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落内円は落ちている  作者: 七風


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ガブちゃん配信 ゲスト勇者

「さて、今日は特別ゲストを呼んでいますわ!」


ガブリエルがカメラに向かって笑う。


「今回のゲストは――勇者ジャスティス様ですわ!」


「よろしく頼む!」


隣に座ったジャスティスが胸を張る。


『勇者きた!』

『質問いっぱいあるぞ!』

『本人に聞きたいこと多すぎる』

『マドカの話してくれ』


「どうやら皆さん、かなり質問があるようですわね」


「おお! 何でも聞いてくれ!」


「では、さっそく参りますわ」


ガブリエルがコメント欄を見る。


「『勇者様は、女性の好みはありますか?』」


「…………」


ジャスティスが黙った。


『来たw』

『勇者、答えろ』

『これは重要』

『ガブちゃんもっとやれ』


「……そういう質問もあるのか」


「人気者ですわね」


「いや、まあ……」


ジャスティスは腕を組む。


「俺は別に、強いとか弱いとかで女性を見るわけじゃないぞ?」


『誰も聞いてないw』

『そこからなのか』

『なんか怪しいぞ』


「普通に一緒にいて落ち着く人がいいと思う」


「ほう」


「それと……料理が上手い人はいいな」


『普通だ』

『勇者、普通だ』

『エキドナ飯に釣られてるだけでは?』


「まあ、俺は今のところ恋愛より勇者としての活動を優先したい!」


「まあまあ」


ガブリエルが楽しそうに笑う。


「では次ですわ」


「『勇者様が今までで一番尊敬した人物は誰ですか?』」


「それなら決まってる!」


ジャスティスが即答した。


「剣聖ムサシだ!」


『おお』

『これは納得』

『一回ボコられてる人』

『負けた相手を尊敬できるの偉い』


「俺は冒険者ギルドで一度戦って、完全に負けた!」


「そうでしたわね」


「でも、あの強さは本物だ。しかも本人はまだまだ強くなれると思ってるような感じなんだよ!」


ジャスティスは少し悔しそうに笑う。


「俺もああいう強さが欲しい」


『勇者、ちゃんと向上心あるな』

『ムサシさんも嬉しそう』

『今度また訓練してもらえ』


その中に、ぽつりと一つ。


『ムサシは確かに強いのじゃ』


「……?」


ジャスティスがコメントを目で追う。


「……のじゃ?」


ガブリエルも一瞬だけコメント欄を見る。


「またいらっしゃいますわね、この方」


『誰だよw』

『のじゃさん今日もいる』

『なんか最近毎回いる気がする』


「まあ、次に参りますわ」


ガブリエルは特に気にせず進めた。


「『勇者様が逆に納得できないことはありますか?』」


「ある!」


ジャスティスの返事は早かった。


「マドカだ!」


『www』

『出た』

『マドカ被害者の会』

『何されたんだよ』


「なんであいつはあんなに強いんだよ!」


「そこですの?」


「だっておかしいだろ!」


ジャスティスが力説する。


「俺だって勇者だぞ!? Aランク冒険者だぞ!?」


『知ってる』

『勇者はちゃんと強い』

『でもマドカが強すぎる』


「なのにモンバトでも勝てない!」


『そっちかよw』

『戦闘じゃなくてモンバトw』


「いつか絶対勝つ!」


「まだ諦めていないんですのね」


「ああ!」


『モンバトへの執念すごい』

『勇者の目的が増えてる』


「では次ですわ」


ガブリエルがコメントを読む。


「『勇者様、怖いものはありますか?』」


「怖いもの?」


ジャスティスが考える。


「……ある」


『何だ?』

『ドラゴン?』

『巨人?』


「赤ちゃんの頃の記憶だ」


「まあ……」


ガブリエルが微妙な表情になる。


「俺は前世の記憶があったからな……」


