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落内円は落ちている  作者: 七風


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ダンジョン定番のあれが出た!

## 第十二階層


「……またいるね」


 マドカが前方を見る。


 そこには、大量のゴブリンがいた。


 ただし、これまで見てきたゴブリンとは明らかに違う。


 全身を金属鎧で固め、巨大な盾や槍を装備している。


「武装ゴブリン……」


 ガレスが呟いた。


「現代のダンジョンじゃ、まず見ないな」


「珍しい?」


 マドカが聞く。


「珍しいというより……」


 ガレスが武装ゴブリンの群れを見渡す。


「一体だけでも、普通の冒険者ならかなり苦戦する相手だ。これだけの数となると、厄介だな」


「なるほど」


 マドカが武器に手をかける。


「じゃあ――」


「待って」


 セリナがマドカを止めた。


「ここは私たちに任せて」


「大丈夫?」


「ええ。これくらいなら問題ないわ」


 ガレスも剣を抜いた。


「今までだって一緒に戦ってきただろ。こいつらがどれくらい強いのか、俺たち自身で確かめたい」


「そっか」


 マドカは素直に武器から手を離した。


「じゃあ、頑張って!」


「……なんだろうな」


 ガレスが苦笑する。


「マドカに応援されると、妙に気合いが入るな」


「頑張ってね!」


「おう!」


     ◆


「行くぞ!」


 ガレスが真っ先に踏み込んだ。


 武装ゴブリンの槍が迫る。


 ――ガキィン!


 ガレスの剣と激しくぶつかり合った。


「重いな!」


 そこへセリナの矢が飛ぶ。


「右!」


 ――シュッ!


 矢がゴブリンの肩を捉えた。


「今です!」


 ブリジットが盾を構えて突進する。


 ――ドンッ!


 武装ゴブリンが吹き飛んだ。


「援護するよ~」


 ニコラも後方から銃を構える。


 ――パンッ!


 魔弾が敵の盾を直撃した。


「そこ!」


 ――パンッ! パンッ!


 盾を弾かれたゴブリンへ、ガレスが一気に斬り込む。


「はあっ!」


 ――ザンッ!


 一体が倒れた。


「よし!」


 セリナが次の標的を狙う。


「左から来る!」


「任せろ!」


 ガレスが受け止める。


 ブリジットが横から盾を叩き込み、ニコラが魔弾で牽制する。


 セリナの矢が隙を正確に射抜く。


 連携に無駄がない。


 数では圧倒的に不利。


 それでも。


 Sランク冒険者たちは、確実に武装ゴブリンの群れを削っていった。


「おおー!」


 マドカが嬉しそうに拍手する。


「みんな強い!」


 ガレスが一体を斬り倒しながら、少しだけ得意そうに笑った。


「そうだろう」


「うん!」


 マドカが頷く。


「……でも、思ったより時間かかってるね」


「それは言わなくていい!」


 ニコラが笑う。


「マドカ基準で考えちゃダメだよ~」


「そうなの?」


「そうなの~」


 結局、一行が武装ゴブリンの群れを全滅させるまでには、十分ほどの時間を要した。


「疲れた……」


 ガレスがその場に座り込む。


「数が多すぎる……」


 セリナも息を整える。


「一体一体は倒せても、あの数はさすがに厄介ね」


「でも、ちゃんと倒せたね!」


 マドカが笑う。


「うん」


 セリナも笑った。


「私たちも、まだまだやれるわよ」


「当然だ」


 ガレスが立ち上がる。


「俺たちはSランクなんだからな」


「おお!」


 マドカが嬉しそうに頷いた。


     ◆


## 第十三階層


 次の階層へ進むと、今度は巨大な植物が道を塞いでいた。


「食人花だ!」


 セリナが叫ぶ。


「口がいっぱいある!」


 マドカが興味深そうに眺める。


「……楽しそうね」


「珍しいから!」


 巨大な花が大きく口を開いた。


 無数の触手が伸びてくる。


「危ない!」


 ブリジットがマドカの前に出た。


 盾を構える。


 ――ドンッ!


「くっ……!」


 触手の一撃を受け止める。


「今!」


 ニコラが銃を構えた。


「はいはい~」


 ――パンッ!


 魔弾が触手を撃ち抜く。


「そこ~」


 ――パンッ! パンッ!


 次々と触手を撃ち抜いていく。


「ニコラ、銃上手くなったね!」


「練習したからね~」


「最初は撃つたびに転んでたのに」


「その話は忘れて~」


 ニコラが笑う。


 触手の動きが止まった。


「今です!」


 セリナが弓を引き絞る。


 ――シュッ!


