リゼット面接
### リゼットVSエジソン
エキドナの応接室。
リゼットの前に、エジソンが座っていた。
その隣にはマドカ。
そして――。
「こんにちは~」
ニコラが眠そうな顔で入ってくる。
「ニコラは……まあ、今日は見学でいいわ」
「うん~」
ニコラはそのままソファに座った。
「それじゃあ、エジソンさん」
「はい!」
「まず確認しておきたいのだけれど、あなたはニコラの助手として働きたいのよね?」
「はい!」
「理由は?」
「ニコラさんと一緒に発明がしたいからです!」
即答だった。
「それだけ?」
「それだけじゃありません!」
エジソンは勢いよく立ち上がる。
「僕は昔からニコラさんを尊敬していました!」
「へぇ~」
ニコラが眠そうに顔を上げる。
「ニコちゃん、人気者だね~」
「そういう言い方やめてよ……」
マドカが苦笑する。
リゼットはエジソンを見る。
「ニコラが非常に優秀な発明家なのは私も知っているわ。けれど、助手になるというなら、それなりの技術が必要になるでしょう」
「もちろんです!」
「では、あなたは何ができるの?」
「それなんですが!」
エジソンは嬉しそうに立ち上がった。
「今日は、実際に作ったものを持ってきました!」
「……実物を?」
「はい!」
エジソンが部屋の隅に置いていた箱を開ける。
「まず、これです!」
取り出したのは、小さな魔導装置だった。
「音楽連動型の魔導映像装置です!」
「……何それ?」
マドカが覗き込む。
「音楽に合わせて、映像や光を動かします!」
エジソンが装置を起動する。
室内に小さな映像が浮かび上がった。
音が鳴る。
すると、映像の中の光が動く。
リズムが強くなると、光も大きくなる。
高い音が入れば、光の粒が上へ跳ねる。
「おお……」
マドカの目が輝く。
「これ、ライブで使えそう!」
「そうなんです!」
エジソンも嬉しそうに頷く。
「DJニコを見ていて思いつきました!」
ニコラが装置を見る。
「へぇ~」
「音楽と映像を連動させれば、ステージそのものをもっと派手にできます!」
「これ、結構いいね~」
「本当ですか!?」
エジソンの顔がさらに明るくなる。
リゼットは装置を観察した。
「実用性もありそうね」
「ありがとうございます!」
「ただ、まだ試作品でしょう?」
「はい。映像の種類はまだ少ないです」
「それでも十分ね」
リゼットは頷いた。
「次は?」
「はい!」
エジソンは二つ目を取り出した。
それは一着の服だった。
「これは、色変化型の衣装です!」
「色変化?」
マドカが首を傾げる。
「魔力を流すと――」
エジソンが服に触れる。
淡い色だった布が、ゆっくり別の色へ変わっていく。
「おお!」
マドカが身を乗り出した。
「色が変わった!」
「どうですか!?」
「すごい!」
マドカが服を見る。
「これ、めっちゃ欲しい!」
「えっ」
エジソンが固まる。
「本当ですか?」
「うん! その日の気分で色を変えられるじゃん!」
「そうなんです!」
エジソンは嬉しそうに説明する。
「服そのものを一瞬で着替えることはまだできません。でも、色を変えるくらいなら、僕でも作れました!」
「へぇ~」
ニコラが服を見る。
「早着替えはまだできないんだ~」
「そこはニコラさんでもまだ完成してないって聞きました!」
「うん~」
「だから僕も、まずできるところから作ってみました!」
「いいんじゃない?」
ニコラはあっさり頷いた。
「色変わるだけでも便利だし~」
「ですよね!」
マドカは服を触りながら嬉しそうにする。
「これ、ライブにも使えるよね」
「もちろんです!」
エジソンが答える。
「曲に合わせて色を変えることもできます!」
「それ絶対いい!」
マドカが笑う。
リゼットも頷いた。
「二つとも、音楽や服という別分野に見えて、どちらも魔道具として成立しているわね」
