お兄ちゃんの知り合い
そして数日後。
王都にあるニコラの屋敷で、顔合わせをすることになった。
この屋敷は、かつてエキドナが王都に拠点を置いていた頃の施設だった。
現在はエキドナと王都を繋ぐ転移地点として使われることが多く、ゴールへ向かうのも一瞬だった。
待ち合わせの日。
マドカたちが屋敷へ着くと――
「おーっほっほ!」
派手なローブ。
そして大きな魔女帽子。
見るからに目立つ女性が、勢いよく声を上げた。
「あら!?」
女性はマドカを見るなり、さらに目を輝かせる。
「あらあら!?」
「……?」
「マドカちゃんですわね!」
女性がずいっと近づいてくる。
「初めまして! スーローリー侯爵家のビアンカですわ!」
「おーっほっほ!」
もう一度、高笑い。
「お見知りおきくださいませ?」
「マドカ・ノイティスです」
マドカも笑顔で一礼する。
「今日はよろしくお願いしますね!」
「まぁまぁ!」
ビアンカが嬉しそうに笑う。
「そんなに緊張しなくても~」
「あ」
そして突然、鞄を開ける。
「お菓子食べます?」
「え?」
「マドカちゃんに会えるということなので、仕事ほっぽって来ましたわぁ!」
「…………」
マドカが一瞬、黙る。
そしてルーデウスを見る。
ルーデウスもビアンカを見る。
「……あ」
マドカが小さく呟いた。
「この人、絶対面白い」
「だろ?」
クライスが笑う。
「確かに配信映えしそうな人だね~」
ニコラも眠そうに頷く。
「まぁ!」
ビアンカがニコラを見る。
「博士!」
「ん~?」
「ヒロバト買いましたわぁ~!」
「ああ~」
ニコラが頷く。
「あれのおかげで魔法師団の演習、すっごい捗ってますわっ!」
ビアンカは嬉しそうに話し始める。
「本人が魔法を使わずに訓練させることができるんですものっ!」
「革命ですわー!」
両手を広げる。
「まあ、避ける練習にはなるよね~」
ニコラは相変わらず眠そうだった。
「そうですわ!」
ビアンカが勢いよく頷く。
「実戦形式の訓練が、安全に何度でもできますもの!」
「へぇ……」
マドカも興味深そうに聞いている。
すると。
「そして~」
ニコラが周囲を見回す。
「ん~?」
「あ~?」
少し考える。
「いた気がする~」
「……?」
「名前なんだっけ~」
「ま、また忘れたの!?」
クライスが思わず声を上げる。
「ニコちゃん!」
そのとき、屋敷の奥から声がした。
「僕はエジソンだって!」
メガネをかけた青年が現れる。
まだ十九歳ほど。
眠そうなニコラとは対照的に、目を輝かせながら何かを大事そうに抱えている。
「今日はニコちゃんが来るって先輩が言うから、自慢のレーザーガンを持って来たんだよ!?」
「レーザーガン?」
マドカの目が輝く。
「なにそれ!?」
エジソンは嬉しそうに胸を張る。
「これ!」
手にしていた装置を見せる。
「僕が作ったんだ!」
ルーデウスが少し身を引く。
「……大丈夫なのか、それ」
「大丈夫だよ!」
「本当に?」
「たぶん!」
「たぶん!?」
クライスが思わず突っ込む。
ビアンカは楽しそうに笑っている。
「まあまあ! 面白そうなものを持ってきましたわね!」
マドカはレーザーガンをじっと見つめる。
「……これ、ダンジョンで使えるの?」
「もちろん!」
エジソンが即答する。
「だから今日は、みんなに見てもらいたくて!」
「なるほど~」
ニコラが装置を見る。
「ちゃんと動くなら、使ってみてもいいんじゃない~?」
「本当!?」
エジソンの顔がぱっと明るくなる。
「うん~」
「やった!」
マドカも楽しそうに笑う。
「これ、絶対面白いじゃん!」
「だろ?」
クライスも笑う。
ルーデウスだけが、少し不安そうに装置を見る。
「……俺、本当にこれでダンジョン行くの?」
「お兄ちゃん」
マドカが笑う。
「大丈夫だよ」
「その言葉、マドカが言うと逆に不安なんだけど……」
こうして。
ルーデウス。
クライス。
マドカ。
そして発明品を抱えたエジソン。
さらに、派手な魔女帽子のビアンカ。
予定していた小さな攻略配信は、いつの間にかかなり賑やかな顔ぶれになっていた。
「エジソン~?」
ニコラがレーザーガンを見る。
「今回、ルー君には結構強い装備を作って渡してあるからね~」
「え?」
ルーデウスが自分の装備を見る。
「威力勝負といこうか~」
「なっ」
エジソンの目が輝いた。
「ニコちゃんの発明品!?」
「うん~」
「見たい! 見せて!」
エジソンが勢いよく身を乗り出す。
「僕のレーザーガンと勝負!?」
「そういうこと~」
「やった!」
エジソンが嬉しそうにレーザーガンを抱える。
