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落内円は落ちている  作者: 七風


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配信 お昼ご飯

 昼時。


 着物を選び終えた三人は、そのまま和の国でも名の知られた高級料亭へと向かっていた。


 店内は静かで落ち着いた雰囲気だ。


 案内された座敷に入ると、マドカはさっそく座布団の上に座り、映像結晶へと笑顔を向ける。


「みんなー! 次はお昼ご飯だよ!」


『待ってました!』

『今度は何を食べるんだ?』

『和の国の料理、気になる!』

『さっきから知らないものばっかりだから楽しみ』


「今日はね、高級料亭に来ました!」


「せっかく和の国に来たのですもの。こういう場所のお料理も味わってみたいですわね」


 クリスティーナも楽しそうに微笑む。


「俺もこういう店は初めてだな」


 ルーデウスが座敷を見回す。


「お兄ちゃんも?」


「ああ。普段の食事とは雰囲気が違うな」


『高級料亭って何?』

『すごそう』

『三人とも服も和風だからめちゃくちゃ似合ってる』

『料理期待してるぞー!』


 しばらくすると、最初の料理が運ばれてきた。


 大きな皿の上に、色とりどりの魚が美しく盛り付けられている。


「わぁ……綺麗!」


 マドカが身を乗り出す。


「これは……魚ですわね?」


「うん。刺身だよ!」


「刺身?」


 クリスティーナが首を傾げる。


「魚を生で食べる料理!」


「…………生?」


 クリスティーナの笑顔がほんの少し固まった。


 ルーデウスも皿を見つめる。


「火を通していないのか?」


「うん!」


 マドカは何のためらいもなく一切れを箸でつまんだ。


「こうやって食べるんだよ」


 ぱくっ。


「んー! おいしい!」


『魚を生で!?』

『えっ、大丈夫なの!?』

『生魚って食べられるのか!?』

『マドカちゃん普通に食べたぞ!?』


「……マドカちゃん、本当に平気なのですね」


「うん。おいしいよ?」


 クリスティーナは少し迷ったあと、自分も一切れを口に運ぶ。


「……あら」


 しばらく味わってから、小さく頷いた。


「美味しいですわね。魚の風味がしっかりしていますし、口当たりもとても滑らかですわ」


『おお……』

『クリスティーナ様が美味しいって言ってる』

『でもちょっと怖そうw』


「ただ……」


 クリスティーナはもう一度刺身を見る。


「やはり、生というのには少し慣れませんわね」


「俺もだな」


 ルーデウスも一切れ食べてから頷いた。


「味はいい。魚の旨味も分かる。ただ……生か」


「ふふ。二人とも慎重だね」


「マドカが気にしなさすぎなのですわ」


『マドカちゃんだけ別格w』

『普通にぱくぱく食べてる』

『でも食レポとしてはめちゃくちゃ分かりやすい』


 マドカは気にすることなく、もう一切れ口に入れた。


「うん、やっぱりおいしい!」


 続いて運ばれてきたのは、野菜や魚介に衣をまとわせ、油で揚げた料理だった。


「これは?」


「天ぷら!」


 マドカが答える。


「野菜とか魚を衣につけて揚げるんだよ」


「なるほど……」


 クリスティーナが一つ取って口に運ぶ。


「まあ……衣がとても軽いですわね」


「外側はさくっとしているのに、中は熱を保っていて柔らかい。油っぽさも思ったほどありません」


 ルーデウスも感心したように頷く。


「これは美味しいな」


「でしょー?」


 マドカは嬉しそうに笑う。


『今度のは分かりやすい!』

『揚げ物なのか』

『めちゃくちゃ美味そう』

『マドカちゃんの説明が一番簡単w』


 その後も料理は次々と運ばれてくる。


 蓋を開けると、甘辛い香りが広がる料理。


「これは……?」


「うな重!」


 マドカが嬉しそうに声を上げる。


「うなぎっていう魚を焼いて、ご飯の上に乗せてるんだよ!」


 ルーデウスが一口食べる。


「……これはいいな」


「ふふ。お気に召しました?」


「ああ。身が柔らかいし、このタレがご飯によく合う」


 クリスティーナも一口。


「甘辛い味付けがとても上品ですわね。魚そのものにもよく合っています」


『タレの魚料理か!』

『ご飯と一緒に食べるんだ』

