新番組第2回
### エキドナ情報塔・新番組 第2回
エキドナ情報塔。
前回から始まった新番組は、思った以上の反響を得ていた。
特に視聴者の間で話題になったのが――ニコラ。
『あの眼鏡の子もっと出して』
『眠そうなのに回答だけ怖いw』
『ニコラを回答者にしてくれ』
『次回ニコラ参加希望』
そんな声が大量に届いた。
そして二回目の放送。
「それでは本日から、ニコラさんにも回答者として参加していただきます!」
「うん~」
ニコラが手を上げる。
「よろしく~」
「よろしくお願いします!」
司会者が笑顔で頭を下げる。
ニコラは眠そうに頷いた。
「うん~」
マドカが隣から声をかける。
「ニコラ、今日は普通に答えてね」
「普通に?」
「うん」
「分かった~」
ニコラは素直に頷いた。
コメント欄が流れる。
『普通に答えるらしい』
『絶対信用できないw』
『本人は本当に普通のつもりなんだよな』
司会者が最初のお題を出す。
「では第一問!」
板に文字が書かれる。
――『こんなデートは嫌だ』
「これは難しいですね」
出演者たちが考える。
「待ち合わせに三時間遅れてくる人!」
「食事中ずっと自分の話しかしない人!」
「何を聞いても『どっちでもいい』って言う人!」
「なるほど!」
会場から笑いが起こる。
「では、ニコラさん!」
「ん~」
ニコラは少し考えた。
「……顔を見て話してくれない人~」
「なるほど!」
「ずっと別のところ見ながら話すの~」
「それは嫌ですね」
「うん~」
ニコラは頷く。
「でも、それならまだいいかな~」
「え?」
「こっちを見てるのに、話を聞いてない人のほうが嫌~」
会場が少しざわつく。
「……どういうことですか?」
「ん~?」
ニコラは首を傾げる。
「相手の顔はちゃんと見てるんだけど、自分が次に何を言うかしか考えてない人~」
「…………」
「いるよね~」
「いますね……」
「そういう人って、こっちが何話したか全然覚えてないんだよ~」
「……」
「だったら、最初から一人で喋ってればいいのにね~」
会場が爆笑する。
『うわw』
『刺さったwww』
『これ絶対誰かいるだろ』
『ニコラ本人は何も悪いこと言ってない顔してるw』
『「一人で喋ってればいいのに」強すぎる』
マドカがニコラを見る。
「……ニコラ」
「ん~?」
「それ、結構怖いよ」
「そう?」
「うん」
「でも本当のことじゃん~」
ニコラは不思議そうに首を傾げた。
「次のお題です!」
司会者が少し急ぐように板を書く。
――『こんな上司は嫌だ』
「これは皆さん経験があるかもしれませんね!」
一人目。
「失敗するとすぐ怒る上司!」
二人目。
「自分の仕事を部下に押しつける上司!」
三人目。
「部下の手柄を自分のものにする上司!」
「では、ニコラさん!」
「ん~……」
ニコラは出演者を見る。
「部下に『自分で考えろ』って言う人~」
「なるほど」
「でも、自分で考えて行動したら怒るの~」
「……」
「じゃあどうすればいいのか分からないよね~」
司会者が頷く。
「確かに、それは困りますね」
「うん~」
ニコラは続ける。
「あと~」
「まだありますか?」
「自分は何も説明してないのに、『そんなことも分からないの?』って言う人~」
「…………」
会場から、
「うわぁ……」
という声が漏れる。
『強い』
『今日のニコラ容赦ないな』
『でも本人は普通に説明してるだけw』
『無自覚なのが一番怖い』
ニコラはそんな反応を見て首を傾げる。
「何~?」
「いや……」
司会者が苦笑する。
「ニコラさん、結構厳しいですね」
「そうかな~?」
「はい」
「だって~」
ニコラは頬杖をつく。
「ちゃんと説明してくれたほうが、仕事も早く終わるじゃん~」
「……正論です」
会場から笑いが起こる。
「では次!」
司会者が板を変える。
――『友達にしたくない人』
「これも難しいですね!」
出演者が答えていく。
「すぐ人の秘密を話す人!」
「約束を守らない人!」
「何でも自慢する人!」
そしてニコラ。