『まだ引きずってるw』

『母親の顔見れないって言ってたもんな』

『勇者の最大の敵、オムツ』


「お前ら笑うな!」


「ふふふ」


「本当に大変だったんだぞ!」


『勇者かわいい』

『赤ちゃん勇者見てみたい』


「では、少し真面目な質問ですわ」


ガブリエルが次の質問を読む。


「『魔王が現れたらどうしますか?』」


「当然、倒す!」


即答だった。


『さすが勇者』

『ここだけは迷わない』

『熱い』


「ただし……」


ジャスティスが少し考える。


「そもそも、この世界に俺が知っているような魔王がいるのかは分からない」


「あら、確かに」


「だから、まずは調べる。相手が本当に倒すべき存在なのか、それとも話し合える相手なのか」


『おお』

『ちゃんと考えてる』

『勇者=とりあえず斬るじゃないんだな』


「明確な悪がまだ分からないって言っただろ?」


ジャスティスは真面目な顔になる。


「俺は勇者だからって、何でも敵扱いするつもりはない」


その言葉に、コメント欄の流れが少し落ち着く。


そして――


『そういうところは好きじゃ』


「……また、のじゃさん」


『www』

『勇者に認識され始めてるw』


「まあ、次ですわ」


ガブリエルが笑いながら読む。


「『勇者様は泳げますか?』」


「……」


ジャスティスが固まった。


「泳げない」


『wwww』

『急に弱点』

『勇者、泳げないのかよ』

『海行けないじゃん』


「勇者だからって何でもできるわけじゃないだろ!」


「確かにそうですわね」


「俺の前世では普通に泳ぐ機会なんてあったけど、この世界に生まれてからは……」


「赤ちゃんだったから?」


「それは関係ないだろ!」


『ガブちゃん煽ってるw』

『泳げない勇者』

『水属性に弱い勇者』


「次!」


ジャスティスが少し恥ずかしそうに促す。


「『エキドナで一番仲良くなった人は誰ですか?』」


「……」


ジャスティスは少し考える。


「マドカかな」


『やっぱり』

『仲良いもんな』

『モンバトでは敵』


「それとセシリアとも結構話すようになったな」


『メイドさん!』

『勇者、メイド好きそう』

『見学会の時めっちゃ楽しそうだったもんな』


「いや、まあ……」


ジャスティスが視線を逸らす。


「セシリアは話しやすいからな」


『絶対好きじゃん』

『勇者、顔に出てるぞ』


ガブリエルが笑う。


「まあ、仲良くなった人が増えるのは良いことですわね」


「そうだな」


ジャスティスも笑った。


「エキドナに来るまでは、俺はずっと一人で活動していたからな」


『……』

『勇者……』


「今は違う」


ジャスティスは少しだけ嬉しそうに言った。


「困った時に相談できる奴がいる。それだけでも結構違うもんだ」


『よかったな勇者』

『一人じゃないじゃん』

『エキドナに来て正解だったな』


『帰る場所があるのは、よいことじゃの』


ジャスティスがそのコメントを見つける。


「……そうだな」


今度は素直に笑った。


「俺もそう思う」


「では、ここからは少し皆さんが気になっている話に参りましょうか」


ガブリエルが手元の質問を見る。


「質問その零ですわ」


「零?」


「『過去、私、変な村に行きましたの。そこではどうも演技っぽいセリフが広まっていましたわね。それは勇者様に伝えられたと言われましたわ? 本当ですの?』」


「…………」


ジャスティスが固まった。


「……なんのことやら?」


『ん?』

『何か始まったぞ』

『変な村?』

『演技っぽいセリフ?』


「俺の名前を語る奴がいるだと!?」


ジャスティスは勢いよく立ち上がる。


「許せないな! いつか探し出してお灸をすえてやる!」


『勇者本人が否定してるw』

『絶対なんか知ってるだろ』

『ガブちゃん追及してくれ』


「では、質問一ですわ」


ガブリエルは追及しなかった。


「『勇者様は前世ではどんな人だったんですか?』」


「そうだな!」


ジャスティスは今度は真面目な顔になる。


「俺は前世では、親に厳しく、人のためになるようなことをしろって言われて育てられたんだ!」


「前世ですの?」


「ああ」


ジャスティスは頷く。


「俺はこの世界とは違う記憶がある!」


「それは……」


「地球!」


ジャスティスが胸を張る。


「そこでは俺は正義という名前だった!」


『日本!?』

『地球って何だ?』

『また知らない世界の話だ』

『正義って名前なのか』


「つまりジャスティスだ!」


ジャスティスは拳を握る。


「それは生まれ変わった今でも変わらない!」


「勇者ってのは人を助ける仕事だ!」


その声が少し大きくなる。


「明確な悪はまだわからない! だけど俺はやる!」


そして、カメラを真っ直ぐ見る。


「俺こそがジャスティスなのだから!」


「アツイですわねー! がんばってくださいませ!」


『熱いw』

『自己紹介がすごい』

『でも勇者っぽい』

『正義だからジャスティスなのね』


「では質問二ですわ」


ガブリエルが次の質問を読む。


「『転生した時のことを覚えているとのことですが、赤ちゃんの頃はどうでしたか?』」


「そうだな……」


ジャスティスが遠い目をする。


「俺はこの世界に生まれた時に、もうすでに前世の記憶を持っていた!」


「まあ」


「そこで赤ちゃんだろう?」


ジャスティスは真顔になった。


「羞恥心がぱなかったな!」


「……」


「うまく動けないが、意識はしっかりある!」


「はい」


「世話されなきゃいけないわけだろ!?」


ジャスティスは両手を広げる。


「トイレも一人で出来ない!」


『またそこw』

『勇者の赤ちゃん時代』

『本人めっちゃ気にしてる』


「とてつもなく恥ずかしくて、今でも母さんの顔を見るのがつらい!」


「そ、それは大変でしたわね……」


『勇者かわいそうw』

『転生者も大変だな』

『ここまで恥ずかしがる人初めて見た』


「では質問三ですわ」


「『今までで一番危険だった戦いは?』」


「あれは……山だ!」


ジャスティスの表情が変わる。


「山に行った時に、二十メートルくらいの巨人がずっと追いかけて来た!」


『二十メートル!?』

『それはヤバい』

『どうやって倒したんだ』


「その時は弱かったけどうまく地形を利用して、谷まで引っ張っていったんだ!」


「ほう」


「ギリギリまで引きつけて、魔法で顔を焼いた!」


「かなり危険ですわね」


「そこで後ろに回って蹴りを入れた!」


「蹴り?」


「巨人は崖から落ちて即死したな!」


ジャスティスは腕を組む。


「あれは死ぬかと思った!」


「なかなかやりますわね!」


『普通にすごい』

『ちゃんと勇者してる』

『マドカにモンバト負けてる人とは思えない』


「では質問四ですわ」


「『エキドナとは正式に加入したんですか? そして一番驚いたことは?』」


「ああ。正式に加入したわけじゃないんだ!」


ジャスティスはそこはしっかりと説明する。


「俺の活動を支援したいって話で、マドカに言われてな。面白そうだからってさ」


「それで色々な装備をレンタルしてもらったんですのね」


「そうだ。それに剣聖ムサシのパーティーで少しお世話になってる!」


「一番驚いたことは?」


「まず一番驚いたことは――メシだ!」


「食事ですの?」


「あそこの料理は結構俺の世界の料理に似てるんだ!」


ジャスティスが嬉しそうに話す。


「いや、和の国がかなり近いんだな。和の国を参考にした料理、本当にうまい!」


『また飯w』

『勇者の好きな話題』

『和の国料理そんなにうまいのか』


「そろそろゴールの食堂にもレシピが渡るんじゃないか?」


「それは楽しみですわね!」


「俺としても期待してる!」


「では質問五ですわ」


ガブリエルが少し笑う。


「『エキドナにはマドカさん以外にも強い人がいると聞きますが、実際どうなんですか?』」


「マドカだけじゃない!」


ジャスティスは即答した。


「あそこは本当に強いと思う!」


「まあ」


「いや、俺も強いけどな!」


『自分で言ったw』

『勇者は弱くないぞ』

『そこはちゃんと認めてる』


「まだ俺はソロだと二十五階は少しきつい。パーティーでやっとというところだ!」


「それでも十分すごいですわ」


「あいつらは三十階を余裕で攻略してる!」


ジャスティスは少し悔しそうにする。


「見習うことは多い。マドカにはよくモンバトで負けてるな!」


「モンバトでも負けていますのね」


「だが、待ってろマドカ! いつか俺が勝つ!」


そして少し間を置く。


「だけど今の時点では……あいつらは世界最強クラス……」


ジャスティスがぼそっと呟く。


「チートだろ……」


『出たw』

『勇者の本音』

『マドカ強すぎ問題』

『モンバトでも負けてるの草』


「では質問六ですわ」


「『勇者になった時、どう思いましたか?』」


「俺の時代が来たと思った!」


ジャスティスは即答した。


「前の世界では、そういう異世界に転生して勇者になったり、賢者になったりして、世界の平和のために魔王みたいなやつを倒す物語が多かった!」


「なるほど」


「俺も正義のために働けるってな!」


ジャスティスは満足そうに頷く。


「勇者になったこと自体は、嬉しかったんですのね」


「ああ!」


「では最後の質問ですわ」


ガブリエルが最後の紙を見る。


「質問七。『これから勇者様は、どうするつもりですか?』」


ジャスティスの表情が少し真剣になる。


「今はエキドナと協力する契約をした!」


『おお』

『契約したのか』


「世界で必要とされている物を旅をして探す!」


「ほう」


「危険な物の調査。広めるべきだという、まだ知られていない文化やモノをエキドナに報告する!」


「面白そうですわね」


「再現できそうなら、新商品として発売されるかもしれない!」


「それはエキドナらしいですわ」


「エキドナに正式に加入したわけじゃない!」


ジャスティスはそこだけは改めて強調した。


「マドカは俺のことを気に入って、色々してくれるらしい!」


「ふふふ」


「だが、まずは支援してもらって世界を見たい!」


ジャスティスは腰に下げた道具を見せる。


「俺用のエキドナ直行転移装置をレンタルしてもらったからな!」


『勇者専用!?』

『すげえ』

『エキドナ何でもあるな』


「しかも、転移した先と行き来できる、記憶可能な特殊なやつだ!」


「便利ですわね」


「寝る時はゴール!」


ジャスティスは笑った。


「よく戻ってくるつもりだ!」


そしてカメラに向かって親指を立てる。


「楽しみにしててくれ!」


『勇者の旅、楽しみ』

『また配信してくれ』

『世界旅行編待ってるぞ』

『エキドナとの活動も気になる』


「まあ!」


ガブリエルが笑顔になる。


「これからも勇者様の活躍に期待ですわね!」


「任せてくれ!」


ジャスティスが胸を張る。


「俺は勇者だからな!」


『おつかれ勇者!』

『また呼んでくれ』

『質問まだまだあるぞ』

『次回も頼む』


そして最後に、いつもの名前が流れる。


『今日は面白かったのじゃ』


「……」


ジャスティスがコメント欄を見る。


「……この人、今日もいるな」


『www』

『もう覚えられてるw』

『のじゃさん常連』

『勇者に認識された』


ガブリエルが笑う。


「では、本日はここまでですわ!」


「またな!」


配信終了。


画面が暗くなった後も、コメント欄にはしばらく視聴者たちの書き込みが流れ続けていた。


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