『これは絶対うまいやつ』


「マドカちゃんは?」


「おいしい!」


「でしょうね」


 クリスティーナがくすりと笑う。


 さらに、小さな鍋に入った牛肉料理。


 炊き込みご飯。


 大きな甲殻類を丸ごと焼いた姿焼き。


 そして、これでもかというほど並べられたカニ料理。


「…………」


 マドカが卓上を見回す。


「ねえ」


「何です?」


「これ、お昼ご飯だよね?」


「そうだな」


 ルーデウスも少し困ったように料理を見る。


「俺も途中から分からなくなってきた」


『まだ来るの!?』

『料理の種類が多すぎる!』

『昼ご飯だよな?』

『どれも見たことないけどめちゃくちゃ美味そう』

『マドカちゃん食べきれる?』


「大丈夫!」


「即答するな」


 ルーデウスが呆れる。


 牛鍋を食べれば、


「お肉が柔らかいですわ。野菜にも味が染みていますわね」


 炊き込みご飯を食べれば、


「お米に具材の風味がしっかり入っています。これは落ち着く味ですわ」


 甲殻類の姿焼きを食べれば、


「香ばしいですわね。身も甘みがあります」


「これ好き!」


 カニを食べれば、


「身がしっかりしていますわ。これは贅沢ですわね」


「カニうまっ!」


 マドカはその横で、ほとんど感想になっていない。


『マドカちゃんの食レポ雑すぎるw』

『でも絶対うまいのは伝わる』

『クリスティーナ様とルーデウス様が頑張って説明してるw』


 そして最後に運ばれてきたのは、いくつもの握りが美しく並んだ料理だった。


「これは寿司!」


 マドカがまた嬉しそうに声を上げる。


「魚とかを、ご飯と一緒に食べる料理だよ」


「これも魚を使うのですね」


 クリスティーナが眺める。


「そうだね。いろんな種類があるよ」


 三人でそれぞれ一つずつ口に運ぶ。


「……これは美味しいですわ」


 クリスティーナが微笑む。


「魚とご飯を一緒に食べるというのが面白いですわね。味の組み合わせがとても良いです」


「確かに。さっきの刺身とはまた違うな」


 ルーデウスも頷く。


「ご飯に味がある分、魚だけとは印象が違う」


「でしょー!」


 マドカは満足そうに頷いた。


『また知らない料理が出てきた!』

『魚とご飯か』

『和の国すごいな』

『今日だけで知らない料理いっぱい覚えたわ』


 ようやく料理が一通り片付いたところで、三人は一息ついた。


「……いっぱい食べましたわね」


「うん!」


「マドカ、まだ食べられるのか?」


「え?」


 その時だった。


 仲居が新しい器を運んできた。


「お食後の甘味でございます」


「甘味?」


 器の中には、寒天のようなもの、餡、果物などが美しく盛り付けられている。


「……!」


 マドカの目が輝いた。


「あんみつだ!」


「まだ食べるのか……」


「甘いものは別だよ!」


 マドカは嬉しそうに匙を手に取る。


 クリスティーナも小さく笑った。


「ふふ。確かに、これは別腹ですわね」


 ルーデウスは二人を見て、苦笑する。


「……そういうものなのか?」


『最後に甘いものきた!』

『それ何!?』

『めちゃくちゃ綺麗』

『マドカちゃんめっちゃ嬉しそう』


「これね、甘くて美味しいんだよ!」


 マドカが一口食べる。


「んー! これも好き!」


 クリスティーナも一口味わう。


「甘さだけではなく、果物の酸味もあって良いですわね」


「確かに。食後でも食べやすいな」


 ルーデウスも頷く。


『知らない料理ばっかりだったけど、全部うまそうだった』

『和の国の食文化すごいな』

『次に行くときは食べてみたい!』


 マドカは最後の一口を食べ終えると、満足そうに笑った。


「和の国のお昼ご飯、すっごくおいしかった!」


「ええ。とても良い経験になりましたわ」


「俺も満足したよ」


「じゃあ次は、また町を見て回ろう!」


 マドカが立ち上がる。


「まだまだ和の国観光は終わらないよー!」


 映像結晶の向こうから、次々とコメントが流れていく。


『次はどこ行くの!?』

『まだ観光するのか!』

『和の国編めちゃくちゃ楽しい!』


 三人は笑いながら、料亭を後にした。


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