第7ゲーム 戦略
「それでは――第七ゲームへご案内いたします」
扉の向こうに広がっていたのは、これまでとはまったく違う会場だった。
巨大な円形の盤面。
その上には、いくつもの都市や砦、資源地が配置されている。
さらに、その周囲には小さな駒が大量に並んでいた。
「第七ゲームは、戦略ゲームでございます」
スタッフが説明する。
「こちらの盤面上で、限られた戦力と資源を使い、決められた勝利条件を達成していただきます」
「戦争ゲームみたいな感じ?」
マドカが覗き込む。
「はい。ですが、実際に戦闘するわけではございません」
「なるほど」
リゼットが盤面を見る。
「駒にはそれぞれ能力が設定されていて、実際の戦闘能力は関係ない、と」
「その通りでございます」
スタッフが頷く。
「攻撃、防衛、補給、偵察など、それぞれ異なる役割を持つ駒を使い、相手より先に勝利条件を満たしてください」
「制限時間は?」
クリスティーナが尋ねる。
「一手ごとに制限時間がございます」
「では――」
マドカがリゼットを見る。
「お姉ちゃんの出番だね!」
「ええ」
リゼットが席へ座る。
「こういうものなら、少し楽しめそうね」
対戦相手として現れたのは、強欲大陸でも有名な戦略ゲームの常連だった。
これまで何度もVIPゲームに参加し、数多くの勝利を重ねてきた人物らしい。
「相手はかなりの常連だぞ」
観客席から声が飛ぶ。
「初見の相手なら有利だ!」
『今度はリゼットでも経験差あるかな』
『戦略ゲームはさすがに一筋縄じゃいかないだろ』
『VIP常連ならかなり強いぞ』
対戦相手が笑う。
「このゲームには長く参加しております」
「そう」
リゼットは盤面を見る。
「では、よろしく」
「よろしくお願いします」
ゲーム開始。
最初の数ターン。
相手は堅実に領地を確保していく。
都市を押さえ。
資源を確保し。
防衛線を整えていく。
リゼットも駒を動かす。
しかし――
その動きは、一見すると少し変わっていた。
「そこですか?」
対戦相手が首を傾げる。
普通なら重要な資源地を取りに行く場面で、リゼットはあえて別の場所へ駒を移動させた。
「ええ」
「そこは価値が低いと思いますが」
「今はね」
リゼットは淡々と答える。
ゲームが進む。
相手は着実に盤面を広げていく。
ところが――
数ターン後。
「……あれ?」
相手の補給線が一つ、途切れていた。
リゼットが最初に置いた駒が、いつの間にか重要な位置に入っている。
「まさか……」
相手が盤面を見直す。
「最初から、ここを狙っていたのですか?」
「そうだけれど」
「…………」
さらに数ターン。
リゼットは新たな駒を動かす。
相手が守ろうとしていた都市の前に、複数の駒が集まる。
しかし、直接攻撃はしない。
「攻めないのですか?」
「必要ないもの」
「では、何を?」
リゼットが微笑む。
「あなたが次に動く場所を待っているの」
「……!」
相手の顔が強張る。
その通りだった。
相手が一手動かした瞬間、盤面全体の状況が一気に変わる。
補給。
防衛。
資源。
すべてが連鎖していく。
「そんな……」
相手が必死に立て直そうとする。
だが――
「もう遅いわ」
リゼットが最後の駒を動かす。
盤面中央が光る。
『勝利条件達成』
会場が静まり返った。
「……終了です」
スタッフが結果を確認する。
「第七ゲーム、リゼット様の勝利です」
歓声が上がる。
『えええ!?』
『何したの今w』
『相手の行動を全部読んでたのか?』
『初見だよな?』
『これ経験者相手にやることじゃないw』
対戦相手はしばらく盤面を見つめていた。
「……最初の一手から、最後まで仕込まれていた」
「そうね」
リゼットはあっさり頷く。
「あなたは最初から、最終的にこの形を作ろうとしていたでしょう?」
「…………」
「だから、その前提でこちらも動いただけよ」
相手は苦笑する。
「なるほど……参りました」
マドカが駆け寄る。
「お姉ちゃん、また勝った!」
「ええ」
リゼットは立ち上がる。
「こういうゲームも悪くないわね」
クリスティーナも笑う。
「見ていても面白かったですわ」
スタッフが一礼する。
「第七ゲーム、完全クリアでございます」
「では、次ですね」
マドカが次の扉を見る。
「次は――運のゲーム!」




