マドカ 勇者に気づく
和の国での旅も、そろそろ終わりが近づいていた。
今日は久しぶりに、特に予定のない時間ができている。
マドカは宿の部屋でEVを眺めながら、ランキング画面を開いていた。
「最近急上昇……っと」
隣ではナナリーも画面を覗き込んでいる。
「最近はどんな配信が人気なんでしょうね」
「気になるよねー」
ランキングには、様々な配信が並んでいた。
一位。
『珍獣を探して森を一周してみた!』
「お、面白そう」
再生してみる。
画面には、森の中を走り回る冒険者。
『いた! いたぞ!』
「おおっ!」
『違う! ただのウサギだ!』
「……」
マドカは無言で停止した。
「次!」
「ふふっ」
二つ目。
『和の国の朝食を食べてみた』
「これは気になる」
しばらく見ていると、配信者が味噌汁を飲む。
『うまい! これ毎日食べたい!』
「分かる!」
マドカが勢いよく頷く。
「昨日も食べてましたよね」
「だって美味しいんだもん」
三つ目。
『モンバト初心者、初めての対戦!』
「おっ」
マドカの目が少し輝いた。
「これは見よう」
しばらく見ていると、初心者らしいミスが続く。
『あっ! 技間違えた!』
『そこじゃない!』
『うわぁぁぁ!』
「……あー」
マドカは苦笑した。
「最初はそんなもんだよね」
「マドカちゃん、楽しそうですね」
「うん」
そしてランキングを少し下へスクロールする。
「ん?」
そこに見慣れない配信があった。
『【勇者】ゴールから生配信! モンバトとか色々やるぞ!』
「勇者?」
マドカが首を傾げる。
「勇者の配信なんてあるんだ」
「珍しいですね」
「ちょっと見てみよう」
再生。
画面に映ったのは、一人の男だった。
冒険者らしい装備。
そして、妙に堂々とした表情。
『――諸君! 俺の名は勇者ジャスティス!』
「……」
マドカが画面を見つめる。
「ジャスティス……」
ナナリーも画面を見る。
「そういうお名前なんですね」
『俺はこれまで半年ほど、モンバトのモンスターを求めて各地を旅してきた!』
『そして辿り着いたのが、このゴールだ!』
「へー」
マドカは普通に聞いていた。
『この町にはヒロバトというものまである!』
『俺も挑戦したが――』
ジャスティスの顔が険しくなる。
『剣聖ムサシ・ミヤモト!』
『あれは強敵だった……!』
「……あ」
マドカが笑う。
「ヒロバトやったんだ」
『さらに、あの可愛い女の子……アリシア!』
『魔法使いの大賢者リゼット!』
『そして――』
少し間を置く。
『マドカ!』
「私?」
マドカが画面を指差した。
「私のこと言ってる?」
「たぶん、そうですね」
『あの少女……恐ろしいほど強かった』
『この町……本当にどうなっているんだ?』
「失礼だなー」
マドカは笑った。
「普通の女の子だよ?」
ナナリーが微笑む。
「普通……ですか?」
「普通だよ!」
そんなやり取りをしながら、配信を見続ける。
ジャスティスはゴールで見つけたものについて話していた。
ヒロバト。
モンバト。
EV。
そして、配信。
『この町には面白いものが多い』
『だから俺も、こうして配信を始めることにした!』
『今後は旅をしながら、いろんなものを紹介していこうと思う!』
「へー」
マドカは感心したように頷いた。
『しかし……配信というのも面白いな』
『俺がいた世界でも、こういうものはあった』
「……ん?」
マドカの手が止まった。
ナナリーも顔を上げる。
「……今、何か言いました?」
「うん」
二人は画面を見る。
『まあ、似たようなものだけどな』
ジャスティスは気にせず話を続ける。
『俺のいた世界では、ゲームを配信したり、動画を見たり……』
「ゲーム……」
マドカが小さく呟く。
『そういえば、最近はゲームをする暇もなかったな』
『レベル上げとか、ログインボーナスとか……』
「……」
マドカの目が変わった。
「ナナリー」
「はい」
「今の聞いた?」
「聞きました」
『ガチャも引きたかったんだがな』
「ガチャ!?」
マドカが思わず声を上げる。
ナナリーも少し驚いた顔をする。
「……ゲームのガチャ、ですよね?」
「そうだよ!」
二人で画面を見る。
ジャスティスは何も気にしていない。
『そういや、もうすぐクリスマスなんだよな』
『クリスマスといえば……クリスマスガチャ』
『引く前にこの世界に来ちゃったんだよなー』
「…………」
マドカとナナリーが顔を見合わせる。
「クリスマスガチャ……」
「かなり具体的ですね」
『しかも今年は結構石を貯めてたんだ』
『あと少しで天井だったんだが……』
「天井!?」
マドカが身を乗り出す。
「この人、絶対ゲームやってた人だ!」
「それは間違いないですね」
ナナリーも苦笑する。
しかしジャスティスは、その程度では終わらなかった。
『まあ、ゲームの話はこれくらいにしておこう』
『俺が元いた世界には、こういうゲームがたくさんあった』
『漫画もあったしな』
「……漫画」
マドカがまた反応する。
『こういう場面、漫画なら主人公が覚醒して逆転するところなんだがな』
『俺の場合は普通に負けた』
「ふふっ」
マドカが笑う。
「分かる……」
『それに、俺のいた世界にはコンビニっていう店があってな』
「…………」
『食べ物や飲み物、弁当なんかも売ってた』
「コンビニ……」
『雑誌も売ってたし、場所によっては二十四時間開いてた』
ナナリーが画面をじっと見る。
「……マドカちゃん」
「うん」
「この人……」
「たぶん」
二人の間に、少しだけ沈黙が落ちた。
そしてジャスティスは、さらっと言った。
『俺が生まれ育った国は、日本という国だ』
「…………」
マドカが目を見開く。
ナナリーも同じだった。
『ただ、この世界にはない』
『俺が生まれ育った世界にあった国だ』
『つまり……俺はこの世界の人間じゃない』
「……!」
マドカが画面に近づく。
『俺は元々、日本という国にいた』
『気づいたら、この世界にいた』
『まあ……転生者ってやつだな』
「やっぱり!」
マドカが叫んだ。
ナナリーも頷く。
「はい。これはもう……」
「日本人だよ!」
二人のテンションが一気に上がる。
マドカはそのままコメント欄を開いた。
コメントには当然、混乱したものが並んでいる。
『日本ってどこ?』
『そんな国あったっけ?』
『転生者って何?』
『勇者さん、