 放たれた矢が、巨大な花の中心を正確に貫いた。


 食人花が大きく揺れる。


 そして。


 ゆっくりと倒れた。


「終わり!」


「やった!」


 マドカが拳を上げる。


「ニコラ、すごかった!」


「えへへ~」


 ニコラが嬉しそうに笑った。


 魔導記録機は、その戦いもしっかりと記録していた。


     ◆


## 第十四階層


 さらに先へ進む。


 ここまで来ると、魔物の数が明らかに減っていた。


「……静かだな」


 ガレスが呟く。


「うん」


 セリナも周囲を警戒する。


 マドカが辺りを見回した。


「魔物がいないね」


「いないんじゃないわ」


 リゼットが静かに答える。


「避けているのよ」


「何を?」


 マドカが首を傾げる。


 リゼットは前方へ視線を向けた。


「私たちを……ではないわね」


「じゃあ?」


「その先にいる何かを」


「……」


 空気が重い。


 それまでとは明らかに違う。


 ブリジットが盾を握り直した。


「……この先ですか」


「ええ」


 ニコラが魔導記録機を確認する。


「記録、続けてるよ~」


「お願い」


 マドカが頷いた。


「こういうところこそ、ちゃんと残しておかないとね」


「任せて~」


     ◆


 しばらく歩くと、巨大な石門が見えてきた。


 門の上には、古い文字が刻まれている。


 リゼットが目を細めた。


「……古代文字ね」


「読める?」


「ええ」


 リゼットが文字を読み取る。


「『ここより先、試練を受ける者のみ進め』……ね」


「試練?」


 マドカが首を傾げる。


「つまり」


 ガレスが剣を抜いた。


「この先に、階層主がいる可能性が高い」


「階層主……」


 マドカの目が輝く。


「ボス?」


「そういうことだ」


「強い?」


「おそらくな」


「やった!」


「……喜ぶのか」


 ガレスが苦笑する。


 マドカは嬉しそうに武器を握った。


「どんなのかな!」


 その瞬間。


 ――ドン。


 地面が揺れた。


「……」


 全員が動きを止める。


 ――ドン。


 もう一度。


 今度は、さっきより大きい。


「近い……」


 ブリジットが呟く。


 石門の向こう。


 何か巨大なものが歩いている。


 ――ズン。


 ――ズン。


 ――ズン。


 そして。


 門の向こうから、低い声が響いた。


「…………人間か」


「喋った!?」


 マドカが驚く。


 リゼットが目を細めた。


「これは……」


 石門が、ゆっくりと開いていく。


 その向こうに立っていたのは――


 巨大な牛頭の魔人。


 二本の角。


 筋肉に覆われた巨体。


 手には、巨大な戦斧。


 その身体から放たれる魔力だけで、周囲の空気が震えている。


「……ミノタウロス」


 リゼットが呟いた。


 ガレスの表情が強張る。


「知っているのか?」


「ええ」


 リゼットが答える。


「ただし――」


 一拍。


「私が知っているものより、ずっと強いわ」


「…………」


 ニコラが無言で魔導記録機を向ける。


「これは……絶対に記録しておこう」


「うん!」


 だが。


 マドカの様子がおかしい。


「……ミノタウロス?」


 じっと相手を見つめている。


 そして。


「ミノタウロス!?」


 突然、声が大きくなった。


「えっ、本物!?」


 マドカが目を輝かせる。


「ゲームに出てくるやつだ!」


「……ゲーム?」


 ガレスが首を傾げる。


「そう! めちゃくちゃ有名!」


 マドカは完全にテンションが上がっていた。


「牛の頭で、めっちゃ大きくて、戦斧持ってて、だいたい強敵なんだよ!」


「…………」


 ミノタウロスが困惑したようにマドカを見る。


「……何を言っている?」


「だってミノタウロスだよ!?」


 マドカが嬉しそうに近づく。


「本当に喋るんだ!」


「当然だ」


「すごい!」


「……」


 ミノタウロスの眉がわずかに動いた。


「お前……私を知っているのか?」


「うん!」


 マドカが元気よく頷く。


「ゲームで何回も戦った!」


「…………」


 ミノタウロスが黙り込む。


「……げぇむ?」


「うん!」


「それは……何だ」


「えーっと……」


 マドカが少し考える。


「遊び!」


「遊び……?」


「そう!」


 満面の笑み。


「でも、あなたは本物だからすごい!」


 マドカが目を輝かせる。


「ねえねえ!」


「何だ」


「あなたが、この階層のボス?」


「そうだ」


「やっぱり!」


 マドカが嬉しそうに拳を握る。


「じゃあ――」


 武器を構える。


「よろしくお願いします!」


 ミノタウロスが、ゆっくりと口元を歪めた。


「……面白い娘だ」


 戦斧を肩に担ぐ。


「小さき戦士よ」


 その瞬間。


 凄まじい殺気が放たれた。


 ガレスたちが一斉に構える。


 マドカだけは。


「わあ……!」


 さらに嬉しそうに笑った。


「本当にゲームみたい!」


 マドカはミノタウロスを見上げる。


「絶対、強いじゃん!」


 その目は完全に輝いていた。


 ニコラはそんなマドカとミノタウロスを、黙って魔導記録機に収めていた。


 やがて。


 一行は石門の向こうへと進む。


 第十五階層へ。


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