これからどうするか
「そういえばさー、宮本武蔵も佐々木小次郎も異世界転移してきてんだよねー」
「…………は?」
ジャスティスが固まる。
「だから、宮本武蔵」
「いやいやいや! あの宮本武蔵!?」
「うん。たぶんジャスティスが知ってる宮本武蔵」
「なんで!? なんで宮本武蔵がいるんだよ、この世界!!」
ジャスティスは頭を抱えた。
「……待て。武蔵がいるんだよな?もしかしてあのヒロバト本物か?」
「そうだね。エキドナに所属してるね。」
「で、佐々木小次郎の痕跡もあったんだよな?」
「うん」
「何なんだよ、この世界……」
しばらく考え込んだあと、ジャスティスが顔を上げる。
「そのうち織田信長とか出てきそうなんだが?」
「だって武蔵と小次郎が実際にいるんだから、信長がいてもおかしくないんじゃない?」
「お前、順応するの早すぎだろ!!」
「ただ九尾が来てるし、何かしらはいると思うよ? 多分、地球とも密接な関係はあると思うんだよね」
マドカは少し考える。
「うちの国の宗教の神がベルフェゴールでしょう? 色欲はアスモデウス。そしてゼウスは悪神よばわりなんだよ。」
「まぁ、女癖悪かったって神話はあるけどな……」
ジャスティスは複雑そうな顔をする。
「まぁ、そこらは私達に関わってこなきゃ、もうあきらめよう?」
「諦めるのかよ」
「私達は私達で、この世界を生きていく」
マドカはそう言ってから、少し考える。
「便利な世界って規模ではないな。私達の周りは便利にしたい」
「私、エキドナとノイティス家、ガブちゃんやナナリー以外は別にどーでもいいし」
「それはお前、他の人達はどうなっても構わないってことか?」
「そこまでは言わないよ?」
マドカは少し考えてから答える。
「ただ、私たちエキドナは、自分たちに便利な物を作ってるうちに、周りが勝手に町を作り出しただけなんだよ」
「……は?」
ジャスティスが目を丸くする。
「お前らが、この町を作ったんじゃないのか?」
「ふふ。マドカ、懐かしいね」
ヒナタが笑う。
「元は村だったんだよ」
「村……?」
「うん。で、私たちは村長さんに村の運営を任せたの」
「そして、私たちは色々と発明したり、作ったりしてたんですよー」
「気づいたら、がんばっちゃったらしいよ?」
マドカが笑う。
「私たちは、必要な時に手を貸してただけだもん」
「…………」
ジャスティスはしばらく黙って、窓の外を見る。
そこには、かつて村だったとは思えないほど発展した町が広がっている。
「……お前ら、本当にそんな感じなのか?」
「うん」
「世界を変えようとか、国を作ろうとかじゃなく?」
「そんなこと考えたことないよ」
マドカはあっさり答えた。
「面白いもの作ってたら、人が集まってきただけだし」
「エキドナって、色々な発明で有名なんだろ?」
「うん。でも、それはニコラっていう天才がいるからだよ」
「ニコラ?」
「EVもヒロバトもモンバトも、転移装置も、基本的にニコラが作ったんだよ」
「……お前じゃないのか?」
「違う違う」
「じゃあ、お前ら転生者は何をしてるんだ?」
「知識を出したり、必要な素材を集めたり、再現できそうな地球の味を仕上げたりかな」
「なるほど……」
「あと、リゼットお姉ちゃんは大賢者だからさー。大魔法で、結構無理やり形にしてる」
「大賢者までいるのかよ……」
「グレタも鍛冶の天才だしね」
「エキドナって、転生者がすごいんじゃなくて、変な天才が集まりすぎてる組織なんだな」
「あー、それはそうかも!」
「しかも、その発明品を売った金で次の発明を作ってるのか?」
「そうそう」
「……永久機関じゃねぇか」
「永久じゃないよ。売れないと止まる」
「……じゃあ、俺は必要か?」
マドカは少し考える。
「んー……勇者君がエキドナから活動資金を受け取って、色々調査してくれたら助かるけどね」
「……活動資金?」
「うん。調査するなら、お金も必要でしょ?」
「つまり、エキドナ所属の調査員みたいなものか?」
「所属するかどうかは別にして、そういう感じ」
「勇者なのに?」
「勇者だからこそ、色々動き回れるんじゃない?」
「…………」
ジャスティスが考え込む。
「悪くないな」
「でしょ?」
「世界各地を回って、怪しいものや危険なものを調査する……」