「はい!」
「では、三つ目は?」
「はい!」
エジソンがさらに箱を開ける。
「これはまだ完成品ではないんですが――」
取り出したのは、小さな楽器だった。
「光るギターです!」
「おお!」
マドカが目を輝かせる。
「ギター?」
「日本の家にあった楽器を参考にして、こちらで作れる形にしてみました!」
エジソンが弦を鳴らす。
音が響く。
すると、楽器の一部が淡く光った。
「わあ!」
マドカが嬉しそうに声を上げる。
「ちゃんと光る!」
「まだ音との連動が不完全なんです」
エジソンが説明する。
「でも、演奏すると光るようにはできました!」
「これ、ライブで使ったら絶対格好いい!」
「でしょう!?」
エジソンも嬉しそうだ。
ニコラがギターを見る。
「これなら、私がDJやってる横で使えるね~」
「はい!」
エジソンが頷く。
「もっと改良すれば、音に合わせて光り方を変えたり、演奏中に魔力を使って光のエフェクトを出したりもできると思います!」
「それ、面白そう」
ニコラが少しだけ目を開く。
リゼットは三つの試作品を見る。
「なるほど……」
少し考えてから、エジソンへ視線を戻す。
「確かに、あなたは自分で魔道具を作れるのね」
「はい!」
「ニコラの発明をただ真似しているわけでもない」
「もちろんです!」
「そして、まだ完成していないものについても、自分で課題を把握している」
「はい!」
エジソンは胸を張った。
「僕はニコラさんほどの天才ではありません。でも、自分にできることを増やしていきたいんです!」
その言葉に、リゼットは少しだけ微笑んだ。
「なるほどね」
そのとき。
応接室の扉が開いた。
「失礼するわ」
入ってきたのはカトリーヌだった。
「カトリーヌさん!」
エジソンが目を見開く。
「……?」
カトリーヌが首を傾げる。
「私のことを知っているの?」
「もちろんです!」
エジソンが立ち上がる。
「元宮廷魔道具師のカトリーヌさんですよね!」
「え、ええ……そうだけど」
「僕、昔からあなたの魔道具を参考にしてました!」
「……そうなの?」
「はい!」
エジソンの目が輝いている。
「宮廷で使われていた魔導具の設計思想がすごく好きで!」
カトリーヌが少し驚いた顔をする。
「ニコラほどではありませんけど、僕にとってはカトリーヌさんも尊敬している魔道具師です!」
「……それは、なんだか照れるわね」
カトリーヌが少し笑った。
「それで?」
エジソンが三つの試作品を見せる。
「これ、僕が作りました!」
「見せてもらっていい?」
「もちろんです!」
カトリーヌが色変化の衣装を手に取る。
「魔力制御は……なるほど」
続いて映像装置。
「これは音の解析をしているのね」
「はい!」
「こっちは?」
「光るギターです!」
「……なるほど」
カトリーヌは一つ一つを確認していく。
「確かに、まだ粗いところはあるけれど――」
エジソンが固唾を飲む。
「発想は面白いわ」
「本当ですか!?」
「ええ」
カトリーヌは頷いた。
「特に、魔道具に別のものを組み合わせる考え方は悪くないわね」
「ありがとうございます!」
エジソンは嬉しそうに頭を下げる。
その様子を見ていたマドカが、ふと思いついたように言った。
「そういえば、エジソンって他にも発明あるんだよね?」
「はい!」
「持ってきた?」
「もちろんです!」
エジソンが箱を開ける。
「これは面白発明なんですが――」
最初に出てきたのは、小型の魔導調理器具だった。
「魔導ミキサーです!」
「……!」
マドカの目が輝く。
「これ、めっちゃ欲しい!」
「えっ!?」
エジソンが驚く。
「本当に?」
「うん!」
マドカがミキサーを手に取る。
「これ、果物とか入れて混ぜるんでしょ?」
「はい!」
「絶対便利じゃん!」
