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落内円は落ちている  作者: 七風


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お母さんの準備

「では、鑑定するわね」


 リゼットがクリスティーナの前に立つ。


「お願いしますわ」


 しばらくして、リゼットが目を細めた。


「……あら」


「どうでした?」


 クリスティーナが尋ねる。


「レベルは三十」


「まあ、普通くらいでしょうか?」


「そうでもないわね」


 リゼットは鑑定結果を確認する。


「魔力A。知力A」


「A……?」


 マドカが横から覗き込む。


「結構高いじゃん」


「ええ。魔法の適性も高いわ」


 リゼットが続ける。


「氷属性との相性がかなり良い。氷魔法を中心に覚えるといいでしょうね」


「氷ですか」


 クリスティーナが自分の手を見る。


「昔から、氷の魔法は得意でしたけれど……」


「それなら納得ね」


 リゼットはさらに鑑定結果を見る。


「それと――特殊能力が一つ」


「何でしょう?」


「カリスマ」


「カリスマ?」


 マドカが首を傾げる。


「魅了とは違うわ。周囲の人間を惹きつける、本人の存在そのものに関係する能力ね」


「それって、私が何かしているわけではないのですわよね?」


「ええ。そういう性質のものよ」


 クリスティーナは少し困ったように笑った。


「昔から、妙に人から声をかけられることが多かったのですが……」


「それでしょうね」


「なるほど」


 マドカが納得する。


「お母さん、昔からモテモテだったんだね!」


「マドカちゃん……」


 クリスティーナが少し恥ずかしそうに笑った。


「ただ、実戦経験はほとんどないわね」


 リゼットが続ける。


「魔力と知力は十分高いけれど、戦い方を知らない」


「それなら――」


 グレタが保管室から持ってきた装備を見る。


「この前マドカが選んだやつを使えばいいんじゃねぇか?」


「あら」


 クリスティーナが装備を見る。


「これですか?」


「ああ。カトリーヌが作ったやつだ。動きやすいし、防御も悪くねぇ」


「魔法銃も合わせればいいわね」


 リゼットが頷く。


「氷属性を使うなら、弾丸に魔力を込める方式にすればいい」


「弾切れは?」


 マドカが聞く。


「魔力から弾を作るようにすればいいでしょう」


「無限じゃん!」


「魔力が尽きなければね」


「そっか」


 マドカが納得する。


「じゃあ、これでいいね!」


「ええ」


 クリスティーナも装備を手に取った。


「とても素敵ですわ」


「じゃあ、準備もできたし――」


 マドカが楽しそうに立ち上がる。


「どこ行こう?」


「ダンジョンでしょう?」


 ヒナタが当然のように答える。


「うん!」


「どこまで?」


 クリスティーナが尋ねる。


「三十層!」


「……」


 クリスティーナが固まった。


「三十層?」


「うん」


「ちょっと待ってくださいませ」


 クリスティーナが両手を上げる。


「三十層はやめておきなさい?」


「え?」


「三十層って、今最終階層認定されているところでしょう!?」


「そうだよ?」


「そうだよ、ではありませんわ!」


 クリスティーナの声が少し大きくなる。


「無理ですわ!」


「でも私達、普通に行けるよ?」


「あなた達と私を一緒にしないでくださいませ!」


 マドカが首を傾げる。


「でも、お母さんも強くなりたいんでしょ?」


「強くなりたいとは言いましたけれど、いきなり世界最難関へ行きたいとは言っていませんわ!」


 ヒナタが横で笑う。


「まぁ、最初は浅いところでいいんじゃない?」


「そうしましょう」


 クリスティーナが即答する。


「まずは一層……いえ、五層くらいまでで十分ですわ」


「五層?」


 マドカが少し考える。


「それくらいなら、すぐ終わるね」


「だから、その基準がおかしいのです!」


「ふふ」


 リゼットが笑った。


「じゃあ、今回は五層程度にしておきましょうか」


「ありがとうございます」


 クリスティーナはほっと息を吐く。


「まったく……」


 そして小さく呟いた。


「この人たちと一緒にいると、常識が壊れそうですわ……」


「もう壊れてると思うよ?」


 マドカが笑った。


「マドカちゃんは少し自覚なさい!」


 屋敷に笑い声が広がった。


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