「うん」
「必要なら戦う」
「うん」
「そして活動資金はエキドナ持ち」
「そうそう」
ジャスティスが腕を組む。
「……なんか、思っていた勇者と違うな」
マドカが笑う。
「でも勇者君、今まで一人で活動してたんでしょ? だったら資金があるだけでも楽になるんじゃない?」
「それは……確かにそうだな」
「私たちも情報が手に入るし、勇者君も活動しやすい。お互い得じゃん」
「なるほど……」
ジャスティスは少し嬉しそうに頷いた。
「エキドナ、意外と現実的だな」
「だってお金ないと何もできないし。ただ、いつでもここに来られる簡易転移装置は持ってもらうよ?」
「ん? どうして?」
マドカが当たり前のように答える。
「そりゃ、勇者君、巻き込まれて捕まっちゃいそうだもん!」
「…………」
「脱出装置は必要ですね……」
「でしょ?」
「いや、ちょっと待て」
ジャスティスが顔を上げる。
「俺、そんなに捕まる前提なのか?」
「だって勇者君だよ?」
「どういう意味だよ!」
「正義に燃えて突っ込んでいきそうじゃん」
「……」
「しかもゼウス教とか調べるんでしょ?」
「…………」
「な、なるほどな……。確かに助かると言えば助かるが」
ジャスティスは少し考えてから、続ける。
「それで、しばらくは何を調べるんだ?」
「そうだねー……」
マドカが腕を組んで考える。
「今、必要だと思う物?」
「次の発明計画ってことか?」
「そうそう」
マドカが頷く。
「前世の知識があるからこそ、欲しい物って結構あるんだけどさ。そろそろネタ切れなんだよねー」
「ネタ切れ?」
「うん。思いつくものはだいたい作っちゃったり、似たものがこの世界にあったりするから」
「なるほどな……」
「だから、まだこの世界にない便利なものとか、使えそうな素材とか、そういうのを探してほしいかな」
「ふむ……」
ジャスティスが真剣な顔で頷く。
「つまり、次の発明の種を探すわけか」
「そんな感じ!」
「それなら俺にもできそうだな」
「あと、食べ物とかもいいよ?」
「食べ物?」
「この間、味噌と醤油は手に入れたもんねー」
「……おい」
ジャスティスが顔を上げる。
「マジか!?」
「うん?」
「味噌と醤油があるのか!?」
「和の国に普通にあったよ?」
「…………」
ジャスティスが固まる。
「おい……マジか……」
「なんでそんなショック受けてるの?」
「いや、だって……!」
ジャスティスは頭を抱える。
「俺、異世界に来てからずっと探してたんだぞ!?」
「そうなの?」
「醤油とか味噌とか、そういう日本の調味料がないかって!」
「和の国に行けば普通に買えたのに」
「先に言ってくれよ!!」
マドカが笑う。
「ごめんごめん」
「……異世界生活、思ったより地球に近いな……」
「じゃあ、まずは前世で欲しかったものを探してみるか」
ジャスティスが腕を組む。
「んー……」
少し考えてから、口を開く。
「スマホか?」
「あー……」
マドカが少し考える。
「それ、もうEVでよくない?」
「……」
ジャスティスが黙る。
「確かにそうかもな!」
「通話もできるし、情報も見られるし、配信もできるものね!」
「……言われてみれば、そうだな」
「だからスマホそのものを作る必要はないんじゃない?」
「なるほど……」
ジャスティスが納得しかけたところで、ふと顔を上げる。
「いや待て。前世のスマホにはゲームもあったぞ?」
「ゲーム?」
マドカの目が輝く。
「それは欲しい!」
「お前、そこだけ食いつくのかよ!」
「だってゲームだよ!?」
「いや、俺が言いたいのは――」
「モンバトあるじゃん。まぁ他はまだだけど。」
「…………」
ジャスティスが再び黙った。
「そうだった……」
「エキドナ、だいたい作っちゃってるねー」
「お前ら、前世で欲しかったものをかなり先取りしてないか?」
「言われてみればそうかも」
「じゃあ、いけそうでいけないような……ロボットとかはどうだ?」
ジャスティスが提案する。
「んー……」
マドカが少し考える。
「それは難しいかも」
「難しいのか?」
「ペットみたいなのは作ったけど、人間型は暴走したら手に負えなそうじゃない?」
「ペット?」
ジャスティスが首を傾げる。
「ん?」
マドカも首を傾げる。
