ムサシ 姉妹と出会う
ムサシは、久しぶりに見た姿に目を丸くしていた。
長い黒髪。
腰に差した刀。
そして、その立ち姿。
「……まさか」
隣にいたガイルも、ムサシの様子に気づく。
「師匠?」
「いや……」
ムサシは目の前の少女をじっと見る。
見間違えるはずがない。
もちろん、ムサシが知っているのは実際の姿ではない。
三百年ほど前から山に籠もっていたムサシにとって、それは昔から聞いていた話に過ぎなかった。
この世界には、日本のような文化を持つ者たちがいる。
刀を使い、独自の文化を守って暮らしている――。
そんな噂。
それが、目の前にいる。
「……和の民、ですかな?」
少女は少し考えるように間を置いた。
「…………はい」
「やはり!」
ムサシの顔がぱっと明るくなる。
「これは驚きましたな! 本当におったとは!」
「師匠、噂では知っていたんですよね?」
「知っておりましたとも。しかし、実際に会うのは初めてですぞ」
ガイルが二人を見る。
「それで、この二人は?」
「姉がチヨ、妹がナツメです」
ナツメが答える。
チヨはその隣で、少し遅れて頭を下げた。
「……チヨです」
「ナツメです」
「これはこれは。ムサシと申します。そしてこちらが弟子のガイルですぞ」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
簡単に挨拶を交わす。
ムサシは改めて二人を眺めた。
刀を持っている。
それだけではない。
先ほどヒロバトで見せた動き。
あれは、ただ刀を持っているだけの者には到底できない。
特に姉のチヨ。
あの戦い方には、長い修練を積んだ者特有のものがあった。
「しかし……」
ムサシが首を傾げる。
「お二人は冒険者ですかな?」
「いえ」
「まだ登録してません」
「む?」
ムサシが目を瞬かせる。
「では、なぜギルドに?」
「冒険者登録をしに来たんです」
「なるほど」
ムサシは頷く。
そこで少し考える。
「……それなのに、先にヒロバトへ?」
「そうなりました」
ナツメが苦笑する。
「登録する前に、あれがあったので」
「なるほどなるほど」
ムサシは納得した。
つまり、二人はまだ冒険者ではない。
これから登録するところなのだ。
「では、和の国からこちらへ来た理由は、冒険者になるためですかな?」
「はい」
今度はチヨが答える。
「和の国では、年頃になると……」
一度考える。
「……外へ修行に出ることになっています」
「ほう」
ムサシが興味深そうに聞く。
「外の国へ出て、修行を?」
「そうです」
ナツメが続けた。
「和の国には冒険者ギルドがないので。外の世界で自分の実力を知るには、冒険者ギルドのランクが一番分かりやすいんです」
「なるほど」
ムサシは腕を組む。
昔から聞いていた和の民。
その文化が、こうして実際の言葉として聞ける。
それだけでも面白い。
「では、これから冒険者登録をするわけですな」
「はい」
ムサシは二人を見る。
そして、ふと笑った。
「それなら――」
二人の実力を思い出す。
「よければ、配信で流してもよいですかな?」
「…………」
チヨが止まった。
「配信……って……何?」
本当に知らないらしい。
ムサシも一瞬固まる。
「え?」
するとナツメが、
「あ、聞いたことあるよ!」
と声を上げた。
「そこにいる様子を、みんなが見るんだよ!」
「そうですな」
ムサシが頷く。
「そういうものですぞ」
チヨは少し考える。
「…………なるほど」
どうやらまだよく分かっていない。
だが、ムサシは気にせず続けた。
「見たところ、お主らはすでに相当な使い手であろう?」
二人は黙る。
「この冒険者ギルドでは、下っ端から積み上げなければ、何年と実力が認められないようであるな」
「それは……」
ナツメが少し困った顔をする。
「……面倒」
チヨも少し考えてから、
「…………面倒」
と続けた。
ムサシは豪快に笑った。
「はっはっは! でしょうな!」
そして二人に向かって笑顔を見せる。
「なので、まぁ――」
ムサシは胸を張った。
「こちらに任せてくだされ」




