ガブちゃん配信 勇者を探す
「というわけで!」
エキドナの屋敷。
ガブリエルがEVの前で胸を張っていた。
「本日は、勇者様を探しますわ!」
『!?』
『勇者を探す配信!?』
『何が始まるんだ?』
『ガブちゃん様、また何か始めたぞ』
ガブリエルは満面の笑みを浮かべる。
「先日、モンバトコロシアムで私と戦いました勇者様!」
『ああ、あの勇者か!』
『ガブちゃん様と戦ってた人?』
『そういえばそんな配信あったな』
「その勇者様に、ちょっと用事がありますの!」
『用事?』
『勇者に?』
『何したんだ勇者w』
「ですので――」
ガブリエルはカメラに向かって、堂々と宣言した。
「勇者様ー!」
「もし配信をご覧になっていましたら、ぜひご連絡くださいませ!」
『勇者に直接呼びかけてるw』
『これで見つかるのか?』
『そもそも勇者ってどこにいるんだ?』
『王都じゃなかったっけ?』
「そうでしたわ!」
ガブリエルが手を叩く。
「確か王都に戻っているんでしたわね!」
『なんで本人よりガブちゃん様の方が忘れてるんだw』
『それで探してるのかよw』
「では、王都にいらっしゃる勇者様!」
ガブリエルが再びカメラへ向き直る。
「ガブリエル王女がお探しですわよー!」
『王女直々!?』
『急に大事になったぞ』
『勇者逃げてー!』
『いや何で逃げるんだw』
『まだ何もしてないだろw』
――その頃。
王都。
「……ん?」
宿の一室でEVを見ていたジャスティスの手が止まった。
「なんだ?」
画面には、ガブリエルの配信。
『勇者様ー!』
「……」
ジャスティスはしばらく画面を見つめる。
「俺?」
『ガブリエル王女がお探しですわよー!』
「……なんでだよ!?」
ジャスティスが思わず立ち上がる。
「俺、何もしてないよな!?」
『勇者、何したんだ?』
『王女に探される勇者』
『なんかやったのか?』
『これは事情を聞きたい』
ジャスティスはコメント欄を見て、さらに焦る。
「いやいやいや!」
「そもそも王女が俺を探してるって何!?」
「俺、王都に帰ってきただけだぞ!?」
画面の向こうでは、ガブリエルが楽しそうに手を振っている。
「勇者様ー! 見ていらっしゃいませんのー!?」
「怖ぇよ!」
『本人いたw』
『勇者様見てたw』
『タイミング良すぎるw』
『勇者逃げてー!』
『だから何で逃げるんだよw』
ジャスティスは頭を抱える。
「待て……」
「なんで俺を探してるんだ?」
そのとき、ガブリエルが口を開いた。
「実はですわね――」
ジャスティスが画面を凝視する。
「マドカから、勇者様とお話ししたいと頼まれましたの!」
「……」
ジャスティスの動きが止まった。
「マドカ?」
『マドカちゃん?』
『あの子が勇者に用事?』
『何の話だ?』
『そういえば前に勇者に変な質問してたな』
『バルスってやつ?』
ジャスティスも、以前のやり取りを思い出す。
『マドカ【エキドナ公式】 バルスといえば?』
『ラピュタだろ!』
「……」
「やっぱり、あいつか」
ジャスティスが呟く。
そして、画面の向こうのガブリエルはさらに続けた。
「ですから、勇者様!」
「もし王都にいらっしゃいましたら、ぜひゴールまでいらしてくださいまし!」
「マドカが色々とお話ししたいそうですわ!」
『なんだ、普通に話したいだけか』
『じゃあ別に悪い話じゃないんだな』
『でも何の話なんだ?』
『バルスのこと聞いてたし、それ関係かな?』
『勇者とマドカちゃん、何か知り合いなの?』
「……」
ジャスティスは黙り込む。
「いや、待て」
「俺はただ質問に答えただけだぞ?」
「なんでそれで王女経由で呼び出されるんだよ!?」
『勇者困惑してて草』
『これは確かに困るw』
『ガブちゃん様、悪意ゼロなのがまたw』
『でもマドカちゃん本人が配信してないのがじわじわくる』
『本人は何してるんだ?』
――その頃。
マドカは――。
ゴールで、何も知らずに普通に過ごしていた。
「ガブちゃん、ちゃんと伝えてくれたかなー?」
そんなことを考えながら、のんびりしている。
その頃、王都では。
「なんで俺を探してるんだよおおおおおお!?」
ジャスティスが頭を抱えていた。
マドカはまだ知らない。
自分がちょっとお願いしただけの「勇者を探して」という話が、ガブリエルによって**大々的な公開捜索のような配信になっていることを。**




