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落内円は落ちている  作者: 七風


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お兄ちゃんVS幻影

「お兄ちゃん」


「ん?」


 ダンジョンへ向かう準備をしていたルーデウスに、マドカが声をかけた。


「ダンジョン行く前に、誰かの幻影と勝負してみたら?」


「幻影?」


「ヒロバトのやつ」


「ああ、あれか」


 ルーデウスは少し考える。


「俺がエキドナの人達のデータと?」


「うんうん」


「……」


 ルーデウスの目が、訓練場に置かれたヒロバトへ向く。


「これに、エキドナ全員分のデータが入ってるのか?」


「そうだよ」


「全員?」


「うん」


 マドカが何でもないことのように答える。


「私も、お姉ちゃんも、ヒナタも、アリシアも、エレノアも、ブリジットも――」


「……」


「ムサシもいるよ」


「……」


 ルーデウスは、ヒロバトをじっと見つめた。


「これ……」


「ん?」


「売ったら国も買えそうなのだが」


「え?」


 マドカが首を傾げる。


「そんな価値ある?」


「いや、あるだろ!」


 ルーデウスが思わず声を上げる。


「エキドナの最高戦力を、本人と安全に戦える形で再現してるんだろ?」


「うん」


「しかも、何度でも戦える」


「うん」


「普通に考えたら、とんでもない価値だぞ……」


 ルーデウスは改めてヒロバトを見る。


 エキドナの戦闘データ。


 それを自由に訓練へ使える。


 しかも本人を傷つけることなく、何度でも挑戦できる。


「……」


 そして、ふと気づく。


「あ」


「どうしたの?」


「本当に、あるかもしれない」


「何が?」


「国が買えるくらいの価値」


「……」


 マドカは少し考える。


「でも、売らないよ?」


「そうだろうな!」


 ルーデウスは即答した。


「そもそも、俺が値段を考えること自体がおかしかった」


「そう?」


「そうだよ」


 ルーデウスはため息をついた。


「で?」


 マドカがヒロバトを操作する。


「誰と戦う?」


「誰でもいいのか?」


「うん」


「じゃあ……」


 ルーデウスは少し考えた。


「まずは、アリシアさんで」


「アリシア?」


「銃を使うんだろ?」


「そうだね」


「俺、実際に銃を使う相手と戦ったことないから」


「なるほど」


 マドカがデータを選択する。


「じゃあ、アリシア!」


 ヒロバトが起動する。


 光が集まり――。


 訓練場に、アリシアの幻影が現れた。


「……」


 ルーデウスが息を呑む。


 そこにいるのは、本人とほとんど変わらない姿。


 銃を構え、静かにこちらを見ている。


「これが……アリシアさんの幻影」


「うん」


「……本当に本人みたいだな」


「じゃあ、始めるよ?」


「お、おう」


 ルーデウスが剣を構える。


 そして――。


 アリシアの幻影が、銃を構えた。

 アリシアの幻影が、訓練場の中央で銃を構えた。


「……」


 ルーデウスも剣を構える。


「これ、本当にアリシアさんなんだよな?」


「うん」


 マドカがヒロバトの画面を確認する。


「今のデータだよ」


「なるほど……」


 ルーデウスは少し息を吐く。


「じゃあ、行くぞ」


「始め!」


 合図と同時に、アリシアの幻影が動いた。


 銃口が上がる。


「――っ!」


 パンッ!


 乾いた音が響く。


 ルーデウスが慌てて横へ飛んだ。


「危なっ!」


 床に塗料が飛び散る。


「今の、魔法弾か?」


「そうだよ」


「……速いな」


 ルーデウスが剣を構え直す。


「でも、距離を詰めれば――」


 走る。


 アリシアの幻影が後退する。


 さらに一発。


 ルーデウスが避ける。


 二発。


 三発。


「くっ……!」


 前へ進もうとするたびに、弾が飛んでくる。


「近づけない……!」


 アリシアの幻影は無駄に動かない。


 ルーデウスの進路を予測し、逃げ道を潰すように撃ってくる。


「……」


 マドカが黙って見ている。


 リゼットも特に口を挟まない。


 ルーデウスは必死に距離を詰める。


「ここだ!」


 ようやく間合いに入った。


 剣を振り下ろす。


 しかし――。


 アリシアの幻影が身体を捻る。


 紙一重で避けた。


「なっ――」


 そのまま銃口が向く。


 パンッ!


「うわっ!」


 ルーデウスの胸に塗料が付着した。


「終了」


 幻影が消える。


「…………」


 ルーデウスは、自分の胸についた塗料を見た。


「……負けた」


「うん」


 マドカが頷く。


「負けたね」


「いや、分かってるよ」


 ルーデウスは苦笑する。


「でも、ここまで一方的とは思わなかった」


「アリシア強いからね」


「それは知ってるけど……」


 ルーデウスがヒロバトを見る。


「幻影って、本当に本人と同じなんだな」


「そうだよ」


「なら……」


 ルーデウスが少し考える。


「他の人ならどうだ?」


「誰?」


「例えば、もっと戦い方が違う人」


 マドカが少し考える。


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