ナナリー配信
「みんなー! 今日も配信始めるよー!」
ナナリーの元気な声とともに、配信が始まった。
『待ってた!』
『ナナリーきたー!』
『今日もかわいい』
「ありがとー!」
ナナリーは画面に流れるコメントを眺めながら、いつものように笑う。
今日は歌を中心にした配信。
何曲か歌ったあと、軽く雑談を挟む。
「そういえばさ、この前の和の国の配信、見てくれた人いる?」
『見た』
『めっちゃ面白かった』
『料理回よかった』
「だよねー。あっちの料理、私も結構好きかも」
コメントが次々と流れていく。
その中に、いつものコメントがあった。
『和の国の話は興味深いのじゃ』
ナナリーの目が止まる。
「ん?」
少し前にも見た気がする。
和の国の配信になると、妙に食いついてくるコメント。
「……あれ?」
ナナリーが画面を覗き込む。
「のじゃの人って、もしかして和の国の出身なんですか?」
何気なく投げかけた一言だった。
コメント欄が少しだけざわつく。
『のじゃの人w』
『確かにいつもいる』
『和の国詳しいもんね』
『本人に聞いたw』
しばらくして、返事が流れた。
『ふ……まぁの』
「おお?」
ナナリーが少し身を乗り出す。
続いて、もう一つ。
『長い……随分とな……』
「……?」
ナナリーは首を傾げた。
「長い?」
『何が?』
『和の国の歴史?』
『意味深w』
しかし、その後は何も返ってこない。
ナナリーは少し待ってみたが、いつものようにコメントが流れていくだけだった。
「……まあ、いっか」
深く考えず、ナナリーは話を戻す。
「じゃあ次の曲いこうかな!」
『きたー!』
『歌枠助かる』
『待ってました』
コメント欄がまた一気に賑やかになる。
その中に、さっきの「のじゃの人」のコメントはもうなかった。
ナナリーも、それ以上気にすることはなかった。
ただ。
それからしばらくの間、和の国の話題が出ても――
「のじゃの人」は、何も言わなかった。




