女性向け商品開発
体験入学を終え、エキドナへ戻ってきたマドカ。
その数日後。
エキドナの一室に、女性向け商品の企画をするためのメンバーが集まっていた。
マドカ、ガブちゃん、ニコラ、カトリーヌ、グレタ、ヒナタ。
そしてクリスティーナ。
さらに、和の国からチヨとナツメも参加している。
全体の纏め役として、リゼットも席についていた。
「うんうん。今日集まってもらったのはね」
マドカが集まったメンバーを見回す。
「私が学園に体験入学に行ったときに、女性向けの商品ってないのかって、結構詳しく聞かれたからなんだよね」
「そうですわねー」
ガブちゃんも頷く。
「私も配信をしていると、エキドナでは令嬢向けの商品はないのかって、要望を出されることがありますわ」
「やっぱり?」
「ええ。特にアクセサリーとか、香水とか、髪に関するものとか。エキドナの商品自体に興味を持ってくださる方は多いですもの」
「なるほど」
マドカが頷く。
「じゃあ、実際に何が欲しいのか調べてみようってこと?」
「ええそうね。」
リゼットが頷いた。
「ただ商品を作るだけではなく、実際に社交界でどのようなものが好まれているのかを確認したほうがいいわね。」
「それで、お母さんにも来てもらったんだよね」
「もちろんですわ」
クリスティーナが微笑む。
「社交界の流行についてでしたら、わたくしにも多少は分かりますから」
「多少?」
マドカが首を傾げる。
「お母さん、かなり詳しいんじゃないの?」
「ふふ。マドカちゃんが思っているよりは詳しいと思いますわ」
「だよね」
マドカは納得したように頷いた。
「だったら、実際に商品を作って、それをあっちこっちで披露してみるのがいいと思う」
「披露する~?」
ニコラが興味深そうに聞く。
「うん。社交界で実際に使ってもらって、どれが人気なのか見てみるの」
「それなら、配信で紹介するだけより分かりやすいですわね」
ガブちゃんも頷く。
「実際にお茶会や夜会で使っていただけば、周りの反応も見られますもの」
「香水なら、実際につけている人を見てもらったほうがいいですね」
ヒナタが続ける。
「髪に関するものも、使った状態を見てもらったほうが分かりやすいと思います」
「アクセサリーも同じだな。」
グレタが自分の考えを口にする。
「商品だけを見せるより、実際に身につけた姿を見てもらったほうが、イメージしやすいだろうしよ。」
「服も実際に着たほうがいいよね」
カトリーヌも頷く。
「和の国に似せてはみるけどなんちゃって浴衣みたいなものなら、普段着としてどう見えるかも確認したいし」
「和の国の流行なら、私たちも少しは話せると思う」
ナツメが口を挟む。
「そうだね……」
チヨも少し考えてから頷いた。
「和の国でも、女性が身につけるものには流行があるから」
「それなら、二人にも色々聞きたいね」
マドカがチヨとナツメを見る。
「うん」
ナツメが頷いた。
「それと、一つだけ先に言っておいたほうがいいことがあります」
「何?」
「今回のお店って、高級店にするんですよね?」
「うん。その予定だよ」
「だったら、和の国の最高級の生地は、普通には使えません」
ナツメの言葉に、マドカが首を傾げる。
「エキドナなら買えないの?」
「買えないというより、扱いに条件があります。特にあちらで最高級とされる生地は、誰でも自由に仕入れていいものではありませんから」
「なるほど」
マドカは少し考える。
「でも、普通の生地と最高級の生地って、そんなに大きな違いがあるの?」
「もちろん品質には違いがあります。ただ……」
ナツメは少し考えてから続ける。
「実際に着て見比べなければ、分からない程度の差もあります」
「それなら、ギリギリ高級生地に近いくらいの生地を使えばいいんじゃない?」
「……うん」
ナツメも頷いた。
「それなら和の国でも問題ないと思います」
「じゃあ、それでいいね」
マドカはあっさり頷いた。
「最高級じゃなくても、ちゃんといいものなら十分でしょ」
「そうですね」
チヨも頷く。
「見た目だけなら、かなり近いものもあると思う」
「なら、まずはそれで普通に商品として売り出せばいいんじゃない?」
マドカが言う。
「ええ。それが自然でしょうね」
リゼットも頷いた。
「最初から特殊な扱いにする必要はないと思うわ」
「うん。普通に買ってもらって、それから――」
マドカが少し考える。
「もし『もっといい生地で作ってほしい』って相談が来たら?」
「その時は、相手次第でしょうね」
クリスティーナが答えた。
「わたくしが個人的にお付き合いのある方でしたら、贈り物として用意することはできるかもしれませんわ」
「ああ、なるほど」
マドカが頷く。
「商品として売るんじゃなくて、お母さんからの個人的な贈り物にするんだ」
「ええ。そのほうが話も簡単ですもの」
