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落内円は落ちている  作者: 七風


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強欲へ

 冬期休暇に入った、ある日のこと。


 エキドナの屋敷には、いつも以上に多くの人が集まっていた。


 エキドナのメンバーだけではない。


 マドカの母親であるクリスティーナや兄のルーデウス。


 そして王女であるガブリエルも、冬期休暇ということで屋敷に来ている。


 もちろん、その様子はEVで配信されていた。


 そんな中、ナナリーがふと思い出したように口を開く。


「そういえば、色欲の教会から情報が来ましたよ?」


「え?」


 マドカが顔を上げた。


「何の話?」


「え……」


 ナナリーが少し困った顔をする。


「飛空艇の素材を探してた話ですよ」


「……あ」


 マドカが固まった。


「そういえば、そんな話してたね」


「飛空艇?」


 隣で聞いていたルーデウスが首を傾げる。


「何の話だ?」


「あ、お兄ちゃんには話してなかったっけ」


「聞いてないぞ」


 クリスティーナも不思議そうにマドカを見る。


「私も初耳ですわ」


 EVのコメント欄も一気に流れ始めた。


『飛空艇?』


『百人乗り?』


『そんな話あったの?』


『初めて聞いたぞ』


『また裏で何かやってたのかw』


「えっとね」


 マドカが説明する。


「今の飛空艇を、もっと大きくして百人くらい乗れるようにしようって話があったの」


「そんな計画を進めていたのか」


 ルーデウスが驚く。


「うん。ただ、必要な素材が珍しくてね」


「それで色欲の教会から情報が来たんです」


 ナナリーが話を引き継ぐ。


「強欲大陸なら、そういう珍しい素材が見つかる可能性が高いらしいですよ」


「強欲大陸ですか」


 ガブリエルが目を輝かせる。


「どんなところなのかわかりませんわねー。」


「私も詳しくは知らないけど」


 ナナリーが答える。


「珍しいものや価値のあるものが、かなり集まっている大陸みたいです」


「なるほど」


 リゼットが頷く。


「それなら探しに行ってみる価値はあるわね」


「うん」


 マドカも頷いた。


「じゃあ、行ってみようか」


「強欲大陸へ?」


 ガブリエルが嬉しそうに聞き返す。


「うん。ちょうど冬期休暇だし」


「それは楽しそうですわね!」


 ガブリエルがぱっと笑顔になる。


「私も行きたいですわ!」


「私も構いませんわ」


 クリスティーナも穏やかに微笑む。


「せっかくの冬期休暇ですもの。長く滞在する旅行も楽しそうですわね」


「俺も興味があるな」


 ルーデウスも頷いた。


「強欲大陸には行ったことがない」


「じゃあ、みんなで行こうよ」


 マドカが笑う。


「素材を探しながら、いろいろ遊んでみよう!」


「遊ぶほうが目的になってません?」


 ナナリーが突っ込む。


「ちゃんと探すよ!」


「最初に忘れていた人が言っても説得力がないですね」


「……それはそう」


 マドカが素直に認める。


 すると、少し離れたところで話を聞いていたメアリーが口を開いた。


「強欲大陸への移動なら、私ができますよ」


「そうだったね」


 マドカが頷く。


「メアリーさんなら、一度行けば転移できるんだよね?」


「はい。強欲側に転移魔法陣を設置することもできます」


「それなら大陸間の移動は問題ないわね」


 リゼットが言う。


「ええ」


 メアリーが頷いた。


「一度設置してしまえば、怠惰と強欲を行き来できます」


「じゃあ、旅行中に用事ができた人も帰れるようにしようか」


 マドカが言った。


「エキドナで転移用の道具を用意しましょう」


「そうですね」


 ナナリーも頷く。


「強欲側の場所を記憶できるものと、エキドナの屋敷へ戻るものがあれば便利そうです」


「それなら旅行中も自由に動けますわね!」


 ガブリエルが嬉しそうに言う。


「用事があれば一度帰って、また強欲大陸へ戻ればいいんですもの!」


「そういうこと」


 マドカが笑う。


「ずっと全員一緒じゃなくてもいいんだよ」


「それなら長期旅行にも向いていますわね」


 クリスティーナが微笑む。


「公爵家の用事が入っても、一度戻れば済みますもの」


「王宮から呼ばれても安心ですわね!」


 ガブリエルも頷く。


「それなら本当に気軽に参加できますわ!」


 ルーデウスも転移用の道具を眺めながら、


「便利なものを作るな……」


 と感心していた。


 その横では、ムサシが静かに考えている。


「強欲大陸には、珍しい武器もあるのだったな」


「あるらしいよ」


 ナナリーが答える。


「それから、カジノもありますし、競馬場もあるそうです」


「競馬!」


 ガブリエルが反応する。


「コロシアムもあるみたいですよ」


「それも面白そうですわね!」


 さらに別の声が飛ぶ。


「ダンジョンもあるぞ」


「……それなら、戦いたい奴も困らないな」


 戦闘好きの面々からも反応が出る。


「なんか、どんどん旅行っぽくなってきたね」


 マドカが笑った。


「最初は素材探しだったんだけど」


「最初から素材探しを忘れてましたけどね」


 ナナリーが言う。


「そこはもういいでしょ!」


 そんなやり取りをしていると、ナナリーがもう一つ思い出した。


「あ」


「今度は何?」


「せっかく長期滞在するなら、時間がある時にでもトライアングルでライブしません?」


「いいね!」


 マドカが即答する。


「強欲大陸でライブ!」


「会場を借りられるなら、やってみてもいいですわね」


 クリスティーナが微笑む。


「私も参加しますわ!」


 ガブリエラも楽しそうだ。


「……ニコラにも聞いてみよう」


 マドカが振り返る。


 そこには、いつものように少し眠そうにしているニコラがいた。


「ニコラ、強欲大陸でライブしない?」


「わかった~」


 ニコラはあっさり頷いた。


「会場借りられるなら、いいよ~」


「じゃあ、それも予定に入れよう!」


『ライブまでやるのかw』


『完全に観光旅行』


『強欲大陸楽しそうだな』


『飛空艇の素材探し、忘れないでね』


『マドカが一番忘れそう』


「忘れないよ!」


 マドカがEVに向かって言う。


「ちゃんと素材も探します!」


「はいはい」


 ナナリーが笑った。


 こうして。


 百人乗り飛空艇の素材探しをきっかけに、エキドナたちは強欲大陸への長期旅行を決めた。


 冬期休暇を利用した大旅行。


 参加する者も多い。


 けれど、ずっと全員で行動する必要はない。


 必要ならエキドナの屋敷へ戻ればいい。


 また強欲大陸へ行きたくなれば、転移すればいい。


 強欲大陸では、素材探しだけではなく、観光もする。


 カジノにも行く。


 競馬も見る。


 コロシアムにも行く。


 ダンジョンにも潜る。


 珍しい武器も探す。


 時間があればライブもする。


 そして、そのほとんどをEVで配信する。


「じゃあ、準備しよう!」


 マドカが元気よく宣言した。


「強欲大陸へ――!」


「旅行ですわね!」


 ガブリエルが続く。


「楽しみですわ」


 クリスティーナも微笑む。


「なんか面白いことあるかな~」


 ニコラも眠そうに頷いた。


 強欲大陸への旅は、まだ始まっていない。


 まずは、冬期休暇の旅行準備から。


 いよいよ、強欲大陸へ。


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