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落内円は落ちている  作者: 七風


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賢者会議第三回



 それから、しばらくして。


 また賢者たちがEVの中に集まっていた。


「では、今回の会議を――」


 メアリーが口を開いたところで。


「そういえば」


 一人の賢者が突然、別の話を始めた。


「お主のところ、ヒロバトは取り寄せたかの?」


「おお」


 別の賢者が嬉しそうに答える。


「もちろんじゃ」


「やはり買ったか」


「うむ。自分のデータと戦うのは面白いのぉ」


「分かる」


「自分がどう動くのかを客観的に見られるのは興味深い」


「後でお主のデータも登録させておくれ」


「ほっほ。お主のデータと交換ならよいぞ」


「構わんぞ」


「ワシのデータなど、国が買えてしまうであろう?」


「…………」


 メアリーが目を瞬かせる。


「えっと……」


「どうした?」


「賢者様たち、ヒロバトで遊んでるんですか?」


「遊んでおる」


「かなり面白いぞ」


「研究にもなる」


「……研究?」


「自分の戦闘データを解析できるからの」


「なるほど……」


 メアリーが少し納得しかけたところで。


「おや」


 別の賢者が言った。


「ヒロバト、みんな買ったのかね?」


「買ったぞ」


「ワシもじゃ」


「アタシも買った」


「ほう」


 賢者が楽しそうに笑う。


「あれは面白いのぉ」


「お主もかなり遊んでおるじゃろ」


「うむ」


 胸を張る。


「ワシは知り合いを登録しまくってな」


「ほう」


「ワシ対十人ほどで対戦しておるよ」


「十人!?」


 メアリーが思わず声を上げる。


「ほっほっ」


「いや、笑っている場合じゃないでしょう!」


「何がじゃ?」


「十人相手って……」


「楽しいぞ?」


「そういう問題じゃ……」


「派手にやりすぎて、荒野でしかできんが!」


「…………」


 メアリーが黙る。


「荒野?」


「うむ」


「街中では?」


「建物が壊れる」


「…………」


「だから荒野じゃ」


「なるほど……」


 メアリーは遠い目をした。


「やっぱりそうなるよのぉ」


 別の賢者も笑う。


「ワシも似たようなことをした」


「お主もか」


「自分と自分の弟子を戦わせたら、建物が半壊した」


「それはヒロバトの問題ではなく、お主らの問題じゃろ」


「ほっほっほ」


 賢者たちが笑う。


 メアリーは小さくため息をついた。


「でも、ヒロバトってそんなに面白いんですね」


「面白いぞ」


「何より、自分の戦い方を客観的に見られる」


「魔法の使い方も確認できる」


「相手のデータを借りれば、普段戦えない相手とも模擬戦ができる」


「そういう意味では、魔法研究にも使える」


「なるほど……」


 メアリーも少し興味を持ったようだった。


「私もやってみようかな」


「ぜひやるといい」


「お主のデータも登録してくれ」


「私の?」


「うむ」


「……私、まだ十五歳ですよ?」


「だから面白いのじゃ」


「何がですか?」


「若い賢者がどの程度の戦闘能力を持っているのか、我々も興味がある」


「……」


 メアリーは少し考える。


「分かりました」


「おお!」


「ただし」


 メアリーが指を立てる。


「私も皆さんのデータを使わせてください」


「もちろんじゃ」


「交換じゃな」


「ほっほっ」


 賢者たちは楽しそうに笑った。


 しばらくヒロバトの話で盛り上がったところで。


「そういえば」


 メアリーが思い出したように口を開いた。


「怠惰の冒険者ギルドには、いろんな人のデータが登録されているんですよね?」


「そうらしいな」


「最近聞いた話なのですが」


 メアリーが少し考える。


「リゼット様と、そのお弟子さんのマドカさん」


「うむ」


「それから、一緒に活動しているアリシアさん」


「ほう」


「最近では、剣聖ムサシという方のデータもあると聞きました」


「…………」


 その瞬間。


 一人の賢者が固まった。


「……なっ!?」


 別の賢者も顔を上げる。


「ムサシじゃと!?」


「はい?」


 メアリーが驚く。


「あのムサシなのか!?」


「知っているのですか?」


「知っているも何も!」


 賢者が身を乗り出す。


「あの悪ガキのことは、よく覚えておる!」


「悪ガキ?」


 メアリーが首を傾げる。


「今では剣聖などと呼ばれておるのか……」


「昔から剣は上手かったがな」


「じゃが、あいつは本当に――」


 賢者が遠い目をする。


「リゼットのパシリじゃろ?」


「…………」


 メアリーが固まった。


「え?」


「リゼットのパシリじゃ」


「剣聖が?」


「うむ」


「……」


 メアリーは困惑した顔で周囲を見る。


「ムサシさんって、あの剣聖ですよね?」


「そうじゃ」


「今では世界でも有名な?」


「そうじゃな」


「その人が……リゼット様のパシリ?」


「昔はそうじゃった」


「……」


 メアリーは頭を抱えた。


「またですか……」


「何がじゃ?」


「また昔のリゼット様の話、変なのが出てきたんですけど!」


「ほっほっ」


 賢者たちは楽しそうに笑った。


「まあ、ムサシの話をするなら、あいつとの話もいろいろあるぞ」


「聞きたいです!」


 メアリーが即座に顔を上げる。


「本当ですか!?」


「うむ」


「では、次の会議では――」


 一人の賢者が笑う。


「昔のムサシと、リゼットの話でもするかの」


「ぜひお願いします!」


 メアリーは嬉しそうに頷いた。


 その一方で。


 賢者たちはまだ知らなかった。


 今回のヒロバト談義も。


 そして、リゼットとムサシの昔話への予告まで。


 **すべてEVのアーカイブに残っていることを。**


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