オーク肉パーティー
エキドナの屋敷。
転移陣が光った。
「母さん!」
勢いよく転移してきたのは、ルーデウスだった。
「え?」
その声に、マドカが振り返る。
「あれ? もう帰って来たの?」
「……え?」
ルーデウスは呆然とした。
「ダンジョンは?」
「もう終わったよ」
「……」
しばらく言葉を失ってから、ルーデウスはクリスティーナを見る。
「母さん、大丈夫?」
「ええ。問題ありませんわ」
クリスティーナは嬉しそうに笑った。
「とても楽しかったですわよ」
「楽しかった……?」
ルーデウスは少し遠い目をする。
「俺、配信見てたんだけど……」
「心配してくれてたの?」
「そりゃ心配するよ!」
ルーデウスが即答する。
「初めてダンジョンに行ったと思ったら、五層でオークの集落に遭遇してるんだぞ!?」
「でも、八十匹くらいよ?私達がいて怪我するはずもないでしょう?」
「八十匹『くらい』!?」
「ええ 多かったですが余裕はありましたね」
「それをどうしたの!?」
「凍らせたわ?ちょっと数が多くて一匹ずつじャ面倒だったの。」
「……」
ルーデウスがクリスティーナを見る。
「全部?」
「ええ」
「一度に?」
「ええ」
ルーデウスは頭を抱えた。
「母さん……」
「何ですの?」
「いや……」
しばらく考えてから、諦めたように息を吐く。
「無事ならいいよ」
「ふふ」
クリスティーナが嬉しそうに笑った。
そこへ、ヒナタが顔を出す。
「おかえりー!」
「ただいま?」
ルーデウスが少し戸惑う。
「お兄ちゃんも来たんだね!」
マドカが嬉しそうに駆け寄る。
「うん。母さんが心配だったから――」
「じゃあ、ちょうどいいや!」
「何が?」
「今からオーク肉パーティーだよ!」
「……え?」
ルーデウスが固まった。
「今日取ってきたオーク、いっぱいあるんだよ!」
「そうそう」
ヒナタも楽しそうに頷く。
「でも八十匹全部は食べきれないから、今日は一部だけ使って、残りは冷凍しておくよ」
「なるほど……」
ルーデウスが屋敷の中を見る。
すでに料理の準備が始まっている。
「……もう宴会の準備まで始まってるの?」
「だって、お肉いっぱいあるんだもん」
「そういうことか」
ルーデウスは苦笑した。
「じゃあ俺も食べるけど――」
一拍。
「トンカツにしてくれよ?」
「トンカツ?」
マドカが首を傾げる。
「うん。オーク肉なら、絶対合うと思う」
「いいね!」
マドカの顔が明るくなる。
「ヒナタ、作れる?」
「もちろん!」
ヒナタが即答する。
「じゃあ、今日の分はトンカツにしよう!」
「やった!」
ルーデウスが少し嬉しそうに笑った。
「……心配して来たはずなんだけどな」
「でも、お肉食べられるよ?」
「それなら来た意味はあったかな」
「ふふ」
クリスティーナがそんな息子を見て笑う。
「では、ルーデウスも座って待っていてくださいな」
「はい、お母さん」
「……」
マドカが二人を見る。
「お兄ちゃん、もう完全にエキドナの人みたい」
「そうかな?」
「うん!」
屋敷の中には、さっそく料理の準備をする音が響き始めた。
今日の夕食は、オーク肉のトンカツ。
残った大量の肉は冷凍保存され、しばらくエキドナの食卓を支えることになる。
初めてのダンジョン探索は――。
クリスティーナにとって、思いがけない大量の食材まで手に入った、楽しい一日となった。




