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強欲大陸へ到着したエキドナ一行は、まず滞在先となるホテルへ向かった。
今回の旅行は長い。
冬休みを利用した長期滞在ということもあり、全員が常に同じ場所で行動する必要もない。
面白そうな場所があれば行ってみる。
気になるものがあれば見に行く。
疲れたらホテルに戻る。
そんな具合の、かなり自由な旅行になる予定だった。
「それじゃあ、みんなの部屋も取っておくから。先に好きなところを見てきていいよ」
受付を済ませながら、マドカが言った。
「それなら、少し周辺を見てきましょうか」
リゼットがそう言う。
エレノア、ブリジット、色欲賢者メアリーもそれに続いた。
「強欲大陸の魔法事情には興味があります。現地の魔術師と話ができる場所があればいいのですが」
メアリーが周囲を見ながら言う。
「ホテルの中だけでも、魔法関係の施設があるみたいね」
リゼットが案内板を見る。
「なら、そこから行ってみましょうか」
「はい」
四人はそのままホテルの奥へ向かっていった。
一方、少し離れたところでは、ムサシたちも案内板を眺めている。
「コロシアムがあるようだな」
ムサシが目を細めた。
「ほう。面白そうだ」
「師がそう言うなら、行ってみましょう」
ガイルが答える。
チヨも案内板を見上げていた。
「……強い人、いるかな」
「いるよきっと! 姉様も出る?!」
ナツメが答える。
「なら……出てみようかな……」
「アーノルドも来るだろ?」
「ああ」
五人が歩き出す。
「おい、ちょっと待て!」
後ろからクライブの声が飛んできた。
「お前たち、着いたばかりなんだから、もう少し落ち着いて行動しろ!」
「クライブ、そう言うな。せっかくの旅行だ」
「ムサシ、あんたまで煽るな!」
クライブはため息をつきながら追いかけていく。
「やれやれ……勝手に行きやがって。しょうがないやつらだ」
そんな一団を見送ってから、マドカはホテルの案内板へ目を戻した。
そこには高級衣料品店、宝飾店、魔道具店、食品店、劇場、レストラン、カジノ、浴場、娯楽施設など、数え切れないほどの施設が並んでいる。
「……これ、ホテルの中だけでもかなり遊べそうだね」
「本当に大きなホテルですわね」
クリスティーナも案内板を見る。
その隣では、ガブリエルが目を輝かせていた。
「お店もたくさんありますわ。どこから見に行きましょうか」
「ガブちゃん、もう決める気満々じゃん」
「せっかく来たのですもの」
ガブリエルは楽しそうに笑った。
「私もいろいろ見てみたいですわ」
「それじゃあ、まずは買い物にしようか」
マドカたちが商業区画へ向かう。
その途中。
「マドカちゃん!」
後ろから声がした。
振り返ると、ナナリーたちがこちらへ歩いてくる。
「ナナリー。もう出かけるの?」
「うん! ヒナタちゃんとアリシアと街を見て回ろうと思っていたんだけど……」
ナナリーはマドカを見るなり、明らかに表情が明るくなった。
「マドカさんも一緒に行きませんか?」
「いいよ。ちょうど買い物しようと思ってたところだし」
「本当?」
「うん」
「じゃあ一緒に行きましょう!」
ナナリーが嬉しそうにマドカの隣へ並ぶ。
ヒナタはその様子を見て微笑んだ。
「マドカが一緒なら、ナナリーさんはしゃいでるね」
「そうですね。私も楽しみです!」
アリシアも頷く。
その後ろから、ティニアが顔を出した。
「なによ。マドカが来るなら私も行くわよ!」
「ティニアもいたんだ」
「最初からいたわよ!」
ティニアは少し得意そうに胸を張る。
「強欲大陸なんだから、面白いものくらい見つけたいじゃない!」
「それなら一緒に行こうか」
「言われなくてもそのつもりよ!」
こうして観光組も自然に人数が増えていった。
その頃。
ホテル内の別の区画では、技術班が魔道具売り場を見つけていた。
「すげぇな。ここだけで工房みてぇじゃねえか」
グレタが棚に並んだ魔道具を眺める。
「俺、この辺ちょっと見てくるわ」
「グレタ、壊さないでくださいよ」
カトリーヌが淡々と言う。
「壊さねぇよ。触るくらいなら問題ないだろ」
「それなら構いません」
少し離れたところでは、ニコラが別の魔道具を眺めている。
「これ、面白そうだよ~」
「ニコちゃん、それはね!」
エジソンが横から覗き込む。
「僕はね、この仕組みなら別の用途にも使えると思うんだ!」
「へぇ~」
ニコラは興味深そうに聞いている。
「じゃあ、これ買って帰る~?」
「うん! 僕はぜひ試してみたい!」
グレタが二人を振り返る。
「お前ら、もう買う話してんのかよ」
「だって面白そうなんだよ~」
カトリーヌはそんな三人を見ながら、少しだけ表情を緩めた。
「……まあ、今日は旅行ですからね」
技術班もまた、強欲大陸での一日を楽しみ始めていた。
そしてホテルの外。
ビアンチは一人で市場を歩いていた。
大きな商店街から少し外れた場所には、地元の商人が集まる市場がある。
観光客向けの店とは違い、こちらでは商人同士の会話が多い。
「最近、この辺りで珍しい素材が出回っているんですか?」
ビアンチが店主に尋ねる。
「ええ。どこから流れてきたものかは、よく分からないんですがね」
「そうですか」
ビアンチは穏やかに頷いた。
「ちなみに、強欲大陸では最近どんな商品が人気なんでしょう?」
「それなら――」
店主は少し考え、いくつかの商品名を挙げていく。
ビアンチは話を聞きながら、頭の中で整理していった。
何が売れるのか。
何が不足しているのか。
どんな商品に需要があるのか。
そして、商人たちが何を話題にしているのか。
「なるほど……ありがとうございます」
「いやいや。こんな話でよければ、いくらでも」
「また何かありましたら、教えてください」
ビアンチは礼を言って市場を離れる。
「……商売の話だけでも、かなり違うものですね」
それから少し歩いたところで、別の商人たちの会話が耳に入った。
「……あの店の話、聞いたか?」
「例の?」
「そうだ」
ビアンチは足を止めた。
怪しい噂というものは、こうして自然に見つかる。
彼女は少しだけ興味深そうに振り返った。
その頃、街へ出たヒナタたちはというと。
「この辺りは、ホテルとはまた雰囲気が違うねー」
ヒナタが周囲を見回す。
「そうですね。お店も多いですし、少し歩くだけでも楽しそうです」
アリシアも店先を眺める。
「マドカちゃん! 見たことないのいっぱいあるね!」
ナナリーが嬉しそうに言った。
「ほんとだ!」
「はい。やっぱり一緒に歩いていると楽しい!」
ティニアが横から口を挟む。
「まあ、マドカとナナリーがうるさいのはいつものことでしょ」
「そんなことないよ!」
「あるわよ!」
「ないって!」
二人のやり取りを見て、ヒナタとアリシアが小さく笑う。
強欲大陸で始まった長い冬休み。
それぞれが、それぞれの場所で。
エキドナ一行の自由な旅が始まっていた。
コメント欄にも、楽しそうな文字が流れていく。
『今日はこのメンバーか』
『強欲大陸、楽しそうなのじゃ』
『ホテルだけでも一日遊べそう』
『みんな好き勝手に動いてるなw』
『長期旅行って感じでいいな』