「エキドナ館にもいるじゃん」
「…………」
ジャスティスの顔が固まる。
「……あれ、人工的に作ったのかよ!?」
「うん。かわいいでしょ?」
「いや、かわいいけど! 俺は普通のペットだと思ってたぞ!?」
ナナリーが笑う。
「エキドナでは、そういう子も普通にいますからねー」
「普通なのか……?」
「他にも警備のわんおわんおとかもいますね」
「わんおわんお?」
「警備用のコボルトたちですー」
「……お前らの組織、どうなってるんだよ」
マドカが笑う。
「エキドナだよ?」
「その説明で納得できるか!」
「なるほどな……」
ジャスティスが腕を組む。
「お前らが相当やらかしてるのはわかった」
「やらかしてないよ!?」
マドカが即座にツッコむ。
「それで、他に欲しい物はないのか?」
「欲しい物……」
マドカが考える。
「そういえば、サバゲーとかしたいな」
「サバゲー!」
ナナリーがぱっと反応する。
「おもしろいかも!」
「だよね!」
マドカも嬉しそうに頷く。
「武器を使ってチーム戦とかできるし、エキドナなら色々作れそう!」
ジャスティスも少し乗ってくる。
「前世のサバゲーみたいなものか?」
「うん。もちろん、本物の武器じゃなくて安全なやつ」
「なるほど……」
ジャスティスが考える。
「それなら俺も参加できそうだな」
「勇者君、絶対強いじゃん」
「……そういう問題か?」
「だってAランクでしょ?」
「サバゲーなら身体能力より作戦だろ」
「じゃあ、勇者君が敵チームになったら大変そうだね」
「……」
ジャスティスが少し得意げになる。
「勇者だからな」
「そこは普通に自慢するんだw」
「マドカ、要はヒロバトのようなものですの?」
「んー……ちょっと違うかな。ヒロバトみたいに幻影と戦うんじゃなくて、体を動かすのは自分だよ?」
「体を?」
「うん。危なくないペイント弾とか、痛くない弾を使って、相手に被弾させて遊ぶゲーム。撃たれたら、その人は脱落とか降参するの」
「おもしろそうですわね!」
ガブリエルが目を輝かせる。
「ヒロバトは訓練の要素が多かったですし、自分でも体を動かす遊びということですわね?」
「そうそう。撃ち取られたら降参のチーム戦だな」
ジャスティスが補足する。
「なるほど、競技なんですのね!」
「冒険者には流行りそうですよねー」
ナナリーも楽しそうに頷く。
「配信とかしたり」
「それ絶対おもしろい!」
マドカが食いつく。
「隠れてるところを配信で見たり、チームごとに視点を切り替えたりできそう!」
「それなら観客も楽しめますわね!」
ガブリエルまで乗ってくる。
「……お前ら、もう作る気になってないか?」
ジャスティスが呆れたように呟いた。
「まぁ、この間のエジソン君の配信見た?」
「ええ、見ましたわ!」
ガブリエルが嬉しそうに答える。
「あれですわね! ニコラ博士との幻影対決! おもしろかったですわー!」
「そうそう」
マドカが頷く。
「銃って概念は、もうこの世界にあるんだよね。それを弾を変えるだけじゃない?」
「なるほど……」
「魔法銃を、軽めのビリッとくるスタンガンみたいにするのもいいかもしれないよねー」
「それなら被弾したのも分かりやすいですわね」
「まぁ、ニコラちゃんならすぐに作れそう」
「……」
ジャスティスが少し黙る。
「お前ら、本当に発明のハードル低いな……」
「だってニコラちゃんだよ?」
「それで全部説明するなよ……」
「んー……そうだなー」
マドカが考え込む。
「コロシアムとか、もう何個か作ってさー。サバゲー会場にするのはどう?」
「会場を?」
「うん! 違うステージにするの。森みたいなところとか、街みたいなところとか、障害物がいっぱいあるところとか!」
「なるほど……」
ナナリーも楽しそうに頷く。
「対人戦って、この世界だとほとんどありませんもんねー」
「戦争もほとんどないようだしな」
ジャスティスも頷く。
「なら、冒険者同士で競い合う大会にするのも面白そうだよね」
「大会……」
ジャスティスの目が輝く。
「それは……俺もしたい!」
「やっぱり?」
マドカが笑う。
「勇者君、絶対こういうの好きだと思ったw」
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