最終ゲーム
「そして――」
スタッフが立ち止まった。
その先にあった扉は、これまでのものとは大きさが違った。
巨大。
あまりにも巨大だった。
ゆっくりと開いていく。
ゴゴゴゴゴゴゴ……。
その向こうに広がっていたのは――
これまでのゲーム会場を何倍にもした、巨大な戦闘フィールドだった。
大地。
空。
巨大な塔。
浮遊する足場。
動く壁。
無数の魔法陣。
そして、フィールドの中央には巨大な城塞まで用意されている。
「うわぁ……!」
マドカが目を輝かせる。
「すごい!」
「最終ゲームとなります」
スタッフが説明する。
「こちらは、これまでのゲームの要素をすべて組み合わせた総合競技でございます」
「全部?」
「はい」
スタッフがフィールドを指す。
「戦闘」
遠くに巨大な魔物が出現する。
「身体能力」
足場が動き、巨大な壁が立ち上がる。
「魔法」
空中に無数の魔法陣が展開される。
「判断」
複数の道が現れる。
「そして――」
フィールド中央に大量の装置が出現した。
「記憶と戦略」
「盛りだくさんだね!」
マドカが笑う。
「さらに今回は、お二人での参加となります」
「二人?」
「はい。最終ゲームの参加者は二名一組です」
マドカはすぐにリゼットを見る。
「じゃあ――」
「私たちね」
リゼットが微笑む。
「うん!」
マドカとリゼットがフィールドへ入る。
観客席も一気に沸いた。
『ついに最終ゲーム!』
『マドカとリゼットか!』
『この二人は派手になりそうw』
『今まで控えめだった分、最後は期待してるぞ』
『カジノ側、これ大丈夫か?w』
対戦相手も姿を現す。
二人組だった。
一人はS級冒険者。
もう一人は魔法と戦略に長けたVIPゲームの常連。
どちらも、ここまで勝ち上がってきた強者だった。
「最終戦の相手ですか」
リゼットが見る。
「ええ」
マドカも笑う。
「強そう!」
スタッフが最後の説明をする。
「勝利条件は、フィールド中央にある最終核へ到達し、これを起動すること」
「なるほど」
「ただし、そこへ向かう途中には様々な障害がございます」
「敵もいる?」
「はい」
フィールドの奥で、巨大な魔物が立ち上がった。
さらに空中には無数の魔法陣。
そして、地面そのものが動き始める。
「制限時間は三十分」
スタッフが告げる。
「途中での失格条件はございません。最後まで残っていた組が勝者となります」
「よし!」
マドカが剣を抜く。
「行こう、お姉ちゃん!」
「ええ」
リゼットも杖を構える。
「では――」
ゴォォォォォン!!
開始の鐘が鳴り響いた。
その瞬間。
フィールド全体が動き始めた。
巨大な魔物が突進する。
空から無数の魔法が降り注ぐ。
足場が崩れる。
壁が移動する。
「マドカ、右!」
「了解!」
マドカが走る。
飛んできた魔法をかわし、そのまま巨大な壁を駆け上がる。
上空から魔物が襲いかかる。
「そこ!」
一閃。
魔物が吹き飛ぶ。
「お姉ちゃん!」
「任せて」
リゼットが杖を掲げる。
空を覆うほどの巨大な魔法陣が出現する。
「――まとめて消しましょうか」
ズドォォォォォン!!
巨大な光がフィールドを走る。
魔物。
障害物。
敵の魔法。
すべてをまとめて吹き飛ばす。
『うわああああああ!』
『出たwww』
『リゼット派手すぎるw』
『最終戦だからって遠慮なくなったぞw』
敵チームも負けじと攻撃を仕掛ける。
S級戦士がマドカへ突撃。
高速の斬撃。
マドカも剣を合わせる。
キィン!
激突。
一撃。
二撃。
三撃。
空中へ跳ぶ。
互いの剣が何度もぶつかる。
「強い!」
マドカが楽しそうに笑う。
「そうこなくちゃ!」
さらに速度を上げる。
そして――
一気に踏み込み。
ドンッ!!
相手の剣を弾き飛ばした。
「ぐっ!」
「まだ!」
マドカが追撃する。
しかし、その瞬間。
「マドカ!」
リゼットの声。
「左よ!」
「えっ!」
マドカが横へ飛ぶ。
直後。
巨大な魔法が地面を吹き飛ばした。
「危なっ!」
「今のは囮ね」
リゼットが敵の魔法使いを見る。
「本命はこちらでしょう?」
敵が驚く。
「なぜ分かった!?」
「簡単よ」
リゼットが微笑む。
「あなたが最初から、こちらを中央へ誘導していたから」
「……!」
「だから、その先の仕掛けも――」
リゼットが指を向ける。
「こうなるわね」
パチン。
指を鳴らす。
フィールド中央に隠されていた魔法陣が逆転する。
「なっ!?」
敵チームの足元から光が噴き上がる。
二人が吹き飛ぶ。
『えぐいw』
『戦略までリゼットかよw』
『最終戦の相手かわいそうw』
マドカが笑う。
「じゃあ、先行くね!」
一気に走り出す。
巨大な壁を飛び越える。
空中の足場を蹴る。
崩れる床を駆け抜ける。
そして――
最終核が見える。
「あと少し!」
だが。
最終核の前に、巨大な魔物が現れた。
これまでの魔物とは比較にならない。
全身に黒い魔力を纏い、フィールドそのものを揺らしている。
「最後の守護者、ということね」
リゼットが見る。
「お姉ちゃん、これ私がやっていい?」
「ええ」
リゼットが笑う。
「楽しんでいらっしゃい」
「やった!」
マドカの魔力が一気に膨れ上がる。
「――行くよ!」
地面が砕ける。
一瞬で距離を詰める。
魔物が巨大な腕を振る。
マドカは潜り抜ける。
背後へ。
一閃。
二閃。
三閃。
魔力を込めた斬撃が連続して走る。
魔物が咆哮する。
巨大な魔力砲を放つ。
「そんなの!」
マドカが真正面から突っ込む。
その直後。
リゼットの魔法が発動した。
「道を作るわ」
巨大な魔法が魔力砲を左右へ逸らす。
その中央を――
マドカが突き抜ける。
「いっけぇぇぇぇ!!」
剣が閃く。
巨大魔獣の中心を貫く。
ドゴォォォォォォォン!!
光がフィールド全体を埋め尽くす。
魔獣が崩れ落ちる。
その向こうに――
最終核。
マドカが走る。
そして。
「これだ!」
手を伸ばす。
――カチッ。
最終核が起動した。
同時に、フィールド全体が巨大な光に包まれる。
『最終ゲームクリア』
一瞬の静寂。
そして――
「最終ゲーム、終了!」
会場が爆発するような歓声に包まれた。
『うおおおおおお!!』
『最後めちゃくちゃ派手だった!!』
『これだよこれw』
『最終戦だけ映画みたいになってるw』
『マドカとリゼット強すぎるw』
『ここまで来たらもう納得しかないw』
マドカは剣を掲げる。
「やったー!」
リゼットはその隣で、いつものように落ち着いて微笑んでいた。
スタッフが二人へ歩み寄る。
「おめでとうございます」
そして。
「これにて――特別ゲーム、全ステージ終了となります」
会場中から拍手が巻き起こる。
こうして。
エキドナの特別ゲーム挑戦は――
最後まで圧倒的な盛り上がりの中、幕を閉じた。