「じゃあ僕の発明品の威力を見てよ!」
「まっ!」
今度はビアンカが食いついた。
「博士の新製品ですの!?」
「違うよ~?」
「まあ、ルー君のために作った装備ですのね!?」
「そうそう~」
「興味深いですわっ!」
ビアンカも目を輝かせる。
「さぁ! さぁ!」
「落ち着けって」
クライスが苦笑する。
「まだここ屋敷だからな?」
「そうですわね!」
「納得したのか?」
「はい!」
ビアンカは一瞬だけ大人しくなる。
「……では、場所を移しましょう!」
「全然落ち着いてないじゃん」
ルーデウスが呟く。
マドカはそんな一同を見て、楽しそうに笑っていた。
「これ、配信する前から面白そうだね」
「だろ?」
クライスも笑う。
「俺、ちょっと楽しみになってきたわ」
「俺はちょっと不安なんだけど……」
ルーデウスがため息をつく。
「まあ~」
ニコラが眠そうに笑った。
「ルー君なら大丈夫でしょ~」
「その信頼は嬉しいんだけどな……」
ルーデウスは自分の装備を見た。
「……本当に大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫~」
「即答かよ」
そして。
エジソンは自分のレーザーガンを抱え。
ビアンカは魔女帽子を揺らしながら意気揚々と歩き出す。
「さぁ! 参りましょう!」
「威力勝負だよ!」
「……なんで俺までこんなことに」
ルーデウスだけが、少し遠い目をしていた。
「そうだね~」
ニコラが屋敷の中を見回す。
「まずは~」
少し考えてから、のんびりと言う。
「ここじゃお屋敷壊れちゃう~」
「それはそうだな」
ルーデウスが頷く。
「じゃあ、どこでやる?」
「エジソン、ヒロバトは~?」
「もちろん!」
エジソンが即答する。
「ニコちゃんの発明だからね!」
「買ってるに決まってる!」
「えらいえらい~」
ニコラが満足そうに頷く。
「じゃあ、そのレーザーガン装備した幻影を出して~」
「え?」
エジソンが目を丸くする。
「でも、それじゃ威力がわからないじゃないか!」
エジソンがレーザーガンを抱きしめる。
「僕の自信作なんだよ!?」
「ん~?」
ニコラは少し考える。
「じゃあ~」
眠そうな目をエジソンへ向ける。
「私の幻影と勝負して、勝てれば認めてあげる~」
「えっ」
エジソンの目が輝いた。
「ニコちゃんの幻影と!?」
「うん~」
「それならやる!」
ルーデウスが少し心配そうに口を挟む。
「ニコラさん」
「ん~?」
「あくまでも幻影同士の勝負なんだな?」
「そうだね~」
ニコラが頷く。
「一発でも当てたら~」
少しだけ笑う。
「私の負けでいいよ~?」
「わかった!」
エジソンは嬉しそうに頷いた。
「じゃあ、発明品の持ち替えもできるんだよね?」
「レーザーガンだけじゃない?」
「うん~」
「じゃあ、好きなだけ使っていい?」
「好きなだけ使いなよ~」
ニコラはあっさり答える。
「持ち替え装備、登録できるでしょ~?」
「できる!」
エジソンが嬉しそうに答える。
そのやり取りを聞いていたビアンカの目が、どんどん輝いていく。
「まっ!」
突然、大声を上げた。
「盛り上がってきましたわあああ!」
「うわっ!?」
クライスが驚いて振り返る。
「博士とエジソン君!」
ビアンカが両手を広げる。
「発明品対決!」
「配信しますわあああ!」
「えっ!?」
エジソンが固まる。
「これを配信するのか!?」
「もちろんですわ!」
「いや、でも!」
エジソンが慌てる。
「僕、まだ何を使うか決めてないよ!?」
「それも含めて面白いんじゃない?」
マドカが楽しそうに笑う。
「発明品対決なら、配信向きだと思う」
「マドカちゃんまで!?」
「だって見たいもん」
「…………」
エジソンはレーザーガンを見る。
そしてニコラを見る。
「……絶対負けたくない」
「ふふ~」
ニコラは眠そうに笑った。
「頑張ってね~」
その隣では、クライスがすっと手を上げる。
「えっ!」
ビアンカが振り向く。
「俺、俺に司会やらせてくれ!」
「お前、配信したかっただけじゃないのか?」
ルーデウスが呆れる。
「いいじゃん!」
クライスが笑う。
「これなら俺も参加できる!」
「確かに」
マドカも頷く。
「クライスさん、司会向いてそう」
「だろ?」
「よくってよ!」
ビアンカが胸を張る。
「おーっほっほ!」
「決まりだな!」
クライスが嬉しそうに笑った。
「よし!」
こうして――
本来はルーデウスたちの弱いダンジョン攻略配信を予定していただけだったはずが。
その前に。
ニコラとエジソンによる、発明品対決が配信されることになった。




