依頼
食事を終え、三人が店を出ようとしたところで、店の料理人が声をかける。
「失礼ですが……」
「はい?」
「皆様は、外国のお貴族様でございましょうか?」
クリスティーナが自分たちの身分を簡単に説明する。
料理人は、三人が先ほどから映像結晶に向かって話していたことについて尋ねる。
「先ほどから、皆様はその結晶に向かってお話しされていましたが……映像を記録されていたのでしょうか?」
「ああ、これ?」
マドカが映像結晶を見る。
「これは配信カメラだよ!」
「配信……カメラ?」
和の国では、まだ配信という技術そのものが知られていない。
クリスティーナが簡単に説明する。
「この配信カメラで撮影した映像が、遠くにいる方々へリアルタイムで届くのですわ」
「遠くにいる方々……?」
「世界中のみんな!」
マドカが元気よく答える。
「……世界中?」
「はい」
料理人が驚く。
「では……先ほどの料理を、世界中の皆さんが見ていたということですか?」
「そういうことになりますわね」
クリスティーナが微笑む。
ルーデウスが、視聴者側で使われているEVを見せる。
「こちらが、配信を見るためのものです。配信カメラで撮影した映像が、こちらのEVへ届きます」
料理人はEVを覗き込み、しばらく驚いた様子で眺める。
「……なるほど。遠くにいる方々が、今この場の出来事を見られるのですね」
「うん!」
マドカが頷く。
料理人はそこで改めて三人に向き直る。
「それでは……一つ、お願いがございます」
「はい?」
「先ほどのお話を聞いて、ぜひお願いしたいことがございます」
料理人は、和の国の料理をゴールの人々にも知ってほしいのだと話す。
「もちろん、和の国へ来なければ味わえない料理もございます。しかし、まずは知っていただくことが大切だと思っております」
そして料理人は、和の国では怠惰の国についても知っていると話す。
「怠惰の国は私どもも知っております。そちらで和の国の料理が広まれば、そこからさらに多くの方に知っていただけるのではないかと考えております」
ルーデウスもその意図を理解する。
「まず怠惰の国で知ってもらって、そこから和の国に興味を持つ人が増えれば、観光客も増えるでしょうね」
「はい。それが私どもの願いでございます」
そこでクリスティーナが提案する。
「でしたら、エキドナの料理人に和の国の料理を覚えてもらうのはいかがでしょう?」
「エキドナの料理人に?」
「ええ。エキドナにも料理人がおりますので」
料理人は喜んで頷く。
「ぜひお願いしたいところです!」
「では、本日の営業が終わる八時過ぎに、改めてお時間をいただけますか?」
「もちろんですわ」
マドカも笑顔で頷く。
「ヒナタとアーノルドに覚えてもらおう!」
こうして、昼の食事をきっかけに、夜にはエキドナの料理人ヒナタとアーノルドが料亭を訪れ、和の国料理を教わる料理交流が行われることになった。
もちろん、その様子も配信する。
そして和の国の料理人たちは、そこでエキドナ側の料理人がどれほどの速さで料理を覚えるのかを目の当たりにすることになる。




