勇者 日本人とバラす
翌日。
ジャスティスは再び配信を始めていた。
「諸君! 今日も勇者ジャスティスの配信を始めるぞ!」
『お、昨日の勇者だ』
『今日もやるのか』
『昨日の最後の話気になる』
「昨日は少し変なことを言ってしまったな」
ジャスティスは苦笑する。
「まあ、いいだろう」
街を歩きながら話を続ける。
「今日はゴールの街をさらに探索してみようと思う」
『またモンバト?』
「もちろん、それもする」
『やっぱりw』
「だが、それだけではない」
ジャスティスは周囲を見回す。
「昨日も話したが、この街には俺の知っている世界にあったものがいくつも存在している」
『冷蔵庫とか?』
「そうだ」
『洗濯機も?』
「そうだ」
『日本語の服も?』
「……それもだ」
ジャスティスは頷く。
「そして、今日も見つけた」
店の前で足を止める。
「お?」
店先に並んでいる食べ物を見る。
「これは……」
目を見開く。
「たこ焼き?」
「はい。人気商品ですよ」
店員が答える。
「…………」
ジャスティスはしばらくたこ焼きを見つめる。
「これ、俺の世界にもあったぞ」
『また?』
『勇者さんの世界、ゴールにあるもの多すぎない?』
「いや、これは本当に有名な食べ物だからな」
ジャスティスは一つ購入する。
「いただきます」
口に入れる。
「熱っ!」
『www』
『熱いの知らないのかよw』
「いや、分かっていた!」
涙目になりながら答える。
「分かっていたが、異世界で食べるとは思わなかっただけだ!」
『異世界?』
『今、異世界って言った?』
『勇者さん、異世界って何?』
ジャスティスが固まる。
「……」
「そうか」
小さく呟く。
「この世界の人間には、異世界という言葉も普通じゃないのか」
『何言ってるんだ?』
『勇者さん大丈夫?』
「いや、何でもない」
ジャスティスはたこ焼きを食べる。
「うまいな……」
少し歩く。
すると、今度は別の店が見えてきた。
「……あ」
ジャスティスが立ち止まる。
「コンビニ……?」
『コンビニ?』
『何それ?』
『店の名前?』
ジャスティスは店を見る。
確かに、建物の雰囲気が似ている。
「いや……」
「俺の世界にあった店だ」
『また知らない言葉出てきたぞ』
『コンビニって何?』
「え?」
ジャスティスは振り返る。
「コンビニを知らないのか?」
『知らない』
『初めて聞いた』
『どんな店?』
ジャスティスは少し考える。
「食べ物や飲み物があって、日用品も買えて……」
「弁当もあって、雑誌もあって……」
「二十四時間開いてる店も多かったな」
『???』
『なんで店が二十四時間?』
『便利すぎない?』
「そうそう」
ジャスティスは嬉しそうに頷く。
「夜中に腹が減った時なんか――」
そこまで言って、ふと黙る。
「……」
『どうした?』
「いや」
ジャスティスは苦笑する。
「俺、普通に日本の話をしてるな」
『日本?』
『また出た』
『日本って何なんだ?』
『国の名前か?』
ジャスティスは画面を見る。
「……そうだ」
「日本は俺が生まれ育った国だ」
『聞いたことない』
『どこにある国?』
『この大陸にあるのか?』
「……」
ジャスティスは少し困った顔をする。
「この世界にはない」
コメント欄が止まる。
『え?』
『どういうこと?』
「俺が生まれ育った世界にあった国だ」
『????』
『世界?』
『勇者さん何言ってるんだ?』
ジャスティスは頭を掻く。
「そうだな……」
「俺はこの世界の人間じゃない」
『…………』
『え?』
『マジ?』
『どういう意味?』
「俺は元々、日本という国にいた」
「そして、気づいたらこの世界にいた」
ジャスティスは少し笑う。
「だから、まあ……転生者ってやつだな」
『転生者!?』
『本当にいるのか!?』
『勇者って転生者だったの!?』
「そういうことだ」
ジャスティスは堂々と答える。
「別に隠すつもりもない」
「そして、この街には俺と同じような奴がいるんじゃないかと思っている」
『なんで?』
「冷蔵庫」
「洗濯機」
「配信」
「日本語」
「そして……」
ジャスティスは少し考える。
「ムサシ・ミヤモト」
『剣聖ムサシ?』
『あれも関係あるのか?』
「それはまだ分からない」
「だが、この街には俺の世界を知っている人間がいる気がする」
ジャスティスはカメラを見る。
「もし、俺と同じ世界から来た奴がこの配信を見ていたら――」
少しだけ真剣な顔になる。
「一度、話をしてみたい」
「俺はゴールにいる」
「見つけたら、声をかけてくれ」
『おお……』
『転生者探し始まったw』
『この街にいるのか?』
『誰なんだろうな』
ジャスティスは笑う。
「さて!」
「そろそろモンバトをやりに行くか!」
『切り替え早いw』
『勇者の転生者探しよりモンバト優先なのかよ』
「当然だ!」
ジャスティスは胸を張る。
「それも俺の冒険だからな!」
そして配信は、そのままモンバトの話へ移っていった。




