カジノ景品3
景品展示の奥へ進むにつれて、並んでいる品の価値も、だんだんと分かりやすくなっていった。
「古代文明製、魔力蓄電装置です」
店員が説明した瞬間、ニコラが足を止める。
「……これ、欲しい~」
「また?」
マドカが笑う。
「うん~。これ、飛空艇にも使えると思う」
グレタも装置を眺める。
「保存量が十分なら、かなり使える」
「ほら!」
ニコラが嬉しそうに言う。
「技術班、みんな欲しいじゃん~」
「三百万チップになります」
「買おう」
ニコラが即答した。
「早っ!」
マドカが笑う。
さらに進むと、高性能魔導モーター、自動制御型魔導炉、魔力による高精度加工機など、技術班が次々と興味を示す品が並んでいた。
「これも欲しい」
「これも使える」
「これ、改造できそう」
特にニコラとグレタ、エジソンは展示品を見るたびに足を止める。
そして――。
「こちらは、詳細不明の古代魔道具です」
「詳細不明?」
マドカが展示台を見る。
そこに置かれていたのは、黒い箱だった。
上には円盤のようなものが二つ。
中央には細かなつまみ。
さらに横には、左右に動かせそうな操作部が並んでいる。
「……」
ニコラが無言になった。
「ニコラ?」
「……これ」
ニコラが箱を眺める。
「DJ機材に似てる~」
「あ、本当だ」
マドカも覗き込む。
「ニコラが使ってるのとちょっと似てるね」
「うん~。でも、ちょっと違う」
店員が困ったように説明する。
「申し訳ありませんが、当方でも用途は分かっておりません。遺跡から発掘されたもので、魔力を流すと一部が反応することだけ確認されています」
「いくら?」
「二百万チップです」
「買う~」
「即決!?」
マドカが吹き出す。
「だって予備にできるかもしれないし~」
「DJ機材の予備?」
「うん~」
マドカは普通に頷いた。
「DJニコ、機材壊したら大変だもんね」
「そうそう~」
ニコラが嬉しそうに頷く。
コメント欄も盛り上がった。
『用途不明の箱を二百万で即買いw』
『ニコラさんDJ機材なら何でもいいのかw』
『予備って言ってるのがガチだな』
『マドカも普通に機材分かってるの草』
『トライアングルwith DJニコの経験値が出てる』
地球組は、その箱を見ながら密かにテレパシーを交わしていた。
(……でも、似てるよね)
(うん。ちょっとだけだけど)
(なんでこの世界にこういうのがあるんだろう)
(分からない……)
またしても、答えは出なかった。
そして次の展示区画。
「おや?」
マドカが足を止めた。
「今度は楽器?」
そこには、この世界では珍しいらしい楽器がいくつも並べられていた。
金属製の弦楽器。
魔石を組み込んだ鍵盤楽器。
普通の管楽器とは違う構造をした笛。
魔力を通すことで音量を増幅する弦楽器まである。
「こちらは大変珍しい楽器です」
店員が説明する。
「魔力を利用して弦の振動を増幅します。製造方法はすでに失われており、現存数も少ない品です」
「……これ」
ニコラが近づく。
「欲しい~」
「ニコちゃん!」
エジソンが突然身を乗り出した。
「そうだね! これはほしい!」
「え?」
「ニコちゃん! これがあれば、さらに改造できるかも!」
さっきまで比較的落ち着いていたエジソンが、急にそわそわし始める。
「この増幅機構、普通の楽器にも応用できるんじゃないかな! 魔石の配置を変えて、音の出力を調整して……」
「エジソン、落ち着いて」
「落ち着いてるよ!」
「全然落ち着いてないよ?」
マドカが笑う。
「でも、これがあれば面白いことができそうだよ!」
エジソンは楽器を見ながら続ける。
「ニコちゃんはもうDJができる。ナナリーちゃんはギターを弾ける」
「うん」
ナナリーが頷く。
「だから、この楽器はマドカちゃんやアリシアちゃん用にすればいいんじゃないかな!」
「私?」
マドカが自分を指差す。
「うん!」
「アリシアも?」
少し離れたところにいたアリシアが振り返る。
「そう!」
エジソンの目がさらに輝く。
「トライアングルの三人が、それぞれ別の楽器を持ってライブできるかもしれない!」
「それ、いい!」
マドカがすぐに乗った。
「ナナリーはもうギターがあるから……私は何にしようかな?」
「私はこの辺の楽器、ちょっと興味あるかも」
アリシアも展示品を見る。
ニコラはその様子を眺めながら、
「ふ~ん」
と小さく笑った。
「まぁ~、私には勝てないけど~」
「なんでそこで煽るの!?」
マドカが突っ込む。
「私はもうDJだから~」
「それはそうだけど!」
コメント欄も一斉に反応した。
『DJニコ余裕w』
『ニコラが煽ってるw』
『トライアングルvsDJニコになるのか?』
『いや一緒にやるんだろw』
そんな中、エジソンはさらに別の楽器を見つけた。
「……あ!」
駆け寄る。
「これも面白い!」
「エジソン君、完全に研究になってるよ」
「だって!」
エジソンは楽器を手に取るわけにもいかず、展示ケース越しに細部を眺める。
「この世界の楽器って、魔力を使った独特の構造が多いんだよ! これを参考にすれば、発掘されたあの楽器とは違うものを作れるかもしれない!」
そして突然、マドカたちを見る。
「そうだ!」
「?」
「トライアングルだけじゃなくて、もっと楽器を増やしてさ!」
エジソンは完全に興奮していた。
「**違うグループを作っても面白いんじゃないの!?**」
「別のグループ?」
「そう!」
エジソンが勢いよく頷く。
「魔力楽器を改造して、いろんな人に持ってもらうんだ! せっかくこんなに珍しい楽器があるんだから、いろんな組み合わせで音楽をやってみようよ!」
「それなら――」
ヒナタが手を挙げた。
「私、やりたい!」
「え?」
マドカが振り返る。
「私も楽器やってみたい!」
「俺も!」
ジャスティスも手を挙げた。
コメント欄が即座に反応する。
『またジャスティスか!w』
『ジャスティス何でも参加するなw』
『ヒナタも来た!』
『新グループ結成!?』
『エキドナ音楽活動広がりすぎw』
「なんで俺が参加すると毎回そうなるんだよ!」
ジャスティスがコメント欄に文句を言う。
「だって毎回参加したがるじゃん」
マドカが笑う。
「それは……そうだけど!」
ヒナタも楽しそうに笑った。
「でも、やってみたい!」
「じゃあ、楽器を選ばないとね!」
エジソンが嬉しそうに展示品を見回す。
「そうだね! ニコちゃん!」
「なに~?」
「これも研究材料になる!」
「じゃあ買おう~」
「うん!」
エジソンはすでに次の楽器を探している。
ニコラもそれに付き合っている。
マドカ、ナナリー、アリシアはトライアングルとして新しい楽器を探し始め、ヒナタとジャスティスまで別グループの話に乗り気になっていた。
そしてコメント欄には――。
『カジノの景品を見てたはずなんだけどな』
『いつの間に音楽グループ結成の話になった?』
『この景品展示、何が起きるか分からなすぎるw』
『でも新しいライブ見たい!』
マドカはそんなコメントを眺めながら笑った。
「……まあ、せっかく来たんだし、楽器もいっぱい見ていこうよ!」
「うん~」
ニコラが頷く。
「面白いの、まだありそうだし~」
「そうだね!」
エジソンもすぐに答えた。
「まだまだ探そう!」
――景品見学は、ますます終わる気配がなくなっていた。




