展示会が終わって
展示会は、その後も昼過ぎまで続いた。
最初はホテルの宿泊客が中心だった。
しかし、噂を聞いた別の宿泊客や、ホテル内の商業施設を利用していた客まで集まり始め、気がつけば展示スペースの周囲には人が途切れなくなっていた。
特に人気だったのは、やはりモンバトとヒロバトだった。
「もう一回やろうぜ!」
「今度は俺のモンスターで勝負だ!」
「ヒロバトって訓練にも使えるんだろ? 剣術のデータとかないのか?」
「あるよ~」
ニコラが答える。
「登録してあればね~」
「じゃあ、俺も登録してくれ!」
「それは本人が登録しないと駄目だよ~」
「そうなのか……」
そんなやり取りまで始まっていた。
マドカたちは時々質問に答えながら、実際に道具を操作してみせる。
そのたびに驚きの声が上がる。
「……なんだか、昨日より大変なことになってません?」
ナナリーが周囲を見回して苦笑する。
「そう?」
「はい。昨日は『面白いものを持っている旅行客』くらいだったと思うんですけど……」
「今日は?」
「『とんでもないものを持っている旅行客』になっている気がします」
「いいじゃん!」
マドカは楽しそうに笑った。
「旅行なんだから、いろんなもの見せたほうが面白いよ!」
「マドカちゃんらしいですね」
クリスティーナも微笑む。
そして昼過ぎ。
さすがに人の流れも落ち着いてきたところで、ホテル側から終了の申し出があった。
「本日は、本当にありがとうございました」
責任者が深々と頭を下げる。
「こちらこそ、楽しかったです!」
マドカが笑顔で返す。
「こちらとしても、とても興味深い時間でした」
「また何かあったら呼んでくださいね~」
ニコラが手を振る。
「今度はもっと変なの持ってくるから~」
「もっと変なの……?」
責任者が少しだけ固まった。
「ニコラ、それはホテルの人を不安にさせる言い方ですよ」
ナナリーが苦笑する。
「え~? でも本当だよ~」
「否定できないのが困るわね」
リゼットまで笑う。
こうして、二日目の展示会は終了した。
ホテルを出たエキドナ一行は、そのまま街へ繰り出すことにした。
「で、午後はどうする?」
マドカが聞く。
「まだお昼過ぎですし、ホテルに戻るのも早いですよね」
ナナリーが周囲を見る。
「何か面白いものないかな?」
「勝負でも探す?」
アリシアが言う。
「強欲大陸なんだから、そこら中にありそうだけど」
「いいね!」
マドカが即答する。
「昨日もいろいろあったし、今日も探そう!」
そのまま街を歩いていると――。
「あれ?」
マドカが足を止めた。
店先に、小さな看板が出ている。
『本日の大食い勝負・参加者募集中』
「大食いだって!」
「……マドカ」
ナナリーが嫌な予感のする顔をする。
「出る気ですか?」
「もちろん!」
「やっぱり……」
結局。
その店では、マドカが大食い勝負に参加することになった。
相手は屈強そうな大男。
マドカは普通の少女にしか見えない。
「本当にこの子が出るのか?」
店主が不安そうに聞く。
「大丈夫です」
ナナリーが答える。
「食べることに関しては……」
「え?」
「いえ、何でもありません」
そして勝負開始。
「いただきまーす!」
マドカが勢いよく食べ始める。
「速っ!?」
周囲から声が上がった。
大男も負けじと食べる。
しかし――。
「ごちそうさまでした!」
「……え?」
あっという間だった。
「もう終わり?」
「はい!」
「まだ一皿目なんだが……」
店主が呆然とする。
「おかわり!」
「あるの!?」
その後。
店の記録を更新したマドカは、賞品として大量のお菓子をもらった。
「やったー!」
「……本当に食べ物関係だけは強いですね」
ナナリーが呆れながら笑う。
「失礼な!」
「褒めてますよ」
「ならいい!」
そんな小さな騒ぎを起こしながら、二日目の午後も過ぎていった。
夕方。
一行はホテルへ戻る。
「今日は結構遊んだね」
マドカが満足そうに言う。
「展示会も楽しかったし、大食いも楽しかった!」
「私は少し疲れました……」
ナナリーが椅子に座る。
「人が多かったですからね」
「でも、強欲大陸って面白いね」
アリシアが言う。
「勝負するだけで景品がもらえたり、知らない人とも普通に勝負したり」
「それがこの大陸の文化なんでしょうね」
クリスティーナも頷く。
そのときだった。
「そういえば」
ビアンチが思い出したように口を開いた。
「明日、オークションがあるらしいですよ」
「オークション?」
マドカが反応する。
「はい」
ビアンチが頷く。
「街で少し聞いたんですけど、珍しい魔道具や素材、それから普通では手に入らないような品まで出ることがあるそうです」
「素材?」
マドカの目が輝く。
「……」
ナナリーも気づく。
「飛空艇の素材が出る可能性も?」
「そこまでは分かりません」
ビアンチが肩をすくめる。
「ただ、強欲大陸のオークションなら、かなり珍しいものが出ることもあるみたいですよ」
「行こう!」
マドカが即答した。
「明日はオークション!」
「まだ何が出るかも分からないのに……」
ナナリーが苦笑する。
「でも、面白そうではありますね」
「うん!」
マドカが頷く。
「せっかく強欲大陸に来たんだもん。そういうの、見てみたい!」
「では、明日はオークションに行ってみましょうか」
クリスティーナが微笑む。
「賛成」
リゼットも頷いた。
「どんなものが出てくるのか、私も興味あるわ」
「決まりだね!」
マドカが笑う。
こうして。
強欲大陸二日目は、静かに終わった。
そして翌日は――。
強欲大陸の珍品が集まる、オークションへ。
エキドナ一行は、まだ知らない。
そこで彼女たちを待っているものが、ただの珍品だけではないことを。




