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落内円は落ちている  作者: 七風


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勇者入り浸る

「ナナリー様~! 今日も遊びに来ましたわ~!」


 エキドナの屋敷に、元気な声が響いた。


 やってきたのは――色欲の勇者、アナスイ。


 彼女はリゼットから正式な許可をもらい、エキドナの屋敷へ直接転移できる専用の転移アイテムを持っていた。


 以前、ジャスティスに渡されたものと同じものだ。


 最初は強欲大陸への社員旅行にもついていきたいと頼んだものの、


「今回はエキドナの社員旅行だから」


 とマドカに説明され、泣く泣く断念した。


 しかし――。


 その後もアナスイはEVで強欲大陸を欠かさず見ていた。


 今ではすっかりエキドナのファンである。


「ナナリー様はいらっしゃいますか~?」


「アナスイさん、今日も来たんですか?」


 ナナリーが笑いながら迎える。


「もちろんですわ!」


「週に何回来てるんですか?」


「数えたことはありませんわ!」


「それ、結構来てますよね……」


 マドカが苦笑する。


「まあいいじゃん。本人が楽しそうだし」


「マドカちゃんも優しいですわね!」


「私に惚れないでね?」


「そこは大丈夫ですわ!」


「即答!?」


 そんなやり取りをしながら屋敷の中へ入っていく。


「まずはリゼット様へご挨拶を――」


 アナスイが廊下の先を見る。


 そして。


「……あら?」


 そこには。


 リゼットと話している人物がいた。


「あなた……」


 眼鏡をかけた青年。


 強欲の勇者、シルヴァだった。


「ああ」


 シルヴァもアナスイに気づく。


「あなたですか。この間の勇者会議ぶりですね」


「勇者会議!?」


 マドカの目が輝いた。


「なにそれ! おもしろそう!」


「マドカ、食いつくところそこなの?」


 アリシアが苦笑する。


「だって勇者会議だよ?」


 マドカはシルヴァへ近づく。


「どんなこと話すの!?」


「大したことはありませんよ?」


 アナスイが答える。


「関係が悪化しそうな国はあるか、強力なモンスターは確認されているか、そういった情報交換が中心ですわね」


「へぇー」


「基本的には、各国の勇者がEVで連絡を取り合っているだけですわ」


「そうなのです!」


 シルヴァも頷いた。


「EVのおかげで国の様子をお互い知ることができて、本当に助かっていますよ!」


「勇者会議までEVなんだ」


 マドカが少し嬉しそうにする。


「便利でしょ?」


「ええ。以前なら何度も連絡を取るために人を動かす必要がありましたからね」


 アナスイが微笑む。


「今ではかなり楽になりましたわ」


 そしてアナスイはシルヴァを見た。


「そういえば――」


「はい?」


「あなたもマドカちゃんに負けてましたわね」


「その話ですか……」


 シルヴァが少しだけ遠い目をする。


「マドカさんはリゼット様の弟子、そして剣聖ムサシさんの弟子ですよ?!」


 少しだけ声が大きくなる。


「Sランク認定もしっかりありますし! 勇者であっても不思議ではありませんよ!」


「んー」


 マドカは首を傾げた。


「興味ないもんねー」


「本人が一番気にしていない……」


 シルヴァが苦笑する。


「マドカちゃんは強すぎますわね」


 アナスイが笑った。


「強欲でも大活躍でしたし!」


「見てた?」


「もちろんですわ!」


 胸を張るアナスイ。


「私、ずっとEVでチェックしておりましたもの!」


「本当にファンになってる……」


 マドカが笑う。


「それにしても」


 アナスイは少しだけ真面目な顔になる。


「強欲の様子を見ましたけれど――」


「エキドナ、恐るべしですね……」


 シルヴァも頷いた。


「ええ」


「正直、私達が勇者だというだけで鼻で笑われそうですわ」


「そう?」


 リゼットがいつものようにお茶を飲みながら言った。


「勇者が強いのは良いことじゃない」


「そうですけれど……」


 アナスイはリゼットを見る。


「私もリゼット様の弟子として、さらなる研鑽を――」


「弟子ではないわよ?」


「…………」


 シルヴァが固まった。


「え?」


「あなた、いつから弟子になったの?」


「いつから……」


 シルヴァが真剣に考え始める。


「……私の心の中では、かなり前からですが!」


「心の中だけなのね」


 マドカが笑う。


「お姉ちゃんは弟子にした覚えないってさ」


「そ、そんな……!」


 シルヴァが肩を落とす。


「私、かなり頑張っているのですが……」


「まあ、頑張ってるのは知ってるわよ」


 リゼットは普通に答えた。


「だから、これからも勝手に頑張りなさい」


「はい!」


 一瞬で元気を取り戻すシルヴァ。


「頑張ります!」


 その横で、アナスイがシルヴァを残念そうにみつめていた。


「……弟子とすら認められてなかったのに暴走していたんですのね。」


「アナスイは暇なの?」


 マドカが笑う。


「え?」


「だって最近、アナスイも結構ここに来てるじゃん」


「…………」


 アナスイが黙った。


「確かによくナナリーさんに会いに来ると言ってましたね。」


 アナスイは少し困った顔をする。


「ここには知らない技術や魔法がたくさんありますから勉強になるのですわ!」


「要するに遊びに来てるんだね」


「エキドナの事をよく知るための研究です!」


「はいはい」


 マドカが笑う。


 アナスイも楽しそうに笑った。


「では、私とアナスイさんはエキドナへよく来る勇者仲間、ということでよろしいですね?」


「そんなカテゴリなの!?」


 マドカが突っ込む。


 しかし。


 シルヴァは否定しなかった。


「……まあ」


 小さく頷く。


 アナスイも満足そうに笑う。


「では、今日もナナリー様とお話を――」


「私も新しい魔道具を見せてもらいたいです」


「ちょっと待って」


 マドカが二人を見る。


「ここ、勇者のたまり場になってない?」


 リゼットはお茶を飲みながら。


「別にいいんじゃない?」


 そう言った。


 エキドナの屋敷には今日もまた。


 色欲の勇者と、強欲の勇者がいた。


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