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落内円は落ちている  作者: 七風


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町の観光

 和の国へ到着したエキドナ一行。


 道場へ向かう者たちと、町を見て回る者たちに分かれた後――。


 町の通りを歩いていたナナリーが、突然足を止めた。


「……あ!」


「どうしたの?」


 ヒナタが振り返る。


「これ!」


 ナナリーが指差した先には、色とりどりのかんざしが並んでいた。


「かんざし?」


「うん! これ、お土産によくない?」


 店先には、かんざしだけではなく、櫛や巾着袋、小さな髪飾りなども並んでいる。


「確かに可愛いですね」


 セシリアも商品を手に取る。


「こういうものなら、普段使いもできそうです」


「ですよね!」


 ナナリーは次々と商品を見ていく。


「これマドカに似合いそう!」


「マドカ様の分も買っておきましょうか」


「うん!」


 ヒナタも並んでいる品を眺める。


「こういうの、日本にもあったなぁ」


「やっぱり?」


「うん。もちろん細かいところは違うけど」


 そんな会話を聞いていた周囲のエキドナメンバーも、興味深そうに商品を見る。


「ヒナタさんやナナリーさんの故郷にも、こういうものがあったんですか?」


「似たものはね」


「面白いですね」


 そのまま一行は、別の店へと向かう。


 和の国には、食べ物から衣類、装飾品、日用品まで様々な店が並んでいた。


「おお……」


 そして、ひときわ大きな店の前で一行が足を止める。


「こちらは?」


「エチゴ屋です」


 案内をしてくれている和の国の者が答える。


「エチゴ屋?」


「和の国では有名な高級店です。何か欲しいものがあるなら、とりあえずここへ行けば大体揃う、と言われています」


「大体?」


「ええ。もちろん、何でもというわけではありませんが」


 中へ入ると、確かに様々な商品が並んでいた。


 衣類、装飾品、食器、生活用品、土産物。


「本当に色々ありますね」


 セシリアが店内を見回す。


「これなら、お土産を探すのにも困りませんね」


 その言葉に反応したのはナナリーだった。


「じゃあ、浴衣もある?」


「もちろんございます」


「じゃあ見たい!」


 店員に案内され、浴衣が並ぶ一角へ向かう。


 色も柄も様々だ。


「わぁ……!」


 ナナリーが目を輝かせる。


「これ、着てみたい!」


「浴衣ですね」


 ヒナタも懐かしそうに眺める。


「日本でもこういうの着たなぁ」


「じゃあ、せっかくだしみんなで着てみませんか?」


 誰かがそう言った。


「いいですね」


「面白そう」


「私は甚平にしようかな」


 男性陣の方では、甚平が並んでいる。


「これなら楽そうだな」


「普段着にもできそうですね」


 こうして、観光に来ただけだった一行は、気付けば浴衣や甚平を選び始めていた。


 さらに巾着袋や櫛、かんざしなども次々と買い物かごへ入っていく。


「……結構買いましたね」


 セシリアが荷物を見る。


「旅行ですから!」


 ナナリーは満足そうだった。


 その一方で、店内の別の場所では――。


「…………」


 ニコラが、一体の絡繰り人形をじっと見つめていた。


「…………」


 動かない。


「ニコラ?」


「で~?」


「行きますよ?」


「まだ見る~」


「……そうですか」


 セシリアは諦めた。


 ニコラは絡繰り人形の動きをじっくり観察している。


「どういう仕組みなんだろう……」


 珍しく、かなり興味を持っているようだった。


 その近くでは、カトリーヌが生地を見ていた。


「この織り方は……」


 手に取って、表面を確認する。


「こちらの生地は何というものですか?」


「こちらは――」


 店員が説明を始める。


「なるほど」


 カトリーヌは真剣に話を聞いている。


 しかし、店員から一つ注意を受けた。


「ただし、こちらの種類の生地は許可が必要になります」


「許可?」


「はい。和の国では、特定の生地については誰でも自由に購入できるわけではありません」


「そういう決まりがあるんですね」


「ええ」


 カトリーヌは納得したように頷いた。


「では、一般に購入できるものを見せていただけますか?」


「もちろんです」


 一方――。


「刀もあるな」


 グレタが足を止めた。


 店の一角には、和の国の刀が展示されている。


「……綺麗」


 形状、刃、柄、鞘。


 グレタは一本一本をじっくり眺めていく。


「これは購入できるのか?」


「刀については許可が必要になります」


「なるほど」


 グレタは素直に頷いた。


「作り方も気になるな」


「それについては、また別の機会に調べることができるでしょう」


「そうだな」


 グレタは刀から目を離さなかった。


 その頃――。


「うどん!」


「そばもあるよ」


「天ぷらも!」


 食事処の前では、ナナリーたちがまた騒いでいた。


「全部食べるの?」


 ヒナタが呆れる。


「せっかく来たんだから食べなきゃ!」


「そういうものなのかな……」


 結局、一行はうどん、そば、天ぷらなどを注文する。


「……おいしい」


 ヒナタが一口食べて呟く。


「日本のものと似てる?」


「うん。でも、やっぱり少し違う」


「どこが?」


「説明するの難しいなぁ」


 ナナリーは既に天ぷらを食べている。


「これも美味しい!」


 さらに店を出れば、今度は団子が売られている。


「団子!」


「また食べるの?」


「おやつは別!」


「別なんだ……」


 その隣では、せんべいを見つけた者もいた。


「これも美味しそうですね」


「買って帰りましょう!」


 気付けば食べ歩きまで始まっていた。


 エキドナの一行は、それぞれ好きな場所へ散らばっている。


 食べ物を見る者。


 装飾品を見る者。


 服を見る者。


 生地を調べる者。


 絡繰り人形から動かない者。


 刀を眺め続ける者。


 それぞれが、自分の興味のあるものを好き勝手に見て回っていた。


「……皆さん、楽しそうですね」


 セシリアがそんな一行を眺めて微笑む。


「はい」


 ヒナタも笑った。


「こういう旅行も、いいね」


「うん!」


 ナナリーが団子を片手に頷く。


「まだ見てないところ、いっぱいあるよ!」


「今日は一日で全部見るつもりなの?」


「もちろん!」


「無理だと思うよ」


「じゃあ明日も見ればいいじゃん!」


「……それもそうだね」


 和の国へ来た初日。


 エキドナの一行は、さっそく思い思いの時間を楽しんでいた。


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