姉妹 エキドナへ
「リゼット様!」
エキドナの屋敷に入るなり、ムサシが声を上げた。
「あなた、また弟子を増やすの?」
リゼットが呆れたようにムサシを見る。
「まだ弟子とは決まっておりません。ですが、候補ではありますぞ」
ムサシがそう言うと、後ろにいた二人の少女が一歩前に出た。
「和の民のチヨと申します」
「妹のナツメです」
二人がそれぞれ頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「よろしく」
リゼットが二人を見る。
「なるほどね。二人ともかなり強そうだけど……ムサシ、今度はどういう経緯なの?」
「ギルドへ登録に行ったところ、面白いことになりましてな」
ムサシが先ほどの出来事を話し始める。
和の国には冒険者ギルドがなく、修行の旅に出た者が外の世界で実力を示すには、冒険者ギルドへの登録が一番分かりやすい。
だが、登録した二人のランクはF。
実力とはあまりにもかけ離れた結果だった。
「それで、登録する前にヒロバトで二人の実力を見ていたのです」
「なるほど」
リゼットが頷く。
「十分に強い。ワシの弟子候補として連れてきても問題ないと思いましてな」
「そういうことね」
その横で、チヨが少し考えてから口を開く。
「……ここで、修行を?」
「そうだな。ダンジョンにも行けるぞ」
「ダンジョン……」
チヨは少し考える。
「……強くなれそう」
「エキドナなら、ダンジョンで取った素材も買い取ってくれる」
ガイルが説明すると、ナツメが反応した。
「じゃあ、ギルドに登録しなくてもいいの?」
「そういうこと」
「それならこっちの方がいいじゃん」
ナツメがあっさり言う。
チヨも少し考えてから頷いた。
「……うん。私も、その方がいいかも」
ムサシが満足そうに頷く。
「では、決まりですな」
「部屋なら用意できるわよ」
リゼットが言う。
「本当ですか?」
ナツメの顔が明るくなる。
「ええ。しばらくエキドナで暮らせばいいわ」
「ありがとうございます!」
チヨも頭を下げる。
「……ありがとうございます」
「ただし、タダで泊めるつもりはありませんぞ」
ムサシが持ってきた素材を取り出す。
「ダンジョンの素材を納めます。二人の装備を作るための素材も集めてまいりますぞ」
リゼットが素材を見る。
「これ、宿代には多すぎるわよ」
「そうでしょうな」
「だったら、装備に使いましょう。二人とも、今の装備だけじゃもったいないでしょう?」
ナツメが目を輝かせる。
「専用の装備、作ってもらえるの?」
「ええ。グレタやニコラにも相談してみましょう」
チヨは自分の腰にある刀へ視線を落とす。
「……私の刀も?」
「もちろん」
「……私の刀……相談できるといいけど……」
ムサシが笑う。
「そこは心配いらんぞ。エキドナには腕のいい職人が揃っておるからな」
その時だった。
屋敷の奥から、マドカがこちらへやってくる。
「お姉ちゃん、誰か来てるの?」
「マドカ。ちょうどいいところに来たわ」
リゼットが二人を紹介する。
「こちらはチヨとナツメ。ムサシの弟子候補よ」
「こんにちは!」
マドカが二人を見る。
「初めまして。マドカ・ノイティスです。よろしくね、チヨさん、ナツメさん」
「よろしくお願いします、マドカちゃん」
ナツメがすぐに返す。
一方、チヨはマドカをじっと見ている。
少し考えてから、ぽつりと呟いた。
「……マドカ殿」
「うん?」
「……かわいい……」
「え?」
マドカが目を丸くする。
ナツメが吹き出した。
「姉様、いきなりそれ?」
「……そういうのでは……ない……」
チヨは少し顔を赤くしながら答える。
「でも、ずっと見てるじゃん」
「……」
チヨは否定せず、もう一度マドカを見る。
マドカが笑った。
「チヨさん、なんかかわいいね」
「……っ」
チヨの顔がさらに赤くなる。
「ほら、完全に気に入ってる」
「ナツメ……」
「なに?」
「……なんでもない」
ムサシがその様子を見て笑う。
「まあ、仲良くなれそうで何よりですな」
「そうだね!」
マドカも嬉しそうに頷く。
「せっかくだし、二人の装備も見てもらううよ!」
「装備?」
ナツメが反応する。
「うん。グレタ、ニコラ、カトリーヌに相談してみよう」
「そんなに職人がいるの?」
「いるよ。グレタは武器とか防具、ニコラは魔道具や機械関係。カトリーヌは服とかね」
「へえ……」
ナツメが自分の弓を見る。
「私の弓も強くできるかな」
「もちろん。今の形を活かす方法もあると思うよ」
チヨは自分の刀を見る。
「……これは、変えたくない」
「うん」
マドカはすぐに頷いた。
「じゃあ、それを前提に考えよう。エキドナって、そういうの得意だから」
「……ありがとう」
チヨが小さく頭を下げる。
「まずはグレタから!」
マドカが二人を連れて歩き出す。
ナツメもすぐについていく。
「姉様、行くよ」
「……うん」
チヨも少し遅れて歩き出した




