対価
「リゼット様」
「何かしら、エレノア」
「今回の対価は、どうしましょう?」
「対価?」
「ええ。こちらの希望を融通していただくための見返りです」
「ああ」
リゼットが頷く。
「お金じゃダメなのかしら?」
「今回は国で定められた物もあるようですので、それなりの要求をされるかと」
「そうね……」
リゼットは少し考える。
「まず、EVは求められるわね」
「でしょうね」
「そして実演してみれば、ヒロバト」
「ヒロバトですか?」
ビアンチが確認する。
「ええ。ただし、ヒロバトだけじゃないわ」
リゼットが続ける。
「モンバトもね」
「モンバトはただのおもちゃと思っているだろうけど 異常なゲームよ。モンスターの索敵機能。それの方が、モンスター討伐に関わる者には大事なのよ」
「ああ、なるほど」
ビアンチが頷く。
「ニコラはいつの間にかその機能付いていたみたいで後で驚いてたけれど。」
「え?自分で作って驚いてたんですか?」
エレノアが少し驚く。
「ええ。いつの間にモンスターを探すレーダーはついてたみたいだけどどうつけたか忘れたらしいわ……あの子、興味を持った発明品は本当に訳がわからない性能になるわね」
リゼットが苦笑する。
「他にはビアンチ。何があるかしら?」
「そうですね……」
ビアンチが考える。
「エキドナ製の武器、防具も候補ではないでしょうか?」
「確かに」
「他には魔道具などもありますね」
ビアンチが続ける。
「ゲンナイさんの地球の知識を使った、誰でも仕組みを理解しやすい発明品なども有力だと思います」
「じゃあ、こちらもそれを武器にしましょう」
リゼットが笑う。
「まずは手土産に、ヒロバトでもあげればいいんじゃないかしら」
「ヒロバトですと、高すぎるのでは?」
ビアンチが少し心配そうにする。
「大丈夫よ?」
リゼットはあっさり答えた。
「ヒロバトなんて、データの方が大切なのだから」
「データ?」
「本体なんて、モンバト程度の子供のおもちゃくらいの値段で買えるわよ。素材なんてモンバトと同じなのだから」
「そうですね」
「人間データのやり取りがあるから、購入者にはしっかりとした知識のある者に扱ってもらうために、あの値段なのよ」
「……なるほど」
「当たり前でしょう?」
リゼットは少しだけ真面目な顔になる。
「子供があっちこっちに契約交渉に向かって、断られて悲しむなんて見たくないもの」
「……リゼット様らしいですね」
エレノアが微笑む。
「モンバトだと、データは比較的安いですからね。子供でも買えます。」
ビアンチも頷く。
「では今回は、エキドナの方のデータを付けて献上品に?」
「そんなことする必要ある?」
リゼットが即答した。
「私たちは流通させる権利を買うだけよ。お金もちゃんと払うのだから」
「それはそうですね」
「エキドナのメンバーのデータなんて、お金に変えられないわ」
リゼットはきっぱりと言う。
「だから付けないわよ」
「では、どうします?」
「そっちで強者のデータを用意なさいな」
「和の国側で?」
「ええ」
リゼットが頷く。
「この国には、私たちが知らない強者がいくらでもいるでしょう?」
「なるほど」
エレノアが納得したように頷く。
「それなら、和の国側にとっても価値がありますね」
「ふふ、そうですわね」
クリスティーナも微笑む。
「ヒロバトは、限りなく本人を模倣できますもの」
「サムライにとっては、充分な対価になると思いますわ」
「それに――」
リゼットが楽しそうに笑う。
「自分たちの強者を再現して戦わせられるなんて、和の国の人たちが興味を持たないはずがないもの」
「確かに」
エレノアも頷く。
「では、こちらの希望を伝えつつ、エキドナの商品と技術を提示する」
「そういうことね。そちらは生地や刀の技術を教えてもらう。ただし流通は少し条件が必要ね。エキドナ内でだけ高級品を装備や服飾で使用できる。和の国ではエキドナの商品は制限しないわ。」
リゼットが答える。
「お金だけで解決できないなら、こちらも『お金では買えないもの』を出せばいいのよ」
こうして、一行は和の国の城へ向かう。
今回の交渉で、何を得て、何を渡すことになるのか。
その話は、これから始まるのだった。




