたくない人はいますか?』
「んー」
アナスイが首を傾げる。
「仲のいい人はいませんわね」
『即答』
『勇者、仲良くないの!?』
「EVを国で配られて、勇者同士で使ってみてほしいと言われて付き合っているだけです」
「なるほど」
シルヴァの声が入る。
「私も似たようなものですね」
「あなたの場合は最近かなりエキドナに来ていますけれど」
アナスイが横を見る。
「それは研究です!」
「ふふ」
マドカが笑う。
「そして――」
アナスイの表情が少し変わった。
「あまり関わりたくないのは、嫉妬ですわね」
『来た』
『嫉妬!?』
『前にも名前出てたやつか』
「なんというか」
アナスイがため息をつく。
「あの勇者は誰にでも噛みつく」
「へえ」
「エキドナだと、愛らしさを消したティニアさんと言えば分かるでしょうか?」
「うわぁ……」
マドカが微妙な顔になる。
『それは嫌だw』
『ティニアから愛らしさを抜いたらダメだろw』
『想像できてしまう』
「何かあるごとにケンカを売られるんです」
アナスイが続ける。
「自分より目立つのが嫌だ。私より人気なのは気に入らない! などなど」
「それは疲れるね……」
ナナリーも苦笑する。
「女性同士ですが、極力は絶対近づきたくないですね!」
『勇者同士って大変だな』
『嫉妬の勇者こええ』
『アナスイさん頑張れ』
### 第七問
『これから勇者として、どんなことを目指していますか?』
最後の質問。
アナスイは少しだけ考えた。
「そうですわねー」
そして。
「ナナリー様の護衛をしながら、エキドナの皆さんとの交流もしたいですわねー」
「護衛なんだ」
マドカが笑う。
「もちろんですわ!」
「でも、その前にナナリーと普通に遊びに来てるよね」
「それはそれですわ!」
『目的が増えてるw』
『エキドナファンじゃん』
『勇者の目標:エキドナに通う』
「それに」
アナスイがリゼットを見る。
「怠惰の、謎だった存在の勇者――リゼット様もいらっしゃいますし」
「謎だった?」
マドカが首を傾げる。
「はい」
アナスイが頷く。
「学ぶことも多いので!」
「そう」
リゼットはお茶を一口飲んだ。
「頑張りなさい」
「はい!」
アナスイが嬉しそうに答える。
『締めがリゼット様w』
『アナスイ満足そう』
『結局エキドナ通いたいだけじゃね?』
『でも勇者の話として面白かった』
マドカがEVを見る。
「というわけで!」
両手を広げる。
「アナスイ編、終了ー!」
「ありがとうございましたわ~!」
『面白かった!』
『シルヴァ編も待ってる』
『次は強欲の勇者!』
『シルヴァさん頑張れw』
「次はシルヴァですね」
ナナリーが笑う。
「質問、どんなのが来るんでしょう」
「……」
少し離れたところで、シルヴァがEVを見ていた。
「……私への質問ですか」
マドカが振り返る。
「うん!」
「そうですか……」
シルヴァは眼鏡を押し上げた。
「では、こちらも真面目に答えましょう」
『きたー!』
次回。
**W勇者に聞きたいこと・シルヴァ編。**
強欲の勇者への七つの質問が始まる。