「それなら、気に入った人がもっといいものを欲しくなった時にも対応できるね」
「ただし、誰にでもというわけにはいきませんわ」
クリスティーナが釘を刺す。
「わたくしが個人的に信頼している方や、お付き合いのある方に限ります」
「うん。それでいいと思う」
マドカは頷いた。
「まずは普通に売ってみる。それで本当に欲しいって人が出てきたら、その時に考える」
「そういう形なら、無理もありませんね」
ナツメも納得したように頷いた。
「和の国側としても、そのほうが分かりやすいと思います」
「じゃあ、生地についてはそれで決まりね」
マドカが笑った。
「普通の商品は普通に作る。特別なものは、必要になった時に相談する」
「それなら、次は具体的な商品ですわね」
リゼットが話を戻す。
「今のところ、考えているものはありますか?」
「あるよ」
マドカが頷く。
「まずは、こういうの」
マドカが自分の身につけているアクセサリーに触れる。
「私とお母さんみたいな、ペアのアクセサリー」
「ペアアクセサリーか?」
グレタが興味を示す。
「うん。完全に同じじゃなくてもいいんだよ。娘とお母さんでデザインを合わせたり、姉妹で同じモチーフにしたり」
「なるほど」
グレタが頷く。
「家族でデザインを揃えるってことだな」
「そう。色だけ合わせるとか、同じ模様を少しだけ入れるとか。特注でそういうのを受け付けてもいいと思う」
「それなら、普段から身につけやすいものにもできますね」
ヒナタが言う。
「お母様と娘さんだけではなく、姉妹や家族でも楽しめそうです」
「うん」
マドカが頷く。
「そういうの、社交界なら結構需要あると思うんだよね」
「それはわたくしも賛成ですわ」
クリスティーナが微笑む。
「家族で同じ意匠を持つというのは、贈り物としても喜ばれるでしょうし、親しい方への特別な品としても使えますもの」
「じゃあ、アクセサリーはそれを中心に考えよう」
リゼットが頷いた。
「ほかには?」
「私は髪関係かな~」
ニコラが手を上げる。
「髪色を変えたり、ヘアアレンジを楽しめるもの」
「髪色?」
「うん。普段はできない髪色にしたい人っているでしょ~?」
ニコラは楽しそうに続ける。
「ウィッグとかヘアカラーとか。髪型そのものを変えられるようにしてもいいし」
「それなら、社交界でもかなり目を引きそうですね」
ガブちゃんが言う。
「普段とは違う髪型でお茶会に参加するだけでも、話題になりそうですわ」
「あと、髪が少ない人にも対応できるよ~」
「そこまで対応するの?」
マドカが聞く。
「するする~。せっかくなら、髪の量に関係なく楽しめるほうがいいでしょ~?」
「確かに」
マドカは素直に頷いた。
「じゃあ、それも商品に入れよう」
「うん~」
ニコラが満足そうに頷いた。
「香水は私ですね」
ヒナタが続ける。
「香りも一種類だけではなく、普段使い用や、お茶会、夜会向けなど、いくつか分けて考えたほうがいいと思います」
「それなら、実際の社交の場で試してみる意味もありそうですわね」
クリスティーナが頷く。
「香りは、その場の雰囲気によって好まれるものも変わりますから」
「服は私が考えるわ」
カトリーヌが言う。
「なんちゃって浴衣みたいなものなら、普段着として使えるし。和の国っぽさを残しながら、こっちで普通に着られる形にしてみる」
「和の国のものをそのまま持ってくるんじゃなくて、こちら向けにするんですね」
ナツメが頷く。
「そのほうが、こちらの人にも使いやすいと思います」
「うん。それも実際に着てもらってみよう」
マドカが頷く。
「アクセサリー、香水、髪、服。結構いろいろあるね」
「エキドナなら、それぞれ専門にできる人がいるのが強みですわね」
ガブちゃんが笑う。
「しかも、モデルもいますもの」
「そうだね!」
マドカも笑った。
「エキドナにはモデルがいっぱいだもんね!」
リゼットが全員の話を整理するように頷く。
「では、まずは試作品をいくつか用意して、それを実際の社交の場で披露する。そのうえで反応を集める、という流れでいいわね。実際に配信で着けて反応を見るのも流行を知る事が出来るわ。」
「うん。それがいいと思う。お母さんには、どこで披露するのがいいかも教えてもらいたいんだよね」
「ええ。でしたら、いくつか候補を考えておきましょう」
クリスティーナが微笑む。
「せっかくですから、今の社交界で実際にどのようなものが好まれるのか、皆さんにも見ていただきましょう」
「それなら、和の国の流行も一緒に見てもらえるといいね」
マドカがチヨとナツメを見る。
「うん」
ナツメが頷く。
「私たちも、実際に身につけてみます」
「……そうだね」
チヨも少し間を置いて頷いた。
「和の国のものが、こちらでどう見えるのかも分かると思う」
「じゃあ決まりだね」
リゼットが頷く。
「では、商品開発と市場調査を同時に進めましょう」




