配信 装備お披露目
エキドナの訓練場。
ガイルがEVに向かって話していた。
「皆さん、今日はチヨさんとナツメさんの新しい装備を試してもらいます」
その隣には、チヨとナツメ。
二人の装備は、以前とは少し変わっている。
「まずはチヨさんからですね」
「……うん」
チヨが刀を抜く。
柄に組み込まれた魔宝玉へ魔力を流す。
次の瞬間。
刀身に青白い雷が走った。
「おお……」
ガイルが少し驚く。
「雷魔法を刀に付与できるようになっています」
チヨが刀を軽く振る。
バチッ、と雷が弾けた。
『……来たか』
『お?』
『ついに目覚めたか』
『何がだよw』
『あの雷を見て分からないのか?』
『お前は何を知ってるんだw』
『まだ言えない』
『言えよww』
『あれはまだ本当の力じゃない』
『なんで分かるんだよw』
『刀身を見れば分かる。今はまだ眠っている』
『誰かこの人止めろwww』
ガイルがコメント欄を見る。
「……なんか、やべぇのが沸いてますね」
ナツメが覗き込む。
「なにこれ?」
「……分からない」
チヨも首を傾げた。
『選ばれし者が雷を纏わせる時、必ず前兆がある』
『急に世界観を作るなw』
『雷だけではない』
『え?』
『炎も来る』
『お前、ナツメの装備知ってるのか!?』
『ふっ……』
『なんだよその「ふっ」はww』
そのとき。
幻影ムサシが動いた。
「来ます!」
ガイルが声を上げる。
幻影ムサシが一気に距離を詰める。
チヨが刀を構えた。
雷をまとった刀と幻影ムサシの刀がぶつかる。
何度か打ち合う。
チヨは攻撃を受け流しながら、雷をまとった刀を振る。
「……!」
幻影ムサシが避ける。
そこへナツメが弓を構えた。
「次は私!」
弦を引く。
矢をつがえていない。
それでも弓には炎が集まっていく。
「えいっ!」
放たれた炎が、矢のように飛んでいった。
『来た』
『来たぞ』
『炎だ』
『やっぱり炎だったか……』
『お前ら何なんだよwww』
『雷と炎……』
『まさか……』
『双星が揃った』
『始まったな』
『何が始まったんだよw』
『片方だけでは足りない』
『二つの力が交わる時、封じられていた力が――』
『誰か止めろwww』
『まだ早い!』
『何がまだ早いんだよ!』
『ムサシが相手では、今の二人では勝てない』
『急に冷静なこと言うなw』
『だが、あの二人ならいずれ辿り着く』
『どこにだよww』
ガイルが思わず笑ってしまう。
「いや、皆さん……本当に何の話をしてるんですか?」
『ガイルさん、知らないのか?』
「え?」
『これは始まりに過ぎない』
『ガイルさんもいずれ知ることになる』
『その時が来れば分かる』
「いや、俺も知りたいんですけど……」
ナツメがコメント欄を見る。
「姉様、私たち何かすごいことになってる?」
「……分からない」
「本人たちが分かってないの草w』
幻影ムサシが再び襲いかかる。
チヨが受ける。
ナツメが炎を放つ。
二人が連携して攻撃すると、幻影ムサシが一歩下がった。
「……!」
チヨの目が少し見開かれる。
「押せる……」
「姉様、今!」
二人が一気に踏み込む。
『来たぞ』
『ここだ』
『二人の力が重なる!』
『雷と炎が交わるぞ!!』
『まだだ!』
『何が!?』
『今はまだ時ではない!』
『お前は誰なんだよwww』
『見える……俺には見えるぞ……』
『何が見えてるんだよw』
『この二人の先にあるものが……』
『病院紹介してやれwww』
だが。
幻影ムサシが一気に踏み込んだ。
「えっ!?」
「わっ!」
二人の攻撃が弾かれる。
チヨとナツメが後ろへ飛ばされた。
幻影ムサシは構えを崩さない。
「……強い」
チヨが立ち上がる。
「うん。でも、ちょっとだけ押せたよ!」
ナツメも笑う。
コメント欄が一気に流れる。
『……見たか?』
『ああ』
『確かに一瞬、押した』
『幻影ムサシをだぞ?』
『あのムサシを?』
『これは本当にすごい』
『F判定とは一体』
『もうギルドの話はいいだろw』
『いや、今の見たら普通に実力者だわ』
『雷の刀も炎の弓もすごいけど、それを使いこなしてる本人たちがヤバい』
『この二人、剣聖の弟子ってだけじゃないな』
そして。
『……だが』
『え?』
『まだ、あの二人は本気を出していない』
『おい』
『お前まだやるのかwww』
『俺たちはその時を待つ』
『勝手に待ってろwww』
ガイルが吹き出す。
「いや、もう最後までそのノリなんですね」
ナツメも笑う。
「なんなの、この人たち」
「……面白い」
チヨが小さく呟いた。
『チヨちゃん今「面白い」って言ったぞ!』
『選ばれし者が我々を認めた……』
『お前らもうダメだろwww』
今日の配信は。
新しい武器のお披露目以上に、コメント欄の妙な盛り上がりが印象に残る配信となった。




