ガブちゃん 久しぶりにマドカに会う
そして、勇者の配信を見た翌日。
和の国での滞在を終えたマドカたちは、チヨとナツメの実家を訪れていた。
「それじゃあ、そろそろゴールに戻ります!」
マドカが笑顔で告げる。
「皆さん、今回は本当にありがとうございました!」
「こちらこそ、色々と楽しかったですよ」
チヨとナツメの家族も笑顔で答える。
チヨとナツメも、家族と最後の挨拶を交わしていた。
「また来るね!」
「うん。今度はもう少しゆっくり帰ってきます」
「そうだね」
ナツメが笑う。
「……あ」
マドカが何かを思い出したように声を上げた。
「そうだ! ここに転移陣を置いてもいいよね?」
「転移陣ですか?」
「うん!」
マドカが頷く。
「これがあれば、ゴールからすぐ来られるし!」
「それはありがたいですね」
家族の一人が嬉しそうに答える。
「チヨやナツメにも会えますし、ゴールにも気軽に行けるようになるなら、こちらとしても大歓迎です」
「ゴールの商品も色々見てみたいですしね」
「そうそう!」
マドカが嬉しそうに頷く。
「こっちの商品をゴールに持っていくこともできるし、ゴールの商品をこっちに持ってくることもできるよ!」
「それなら、和の国とゴールの間で色々やり取りできますね」
ヒナタも頷く。
「醤油や味噌みたいなものも、これなら運びやすくなりますね」
「じゃあ、決まり!」
マドカが転移陣を準備する。
こうして、チヨとナツメの実家に転移陣が設置されることになった。
最初は、ただ和の国とゴールを行き来するためのものだった。
けれど、この転移陣はやがて、和の国とゴールの間で商品をやり取りするための窓口としても使われるようになっていく。
「じゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
「またすぐ来ますね!」
「待ってますよ」
チヨとナツメは家族に手を振る。
そして、一行は転移陣の中へと入っていった。
光に包まれた次の瞬間。
そこは、ゴールだった。
ゴールに戻り、エキドナの屋敷へと到着すると――。
「マドカー!」
ガブリエルがものすごい勢いでマドカに飛びついてきた。
「寂しかったんですのよ?!」
「ん? たかだか十日でしょ?」
マドカは抱きつかれたまま、きょとんとする。
「別にそんな離れてないんだけど?」
「もう! マドカったら、つまんなかったんですわよー!」
「私、エキドナですわよね?」
ガブリエルが胸を張る。
「違うけど?」
「まっ! まだ認めてないんですのね!」
「だから卒業したらだって」
「むぅ……!」
ガブリエルが頬を膨らませる。
「……あ」
マドカが何かを思い出したように言う。
「お土産あるよ?」
「まぁまぁ!」
ガブリエルの表情が一瞬で明るくなる。
「さすがマドカですわ!」
「はいはい」
そんなやり取りをしていると、ガブリエルがふと思い出したようにマドカを見る。
「ところでマドカ」
「ん?」
「勇者様と仲良しなんですの?」
「……」
マドカが固まった。
「なんでそうなるの?」
「だって、配信見てましたのよ?」
ガブリエルが当然のように答える。
「あなた、何か『バルス』が何かとか聞いてましたでしょう?」
「ああ、それか」
マドカが頷く。
「ガブちゃんだって、私が転生者だって知ってるでしょう?」
「ええ、もちろんですわ」
「あの勇者さんも同じ世界の人かもって思って聞いたら、まさかの同郷だったんだよね!」
「まぁ!」
ガブリエルが目を輝かせる。
「それはおめでたいですわね!」
「でしょ?」
「でも、マドカ」
「ん?」
ガブリエルが意味ありげな顔をする。
「あの勇者さん、なんと!」
「なんと?」
「なんと、私が配信したおかしな村に、変な言葉を広めてましたのよ!」
「……」
マドカの表情が止まった。
「……あいつの仕業か」
そして――。
「あいつの仕業かあああああああああああ!!」
「たまたまモンバトコロシアムで勝負しましたのよ?」
ガブリエルが少し得意げに胸を張る。
「このガブちゃん様の配信、見てませんでしたの?」
「あー……観光してた」
「まったくもう! もう少しかまってくださいまし!」
ガブリエルが頬を膨らませる。
「それで、勇者って普段どこにいるの?まだゴールにいるのかな?」
「さぁ?」
ガブリエルは首を傾げる。
「モンバトのモンスターデータ探しで、半年ぶりに王都に帰って来たそうですわね。それで、ゴールに初めて来たそうですわ!」
「んじゃ、ホームは王都なんだねー」
「勇者と言っても、自称ですわよ?」
「神様が認定したとか、そういうのじゃないですわ」
「え?」
マドカが目を丸くする。
「自称なの!?」
「マドカって、神様とか信じてるんですの?」
ガブリエルが首を傾げる。
「子供ですわねー!」
「いや、神様はわからないけど、悪魔には会ったよ?」
「悪魔!?」
「この世界の管理者みたいな案内人」
「まっ! レアですわね!」
ガブリエルの目が輝く。
「悪魔のモンスターデータ!」
「いや、この世界に来る時に会ったんだけど!」
「まぁ、では地球の固有種なんですの?」
「そこまでは知らないよ!」
マドカは苦笑する。
「私も、その勇者さんと連絡とってみようかなー。色々話聞きたいし」
「ガブちゃん、王都に戻ってたら教えてくれる?」
「もちろんですわ!」
ガブリエルが勢いよく頷く。
「指名手配すればいいんですのね?」
「違うって!」
「別に悪いことしてないんでしょ!?普通に、同じ転生者なら会いたいだけ!」
「……」
ガブリエルがじっとマドカを見る。
「また私を仲間外れにしませんわよね?」
「え?」
「じゃあ、連れてきてよ!!」
「分かりましたわ!」
ガブリエルは満面の笑みで頷いた。




