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落内円は落ちている  作者: 七風


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神の遺産

 楽器の展示区画を抜ける。


 まだ先へ続く通路を見て、マドカが首を傾げた。


「……まだあるの?」


「はい」


 店員はいつものように答えた。


「最後の展示区画になります」


「最後!」


 マドカが少し嬉しそうになる。


「やっと最後だ!」


 その先にあったのは、今までとは少し違った展示区画だった。


 豪華な装飾もない。


 巨大な魔道具が並んでいるわけでもない。


 ただ、広い部屋の中央に――七つの展示台が置かれていた。


「……?」


 マドカが近づく。


 それぞれの展示台には、一つずつ品物が置かれている。


 冠。


 指輪。


 鏡。


 杯。


 剣。


 そして、その他にも用途の分からない品がいくつか。


「なんだろう?」


 マドカが眺めていると、店員が静かに説明を始めた。


「こちらは――『神の遺産』シリーズと呼ばれているものです」


「神の遺産?」


 マドカが顔を上げる。


「はい」


 店員が一つ目の展示台を示す。


「《傲慢》――ルシファー」


 次の展示台。


「《強欲》――マモン」


 さらに。


「《色欲》――アスモデウス」


「《嫉妬》――レヴィアタン」


「《暴食》――ベルゼブブ」


「《憤怒》――サタン」


「そして――《怠惰》――ベルフェゴール」


 七つ。


 それぞれに、七つの大罪の名が刻まれていた。


「…………」


 マドカが黙る。


 ナナリーも展示品を見ている。


 グレタも。


 ニコラも。


 エジソンも。


 そして――。


「神器とも呼ばれています」


 店員が付け加えた。


「ただし、これらが本当に神の遺産なのか。あるいは後世の誰かが作ったものなのか。それは分かっておりません」


「え?」


 マドカが振り返る。


「分かってないの?」


「はい」


「じゃあ、偽物かもしれない?」


「可能性はあります」


 店員は頷いた。


「そもそも、本物の神の遺産を知る者自体がほとんど存在しません。伝承に残る名前と一致していることだけが、これらの最大の価値となっています」


「…………」


 マドカはもう一度、展示台を見る。


 そして。


「……これ、欲しい」


 即答だった。


「え?」


 店員が少し驚く。


「だって七つの大罪の名前がついてるんでしょ?」


「はい」


「本物か偽物か分からないんでしょ?」


「はい」


「じゃあ偽物でもいい!」


「いいの!?」


 ナナリーが思わず突っ込む。


「だってかっこいいじゃん!」


 マドカは楽しそうに笑った。


「こういうの欲しいよ!」


 ナナリーも展示台を眺める。


「……まあ、確かに」


「でしょ?」


「名前だけでも欲しくなるのは分かるかも」


 グレタも静かに頷いた。


「武器としての価値がなくても、こういうものは収集する価値がある」


「そうだよね!」


 マドカが嬉しそうに頷く。


 ニコラも展示品を眺めながら、


「これ、偽物でもいいな~」


 と呟いた。


「ニコラも!?」


「だって~」


 ニコラが少し笑う。


「七つの大罪の神器って名前だけで、なんか欲しくなる~」


「分かる!」


 エジソンも興味津々で展示台を覗き込む。


「こういう伝承品って、実物が残ってるだけでもすごいよ!」


「じゃあエジソンも欲しい?」


「欲しい!」


 即答だった。


「本物だったら最高だし、偽物でも研究資料になる!」


「結局みんな欲しいじゃん!」


 マドカが笑う。


 そして――。


 リゼットが七つの展示台を眺めた。


「……面白いわね」


「お姉ちゃんも欲しい?」


「ええ」


 リゼットはあっさり頷いた。


「本物かどうか確認できないところも含めて、興味深いわ」


「じゃあ、これも景品にあるんだよね?」


 マドカが店員を見る。


「はい」


「いくら?」


 店員が少し困ったような顔をした。


「……通常の景品とは扱いが違います」


「また?」


「はい。こちらは特別ゲームの景品としてのみ、交換可能です」


「なるほど……」


 マドカは七つの神器を見る。


 そして、にやっと笑った。


「じゃあ――」


 マドカが振り返る。


「これ、取りに行こう!」


「おう!」


 ジャスティスが即答する。


「かっこいいもんな!」


「だよね!」


 ヒナタも笑う。


「本物かどうか分からなくても、欲しい!」


「うんうん!」


 ナナリーも頷く。


「こういうのは持って帰りたい!」


 ニコラも、


「欲しい~」


 と手を上げる。


 グレタも静かに頷いた。


 エジソンまで、


「絶対調べたい!」


 と乗ってくる。


 コメント欄も一気に流れ始めた。


『七つの大罪の神器!?』


『名前だけで欲しくなるの分かるw』


『偽物でもいいは強いw』


『神器って響きがもうカッコいい』


『エキドナ、景品見に来ただけなのに欲しいもの増えすぎだろw』


『これ特別ゲームの景品なのか!』


『本物だったらどうすんだよw』


 マドカは最後に七つの展示台を見渡した。


「……うん」


 そして、満足そうに頷く。


「景品、見終わった!」


 今度こそ、本当に最後だった。


 これ以上見ていたら、欲しいものが増えるだけだ。


「じゃあ――」


 マドカが振り返る。


「ゲーム、やろう!」


 七つの神器を手に入れるために。


 そして――。


 どこまで本物なのかも分からない、神の遺産を確かめるために。


 エキドナはようやく、特別ゲームの会場へ向かった。


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