マドカが嬉しそうにする。
「これ家にも欲しい!」
「作れますよ!」
「本当!?」
「はい!」
「じゃあ作って!」
「分かりました!」
リゼットが横から口を挟む。
「……面接中よ、二人とも」
「ごめん」
「すみません!」
ニコラが笑う。
「マドカちゃん、食べ物系には弱いね~」
「だって便利じゃん!」
次にエジソンが取り出したのは、小さな四輪の魔導機械だった。
丸みを帯びた本体。
上には料理を置くための台。
そして――。
「猫……?」
マドカが首を傾げる。
「はい!」
エジソンが胸を張る。
「自動配膳魔導具です!」
小さな機械が動き出す。
トコトコと部屋を進み、テーブルの前で止まる。
「にゃーん」
「…………」
全員が固まった。
「なんで鳴くの?」
マドカが聞く。
「猫型だからです!」
「必要?」
「……趣味です!」
エジソンが即答する。
ニコラが笑う。
「いいじゃん~」
「ニコラさんも!?」
「猫なら鳴いたほうがいいでしょ~」
「ですよね!」
マドカも機械を撫でる。
「かわいい」
「料理を乗せれば、自動で運べます!」
「それも欲しい!」
「分かりました!」
リゼットは額に手を当てた。
「……話がどんどん面接から離れているわね」
カトリーヌは猫型配膳機を見ながら笑っていた。
「でも、こういう発想ができるのは面白いわ」
「ですよね!」
エジソンが嬉しそうに頷く。
「他にもあります!」
「まだあるの?」
リゼットが聞く。
「はい!」
エジソンは箱をさらに開けようとする。
「エジソン」
「はい!」
「今日はそこまでにしましょう」
「……はい」
エジソンが少し残念そうに箱を閉じる。
リゼットは改めて三人を見る。
ニコラ。
カトリーヌ。
そしてエジソン。
エキドナの魔道具・発明関係は、以前から人手が足りていなかった。
ニコラはあまりにも優秀すぎる。
カトリーヌにもできることは多いが、一人ですべてを抱えられるわけではない。
そこへ。
エジソンがいる。
ニコラほどではない。
けれど、自分で考え、自分で作り、そして失敗した部分まで把握している。
何より、本人が学ぶことを楽しんでいる。
「エジソンさん」
「はい!」
リゼットが静かに告げる。
「採用しましょう」
「…………」
一瞬。
エジソンが固まった。
「……本当ですか?」
「ええ」
「やったぁぁぁぁぁぁ!!」
エジソンが両手を上げる。
「ありがとうございます!」
「ただし」
リゼットが続ける。
「ニコラの助手になるだけではありません」
「え?」
「エキドナの魔道具開発にも参加してもらいます」
「もちろんです!」
即答だった。
「むしろお願いします!」
「そう」
リゼットが微笑む。
「それなら、正式な契約については後で説明するわ」
「はい!」
エジソンは嬉しそうに頷いた。
そして。
「……あの」
「何?」
「ニコラさんと一緒に働けて、カトリーヌさんにも色々教えてもらえるんですよね?」
「ええ」
「最高じゃないですか!」
エジソンは完全に浮かれていた。
ニコラがソファから立ち上がる。
「じゃあ、エジソン~」
「はい!」
「まずはあの日本の家、見に行こっか~」
「行きます!」
マドカも立ち上がる。
「私も行く!」
「マドカちゃんも?」
「だって、あの家面白いものいっぱいあるし」
カトリーヌが笑う。
「なら、私も少し見に行こうかしら」
「えっ」
エジソンの目がさらに輝く。
「カトリーヌさんも来てくれるんですか!?」
「ええ」
「やった!」
ニコラが眠そうに欠伸をする。
「元気だね~」
「だって、今日から僕は――」
エジソンが胸を張る。
「エキドナの魔道具師ですから!」
リゼットはそんなエジソンを見て、少し笑った。
人手不足だったエキドナの発明部門に。
新しい魔道具師が一人、加わった瞬間だった。




