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落内円は落ちている  作者: 七風


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396/562

有料配信 ニコラ

「というわけで~」


 ニコラがマイクを持つ。


 目の前にはDJ機材。


 そして今日の配信は――有料配信。


『銀貨二枚払ったぞ』


『ラップって何?』


『なんか音楽やるの?』


『ニコラ様がまた変なこと始めた』


 コメント欄には、まだ戸惑いが多い。


 この世界では、ラップというもの自体がほとんど知られていない。


 そんな中。


「今日は~、お題をもらって~」


 ニコラが軽くビートを流す。


「それについて、ラップするよ~」


『ラップって説明しないんだ』


『分からないけど見てみる』


『銀貨二枚の価値があるのか?』


「じゃあ最初のお題~」


 ニコラがコメントを見る。


「『冒険者』だって~」


 ビートが少し強くなる。


 ニコラはマイクを口元へ持っていった。


「冒険者~ 剣持って参上~

 魔物を倒して 今日も退場~

 依頼を受けて 報酬をゲット~

 明日の酒代 もうすぐセット~


 強さを語って 自信は満点~

 だけど仲間が 実は本命~

 一人じゃ無理でも みんなで最強~

 それでも最後は 自分が最強~」


「…………」


『なんか始まった』


『これがラップ?』


『よく分からんけどリズムはある』


『冒険者への風評被害』


「はい、次~」


「早いな!」


 コメントが流れる。


「『騎士』~」


 ニコラはすぐにビートへ乗る。


「騎士~ 鎧がピカピカ~

 歩けばカチャカチャ 音がガチャガチャ~

 剣を掲げて 誓いは立派~

 だけど重すぎ 動きはゆっくり~


 守るぞ民を 正義を貫く~

 魔物が来たら 隊列を組む~

 号令かけて さあ突撃~

 ……その前に誰か 道を開けて~」


『最後ひどいw』


『騎士かわいそう』


『でもちょっと分かってきた』


『これ、普通に口喧嘩を音楽にしてる?』


 ニコラが満足そうに頷く。


「こんな感じ~」


 そのとき。


 コメント欄に、一つの名前が表示された。


『ジャスティス:それラップかぁ?』


「……」


 ニコラの動きが止まった。


『来た』


『勇者だ』


『ジャスティス参戦w』


『言っちゃったw』


 続けてコメントが流れる。


『ジャスティス:なんか悪口をリズムに乗せてるだけに聞こえるぞ』


『ジャスティス:韻もそんなに踏んでないし』


『ジャスティス:俺でもできそうだな』


 ニコラはしばらくコメントを見ていた。


「…………」


「へ~?」


『あ』


『ニコラ様の「へ~?」』


『これはまずい』


 ニコラは少し首を傾げる。


「そうなんだ~?」


 コメント欄には、ジャスティスの返事。


『ジャスティス:いや、だってそうだろ』


『ジャスティス:ラップってもっとこう、ちゃんと韻踏んだりするもんじゃないのか?』


 ニコラはマイクを持ったまま、少しだけ笑った。


「…………」


「で~?」


 コメント欄が一瞬、止まった。


『…………』


『来た』


『で~?』


『これ知ってるぞ』


『ニコラ様がちょっとイラッとした時のやつだ』


 ニコラはビートを止めない。


「じゃあ~」


 口元だけ笑う。


「ジャスティスがやってみれば~?」


 コメント欄が一気に流れた。


『おおおおお』


『勇者逃げられないぞ』


『やってみろジャスティス』


『自分で言ったんだからやれw』


 しばらくして。


『ジャスティス:……いいだろ』


『ジャスティス:元日本人を舐めるなよ』


「ふ~ん~」


 ニコラが笑う。


「じゃあ、聞かせてもらおうかな~」


 ジャスティスから、少し長いコメントが送られてきた。


『ジャスティス:

 俺が勇者だ 剣を持ってる

 魔物が出たら 俺が倒してる

 ラップってやつも 知識はあるぜ

 ニコラのやつより 俺のほうがやれるぜ』


 マドカが横で画面を見る。


「……」


「どう?」


「いや……」


 マドカが少し考える。


「普通にラップっぽくしようとしてる」


「でしょ~?」


 ニコラが笑う。


「でも~」


 ビートを少しだけ変える。


「まだまだだね~」


 ニコラがマイクを持ち直した。


「勇者が登場 自信は上々~

 言葉は豪快 気分は最強~

 『俺ならできる』と コメント参上~

 でもまだ一回も マイクを握ってないじゃ~ん?」


『www』


『刺したw』


『コメント欄でラップしてる勇者にそれ言うのかw』


 ジャスティスから即座に返事が来る。


『ジャスティス:うるさい!』


「ほら~」


 ニコラが笑う。


「ラップっぽく返してみて~?」


『ジャスティス:……』


 少し間が空く。


『ジャスティス:分かった』


 そして。


『ジャスティス:

 マイクはないけど 言葉ならある

 お前が煽れば こっちも返す

 ニコラが強い? それは認める

 でもラップなら 俺も負けねぇ』


「…………」


 ニコラが少し目を細める。


 今度は笑っていない。


「へ~」


 そして――


「……ちょっと面白くなってきた~」


 マドカが隣で笑う。


「ジャスティス、意外とできるじゃん」


『ジャスティス:だろ?』


 ニコラはビートを上げた。


「じゃあ~」


 楽しそうに笑う。


「次はちゃんと、ラップで勝負しよっか~?」


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