王城配信質問回
「では、最初の質問です!」
ビアンチがEVの画面を確認する。
『国王陛下は、エキドナのことをどう見ていますか?』
「エキドナか」
トロイは少し考えた。
「まず、エレノアから定期的にエキドナの計画表をもらっている」
『計画表?』
『そんなのあるの!?』
「ええ。今後こういうことをする予定だ、というものだな」
トロイは淡々と続ける。
「その中で、国全体に影響がありそうなものについては、余から少し待ってもらうこともある」
『王様、ちゃんと止めることあるんだw』
『エキドナの予定表を国王が確認してるのか』
「逆に、詳しく聞きたい時は自分でゴールまで行く」
「そういえば、陛下がゴールに来ることもありますものね」
クリスティーナが笑う。
「ああ」
トロイも頷く。
「ただ、ゴールにはしばらく行かない時期もあった」
「それで?」
マドカが興味深そうに聞く。
「久しぶりに行ったら、訳が分からないほど発展していた」
『www』
『王様でもそうなるのか』
『ゴールの発展速度おかしいもんな』
「それを思い知ったのが、一周年祭だ」
トロイは少し遠い目をする。
「あの時の視察で、しばらく見ていないだけでここまで変わるのかと驚いた」
『一周年祭の時点でもうそんな感じだったのか』
『二周年どうなるんだよw』
「正直、二周年は何が出てくるのか少し怖いな」
『王様が怖がってるw』
『エキドナ、国王に警戒されてるぞw』
「そんなに?」
マドカが首を傾げる。
「ああ」
トロイは苦笑する。
「それに、エキドナ関係の配信も確認している」
『やっぱり見てるんだ』
『王様も配信勢だったw』
「特にガブリエルの配信はよく見るな」
「やっぱりガブちゃんなんだ」
マドカが笑う。
「面白かったのは、おかしな村に行った回と――」
一拍。
「道場破りの回だな」
『そこかよwww』
『王様、ガブちゃんの配信めっちゃ見てるじゃん』
『道場破り回好きなの分かるw』
『おかしな村も見てたのかw』
「どちらも面白かった」
トロイは満足そうに頷いた。
「では、次の質問です!」
ビアンチがコメントを拾う。
『クリスティーナ様がマドカちゃんを養女にしたことについて、国王陛下はどう思いましたか?』
「まさか姉上が娘を迎えるとは思わなかったな」
トロイはクリスティーナを見る。
「だが、まぁ不思議ではない」
「そうですの?」
クリスティーナが少し驚く。
「姉上は昔から人に好かれるからな」
「まあ」
クリスティーナが少し照れたように笑う。
「それに、気に入った者は本当に大事に接する」
トロイはマドカを見る。
「だから、マドカの人柄なのだろうな」
『なるほど』
『王様から見てもクリスティーナ様は昔からそうなんだ』
『マドカちゃん、ちゃんと気に入られたんだな』
「お母さん、昔からそうだったの?」
マドカが聞く。
「ああ」
トロイが答える。
「だからこそ、姉上が君を娘にしたと聞いても、そこまで驚かなかった」
「そっか」
マドカは嬉しそうに笑った。
「では、次です!」
ビアンチが続ける。
『マドカさんから、今までどんな無茶ぶりをされたことがありますか?』
「これは色々あるな」
トロイが苦笑する。
「まずはゴールの土地だ」
「ああ」
マドカが頷く。
「王国が開拓を諦めていた土地を、エキドナが買い取った」
『それは知ってる』
『あの広大な土地だよな』
「その時、マドカから聞かれた」
トロイが少し笑う。
「『そこが大きくなったら返せとか言わないよね?』とな」
『www』
『マドカさん、最初からそこ気にしてたのかw』
『確かに王国領だったら将来どうなるか分からんもんな』
「余としては、爵位などを与えることも考えていた」
「いらないって言った!」
マドカが即答する。
『即答w』
『爵位まで断ったのか』
「そこで余は思った」
トロイが少し遠い目をする。
「こいつは面倒だ、と」
『王様www』
『率直すぎるw』
「だが、マドカが欲しかったのは、王国から後になって何か言われることのない、自分達の土地だった」
「うん」
マドカが頷く。
「だから契約関係もしっかり確認した」
『なるほどな』
『爵位も干渉の可能性があるから断ったのか』
「次は王都からゴールへの転移陣だな」
トロイが続ける。
「これも最初は無茶ぶりかと思った」
「でも便利でしょ?」
「便利どころではない」
トロイが苦笑する。
「経済効果が凄まじい」
『やっぱりw』
『王様も効果を実感してるのか』
「ほとんどの流行はゴール産であろう?」
「うん!」
「転移陣があるなら、王都とゴールでほぼ同時に商品を発売することもできる」
「それに王都への観光客も増えましたね」
クリスティーナが付け加える。
「設置費用も、もう回収できるほどでしょう」
「そういうことだ」
トロイが頷く。
「そして、ヒロバトの説明会もあった」
「今ではすっかり有名だが、最初は貴族、騎士団、ギルド、記者――皆、エキドナが何か怪しげなものを売りつけるのではないかと警戒していた」
「そんな時期もあったね」
マドカが懐かしそうに言う。
「そこで、説明会の招待状を余の名で書かされた」
『書かされたw』
『王様に!?』
「エレノア経由だったがな」
トロイが苦笑する。
「王に直接、こうしてほしいと頼んでくる者など、なかなかいないぞ?」
『それはそうw』
『マドカさん王様の使い方が豪快すぎる』
『エレノア姫も大変だなw』
「でも、ちゃんと役に立ったでしょ?」
「結果としてはな」
トロイが笑った。
「だから余も文句はない」
『王様、結局エキドナに頼られてるの嬉しそうw』
「では次の質問です!」
ビアンチがコメントを拾う。
『国王陛下から、マドカさんに何かお願いしたいことはありますか?』
「特にない」
トロイは即答した。
『ないんだw』
『王様、意外とマドカに要求しないな』
「ただ――」
少しだけマドカを見る。
「貴族令嬢として、国の貴族令嬢などに喧嘩を売らないでほしいな」
「……」
マドカが少し考える。
「喧嘩、売ってた?」
「本人に自覚がないのが一番怖いところですわね」
クリスティーナが苦笑する。
『www』
『クリスティーナ様も認めてるw』
『王様のお願いがめちゃくちゃ現実的』
「必要のない揉め事は避けてくれれば、それでいい」
「分かった」
マドカは素直に頷いた。
「気をつける」
「では、ここからはクリスティーナ様への質問です!」
ビアンチがコメントを確認する。
『そもそも、どうしてマドカちゃんを養女にしようと思ったんですか?』
「そうですわね……」
クリスティーナが少し考える。
「最初のきっかけは、ゴールの一周年祭ですわ」
『一周年祭?』
「ええ。あの時、私はエキドナのお屋敷に半月ほど滞在していましたの」
「長かったよね!」
マドカが笑う。
「ええ。そこでマドカちