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落内円は落ちている  作者: 七風


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勇者 無双する

「くそ……また負けた!」


エキドナの一室。


ジャスティスはモンバトの画面を睨んでいた。


「なんなんだよ、あいつ……!」


「ふふーん」


向かいではマドカが楽しそうに笑っている。


「勇者くん、まだやる?」


「やる!」


「じゃあ、もう一回ね」


「次は勝つ!」


――数分後。


「……負けた」


「また勝った!」


「くそぉ……!」


ジャスティスは頭を抱える。


「俺、弱いわけじゃないんだけどな……」


「うん」


「Aランク冒険者だし、昨日もちゃんと戦えただろ?」


「うん」


「なのに、なんでマドカに勝てないんだよ!」


「モンバトは強さだけじゃないからね」


「……あいつ、チートだわー」


「チートじゃないよ!」


そこへ、後ろから声がした。


「おお、ジャスティス!」


振り返ると、ムサシが立っていた。


「ああ、ムサシさんか」


「モンバトのことか?」


「ああ……」


ジャスティスはため息をつく。


「俺は弱いわけじゃないんだけど、あいつに勝てないんだよ」


ムサシは画面を覗き込む。


「なら、データ次第ではないか?」


「データ?」


「うむ。ワシもマドカにもガブリエル殿下にも勝てんからなぁ」


「……ムサシさんも?」


「うむ」


ムサシはあっさり頷いた。


「やっぱりデータ探しに行かねーとダメか……」


「ちょうどよい」


「ん?」


「今日、配信でみんなでダンジョンに行くからな」


ムサシが笑う。


「どうだ? ダンジョンには直通魔法陣があるから、すぐだぞ」


「マジか!」


ジャスティスの目が輝いた。


「行く!」


「ふふ」


マドカが笑う。


「勇者くん、モンバト狂いになってきたね」


「うるさい!」


ジャスティスは立ち上がった。


「勝つためなら何でもする!」


ムサシはそんなジャスティスを見て、楽しそうに笑った。


「うむ。では、ダンジョンへ行くとするか!」


「おう!」


ジャスティスはすっかり乗り気だった。

「では、二十五階層まで行くぞ!」


ガイルの声とともに、今日のダンジョン配信が始まった。


メンバーはムサシ、チヨ、ガイル、ナツメ。


そしてゲストとして――


「勇者ジャスティスだ!」


「よろしく!」


ジャスティスが手を上げる。


コメント欄が一気に流れた。


『勇者きた!』


『モンバト狂い』


『マドカに勝てない勇者』


「おい!」


ジャスティスが即座に反応する。


「その話はやめろ!」


『本人に聞こえてて草』


『今日はマドカいないから勝てるぞ』


「そういう問題じゃない!」


ガイルが笑う。


「ジャスティス、今日は二十五階層だ。大丈夫か?」


「二十五程度なら余裕だよ」


「おお、頼もしいな」


「それより、今日は魔物のデータを集める!」


ジャスティスの目が輝く。


「俺はデータ屋から買うんじゃなくて、自分で集めるタイプだからな!」


『ガチ勢じゃん』


『そこまでこだわるのか』


『勇者なのにモンバトへの情熱すごい』


「当然だ!」


その直後だった。


奥から魔物の群れが現れる。


「来たぞ!」


ジャスティスが前へ出る。


「ここは俺に任せろ!」


「お?」


ガイルがカメラを向ける。


ジャスティスは剣を抜いた。


一体。


二体。


三体。


魔物が一斉に飛びかかってくる。


「遅い!」


一閃。


さらに踏み込み、次の一体を斬り伏せる。


そのまま魔物の群れの中へ突っ込んでいく。


「はっ!」


「せいっ!」


次々と魔物が倒れていく。


『え』


『強くね?』


『普通に強いじゃん』


『勇者ぱねぇ』


『これAランクって本当なんだな』


ジャスティスが一瞬だけカメラを見る。


そして――


ドヤ顔。


「……どうだ!」


『ドヤ顔w』


『急に顔がうるさい』


『勇者ぱねぇ』


「だろ!?」


完全に調子に乗っている。


チヨがその横を通り過ぎながら、残った魔物を一体斬った。


「……まだいる」


「お、おう!」


ナツメも遠くから大量の火矢を飛ばす。


ズドドドドッ!


「……」


ジャスティスが二人を見る。


「やっぱりお前らおかしいだろ!」


『勇者が普通に見える』


『エキドナ基準だと勇者が常識人』


『それはない』


「俺は普通だ!」


ムサシが笑う。


「うむ。ジャスティスも十分強いぞ」


「だろ!?」


またドヤ顔になる。


しばらく進むと、今度は少し大型の魔物が現れた。


「お、これは俺がやる!」


ジャスティスが前に出る。


剣で何度か攻撃を仕掛けるが、魔物の防御が硬い。


「なるほど……」


ジャスティスが一歩下がる。


「なら、これだ!」


剣を収める。


そして右手を掲げる。


「――我が魂に宿りし紅蓮の力よ!」


『来た』


『始まった』


『勇者の病気タイム』


『魔法使うときだけおかしくなる人』


『なんか詠唱しないとダメなんかな』


ジャスティスはコメント欄を知らない。


本人はいたって真剣だった。


「今こそその封印を解き放ち――」


「ジャスティスさん、また始まったね」


ナツメが普通に言う。


「またってなんだよ!」


「いつもの」


「いつものじゃない!」


ジャスティスが叫ぶ。


そして魔力が膨れ上がる。


「――すべてを焼き尽くせ!」


巨大な炎が魔物を包み込む。


轟音。


炎が消えたあとには、魔物の姿はなかった。


コメント欄が爆発する。


『勇者ぱねぇ』


『火力えぐい』


『詠唱はよく分からないけどすごい』


『また病気が出たけど強い』


『あの病気込みで勇者なんだろうな』


ジャスティスがカメラを見る。


「……ふっ」


またドヤ顔。


『ドヤってるw』


『褒められて嬉しそう』


「当然だ!」


ムサシが横で笑う。


「うむ。強いではないか」


「だろ!?」


ジャスティスは満足そうに頷いた。


そして倒した魔物を見ながら、急に真剣な顔になる。


「……で、この魔物のデータなんだけど」


「そこは真面目なんだな」


ガイルが笑う。


「当然だろ!」


勇者ジャスティス。


戦闘ではしっかりAランク相当の実力を見せる。


だが、魔法を使う時だけ妙な病を発症する。


視聴者はまだ、その病気の正式名称を知らない。


ただ――


「勇者は魔法を使う時だけ、なんか変になる」


それだけは、もう全員が知っていた。


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