有料配信 滝行
和の国に来て、数日。
今日は特別な配信の日だった。
マドカがカメラの前に立つ。
「みんなー!」
隣にはナナリー、アリシア。
そして和の国からチヨとナツメ。
「今日は特別配信でーす!」
画面の上には、普段とは違う表示が出ている。
【特別有料配信】
【視聴料:金貨1枚】
『金貨一枚!?』
『今日は有料なのか』
『何をやるんだ?』
『この値段は気になる』
マドカがにっこり笑う。
「今日はね!」
「冬の滝修行!」
『冬!?』
『滝修行!?』
『金貨一枚払って見る内容なのか!?』
「もちろん!」
マドカが胸を張る。
「今日は特別だからね!」
ナナリーもカメラに向かって微笑む。
「普段の配信では見られない内容ですからね」
「そうそう!」
マドカが頷く。
「せっかく金貨一枚払ってくれたんだから、ちゃんと特別な配信にしよう!」
『言われるとちょっと期待する』
『金貨一枚払ったぞ』
『もう後には引けない』
『何が始まるんだ……』
カメラが少し引く。
その先には、冬の滝。
大量の水が勢いよく落ちている。
「……」
ナナリーが黙る。
アリシアも滝を見上げる。
ナツメが少し身震いする。
そしてチヨだけが平然としていた。
「じゃあ、行こうか」
「チヨちゃん待って」
マドカが止める。
「今冬だよ?」
「うん」
「滝、めちゃくちゃ冷たそうだよ?」
「うん」
「なんでそんな普通なの?」
「滝行は日課だったから……」
『日課!?』
『チヨさん強すぎる』
『これだけで金貨一枚の価値あるだろ』
「……よし!」
マドカが覚悟を決める。
「特別配信、始めよう!」
五人が滝へ入る。
「冷たーーーーい!!」
「マドカちゃん、大丈夫ですか!?」
「大丈夫じゃない!」
『www』
『開始数秒でこれ』
『金貨一枚払ってよかった』
『いや何を見てるんだ俺たちは』
ナナリーも耐える。
アリシアも耐える。
ナツメも必死に耐える。
そしてチヨだけは平然。
しばらくして、五人が滝から出る。
「……」
「……」
「……」
マドカが震えながら呟く。
「サウナ行こう」
「そうしましょう」
ナナリーが即答した。
ここにはサウナもある。
五人はサウナへ移動する。
「……あったかい」
「生き返りますね……」
「これはいいですね」
チヨも静かに息を吐く。
そして数分後。
マドカが顔を上げた。
「……もう一回、滝行する?」
ナナリーが驚く。
「え?」
「だって、せっかくサウナで温まったし!」
「また行くんですか?」
「うん!」
『まさか』
『二セット目!?』
『滝→サウナ→滝なのか?』
『特別配信すぎる』
二回目の滝。
そしてサウナ。
三回目の滝。
そしてサウナ。
繰り返すうちに、視聴者のコメントも変わっていく。
『最初は金貨一枚高いと思った』
『でもこれ、普通の配信じゃ絶対見られないな』
『チヨさんの滝行をこんな近くで見られるのも特別感ある』
『マドカたちが本気で修行してるのも面白い』
『これは有料配信で正解』
『なんか……金貨一枚払った価値がある』
最後のサウナ。
マドカがゆっくり息を吐く。
「……なんか、すごく気持ちいい」
ナナリーも笑う。
「最初はどうなることかと思いましたけど……」
アリシアが頷く。
「これはこれで、良い修行だった気がします」
ナツメも笑う。
「私も楽しかったです」
チヨが一言。
「じゃあ、もう一回?」
「まだやるの!?」
五人の声が重なった。
『wwww』
『チヨさん強すぎる』
『もう完全に日課じゃん』
マドカが笑う。
「今日はここまで!」
「このあと温泉にも入れるけど……」
カメラを見る。
「温泉は配信終わってからね!」
『それはそう』
『そこは有料でも見せないのか』
『今日は十分だ』
『金貨一枚、払ってよかった』
「じゃあ、特別配信はここまで!」
「見てくれてありがとう!」
配信終了。
画面が暗くなる。
そしてマドカは、カメラが切れた瞬間に言った。
「温泉行こー!」
「はい!」
ナナリーが笑う。
チヨとナツメも続く。
こうして特別有料配信は終了した。
視聴者たちは金貨一枚を払って、
冬の滝行とサウナを繰り返す五人を最後まで見届けた。
そして多くの者が、同じ感想を抱いていた。
――何を見せられたんだ。
だが。
――金貨一枚、払った価値はあった。




