1~5部構成
### 劇の構成会議 二
数日後。
再び、エキドナの会議室にメンバーが集まっていた。
前回の会議では、劇に出演するメンバーと、それぞれの役について大まかな話をした。
今日は、その続きを決める日だった。
マドカはテーブルの上に置かれた資料を眺める。
「じゃあ、今日は劇全体の流れを話すね」
「前回言っていた、五部構成の話ね」
リゼットが確認する。
「うん」
マドカが頷いた。
「まず、一つ言っておきたいことがあるんだけど」
「何?」
「今回の劇、第1部に全部を詰め込むのはやめることにした」
「……まあ、それはそうでしょうね」
リゼットが苦笑する。
「前回の段階でも、かなり無理があったもの」
「うん。だから、第1部は第1部でちゃんと時間を使う」
マドカは資料をめくる。
「それに――」
少しだけ顔を上げる。
「エキドナのメンバーにも、結構な時間を使ってもらうことにした」
「私たちにも?」
ガブリエルが目を丸くする。
「うん」
「それは嬉しいですわ!」
「せっかくみんな出るんだから、ちょっと顔を出して終わりっていうのはもったいないし」
マドカはそう言って、周囲を見る。
「それぞれの仕事とか、普段やってることも劇の中に入れていく」
「なるほど」
ニコラが頷く。
「じゃあ、私も魔道具屋をやりながらラップするの~?」
「そう」
「いいね~」
ニコラが少しだけ嬉しそうに笑った。
「それなら、台詞を覚える量もそんなに増えなさそう」
「ニコラの場合、ラップのほうが覚えるの大変じゃない?」
ナナリーが笑う。
「大丈夫~。適当にやるから~」
「適当なの!?」
「劇なんだから、たぶんそれでいいでしょ~」
会議室に笑い声が広がる。
「まあ、そんな感じ」
マドカも笑う。
「じゃあ、全体の話をするね」
マドカは資料を一枚、テーブルの中央へ置いた。
「全部細かく話すわけじゃないよ。あくまで大まかな流れだけ」
「それでいいと思うわ」
リゼットが頷く。
「では、聞かせてもらいましょう」
「うん」
マドカが頷いた。
「まず第1部」
全員の視線が集まる。
「第1部は、ゴールの街が舞台」
「ゴールか」
ガイルが呟く。
「ここでは、街そのものを見せたいと思ってる」
マドカが続ける。
「トライアングルの三人が冒険者として活動してたり、ガブちゃんたちのパーティーがいたり、ギルドの人たちがいたり」
「私も出ますわね」
ガブリエルが嬉しそうに言う。
「もちろん」
マドカが頷く。
「街でいろんな人が生活していて、それぞれに仕事があって、冒険者がいて――そういうゴールの日常を最初に見せる」
「なるほど」
リゼットが頷く。
「それなら、私たちの出番も自然に作れそうね」
「うん」
マドカはさらに続ける。
「それで、第1部の最後のほうで、マドカが自分の故郷のことを知る」
「……」
クリスティーナが少しだけマドカを見る。
「そこから、故郷の危機に関わる話につながる」
「そして、戻ってくるのね」
リゼットが確認する。
「うん」
マドカが頷く。
「でも、ここも細かいところはまだ秘密」
「まあ」
ガブリエルが笑う。
「自分で出演する劇なのに、秘密なんですの?」
「だって、実際に劇を見る人には、そのほうが面白いでしょ?」
「それもそうですわね」
ガブリエルは納得した。
「第2部は?」
ナナリーが聞く。
「第2部は、和の国」
「おお」
チヨが小さく声を漏らした。
「マドカたちが和の国へ行く話になる」
マドカはチヨとナツメを見る。
「二人も結構出番あると思う」
「……そうだね」
チヨが少し考えてから頷く。
「故郷だから」
「うん」
ナツメも頷く。
「それに、和の国の話なら私たちも出ないとね」
「そういうこと」
マドカが笑う。
「ここでは、和の国の雰囲気とか、そこで起きる出来事を描く」
「私も出るんですわね?」
クリスティーナが聞く。
「うん」
「1~3部は、たまに出番がある予定」
「まあ」
クリスティーナが微笑む。
「それなら、お母さん役としてちょうどよさそうですわね」
「そうそう」
マドカが頷く。
「無理にずっと出てもらう必要はないし、出てくるところではちゃんと出てもらう」
「分かりましたわ」
クリスティーナは楽しそうに頷いた。
「第3部は?」
アリシアが聞く。
「第3部は、またゴール」
マドカが答える。
「街での生活とか、トライアングルのライブとか」
「ライブ!」
ナナリーが目を輝かせる。
「出番きた!」
「うん」
「じゃあ、歌えるね」
「もちろん」
アリシアも嬉しそうに笑う。
「それから――」
マドカは少し考える。
「家族との話も入る」
「……」
クリスティーナが静かに聞いている。
「お母さんも、ここは出番あるからね」
「ええ」
クリスティーナは微笑んだ。
「それなら、マドカちゃんと一緒に出る場面もありそうですわね」
「うん」
「楽しみですわ」
マドカも少し笑った。
「第4部は、かなり分かりやすい」
「何かしら?」
リゼットが聞く。
「トライアングルとガブちゃんたちの対決」
「……」
ガブリエルが固まった。
「わたくしたち、やっぱり戦いますの?」
「うん」
「……」
「コロシアムで」
「まあ!」
ガブリエルの目が輝く。
「それは楽しそうですわ!」
「やる気満々じゃん」
マドカが笑う。
「だって、トライアングルには負けたくありませんもの!」
「こっちも負けないよ」
マドカが笑う。
「ほら、もう始まってる」
リゼットが呆れたように言う。
「本番まで喧嘩しないでね」
「はい!」
「分かってるよ」
二人がほぼ同時に答えた。
「そして第5部」
マドカが最後の資料を見る。
「第5部は、ダンジョンの異変」
「前に話していたやつね」
リゼットが頷く。
「うん」
マドカも頷く。
「そこから、スタンピード」
「ああ」
ガイルが頷く。
「最後はそこに繋げるわけか」
「そう」
マドカが頷いた。
「前に一話だけでやろうとしてたときにも出てた話だし、最後はやっぱりこれかなって」
「それなら分かりやすいな」
ガイルが笑う。
「今まで出てきた連中が、最後にみんな街を守るわけだ」
「うん」
マドカが頷く。
「そこはちゃんと大きくやりたい」
しばらく、会議室が静かになる。
五つの部。
ゴールの日常。
和の国。
再びゴール。
コロシアムでの対決。
そして――スタンピード。
それぞれ違った話になる。
「……こうして聞くと、結構長い劇になりそうね」
リゼットが言う。
「うん」
マドカが頷く。
「だから、無理に一つにまとめない」
「それがいいですわね」
クリスティーナも頷く。
「それぞれの部をきちんと描いたほうが、皆さんの出番も作れますもの」
「そう」
マドカは笑った。
「じゃあ、次は第1部をちゃんと作っていこう」
マドカが資料をまとめる。
「まずはゴールの街」
そして、全員を見る。
「ここから始めよう」
会議室に、少しだけ期待した空気が広がった。
劇はまだ始まっていない。
けれど――
その最初の一歩は、もう始まっていた。