「……何でも勝ち負けにする人~」
「勝ち負け?」
「うん~」
ニコラは説明する。
「例えば、こっちが『この料理おいしいね~』って言ったら、『俺が作ったほうがうまい』って言う人~」
「分かる!」
「『この服かわいいね』って言ったら、『俺のほうがセンスいい』って言うの~」
出演者たちが頷く。
「それは嫌ですね」
「うん~」
ニコラは笑う。
「別に勝たなくてもいいのにね~」
「……」
「友達なんだから、一緒に『おいしいね』って言えばいいじゃん~」
会場から拍手が起こった。
「おお……!」
ニコラは拍手を聞いて、少し驚く。
「……なんで拍手?」
「いいこと言いましたよ!」
「そう?」
「はい!」
「じゃあ、もっと普通のこと言えばいいんだね~」
「そういう問題ではないです!」
会場がまた笑う。
そして最後のお題。
「本日の最後はこちら!」
板に大きく文字が書かれる。
――『エキドナで一番○○な人は?』
「○○は自由です!」
出演者たちが答えていく。
「一番優しい人!」
「一番強い人!」
「一番頼れる人!」
そしてニコラの番。
「ニコラさんは?」
「ん~……」
ニコラは少し考えた。
「一番、自分の話が長い人~」
会場がざわつく。
「それは……誰でしょう?」
「ん~?」
ニコラは周囲を見る。
「結構いるよ~」
「複数!?」
『エキドナ内部事情w』
『ニコラ、誰か一人に絞ってw』
『絶対本人たちも聞いてるだろ』
ニコラは少し考える。
「でも、一番長い人なら――」
そこでニコラは、ある人物のほうを見る。
「……あ」
「え?」
「やっぱり言わない~」
「なぜです!?」
「本人が可哀想だから~」
「じゃあ最初から言わないでください!」
会場が爆笑する。
ニコラは楽しそうに笑った。
「でも、その人~」
「はい」
「話が長いだけならいいんだけどね~」
「……まだあるんですか?」
「話の途中で、自分が何を話してたか分からなくなるんだよ~」
「ぶっ!」
出演者が吹き出す。
『誰だよwww』
『これは聞きたい』
『ニコラにしか分からない内部情報』
『本人絶対見てるぞw』
ニコラは少し考えてから、
「でも、そういうところも面白いけどね~」
と、あっさり付け加えた。
マドカが笑う。
「最後にフォローした」
「うん~」
「優しいじゃん」
「だって悪い人じゃないし~」
その言葉に、会場が少し和む。
――と思った瞬間。
ニコラが続けた。
「ただ、話はもうちょっと短くしてほしいかな~」
「結局刺すんだ!」
大爆笑。
コメント欄も一気に流れる。
『最後まで刺すw』
『フォローしてから刺すのやめろw』
『ニコラ本人は本当に悪気ないんだろうな』
『これもう才能だろ』
『ニコラに煽られたい』
『分かる』
『俺も煽られたい』
『次回、ニコラに煽られる企画やってくれ』
ニコラはコメント欄を眺めていた。
「……ん?」
一つのコメントを指差す。
「これ~」
「何?」
マドカが画面を見る。
『ニコラに煽られたい』
「……」
二人でコメントを見る。
「……変な人いるね~」
「そこ!?」
「だって、自分から煽られたいって~」
ニコラは少し笑った。
「……面白そうじゃん~」
マドカが嫌な予感のする顔になる。
「ニコラ?」
「次、それやってみようよ~」
ニコラはいつもの眠そうな笑顔のままだった。
「どこまで言っても怒られないのか、試してみたい~」
コメント欄が爆発した。
『やってくれ!』
『次回決定!』
『ニコラに煽られたい選手権!』
『絶対見る』
『参加者募集してくれ!』
司会者も笑いながら頭を抱える。
「……次回の企画候補ということで!」
「え~」
ニコラが少し不満そうにする。
「もうやればいいのに~」
「まだ二回目ですよ!?」
「そうだっけ~?」
「そうです!」
こうして第2回放送は終了した。
そしてこの日から。
エキドナ情報塔には、一つの問い合わせが急増することになる。
『ニコラに煽られたい』
――本人がその気になったことで、次回から新しい企画が始まることになった。




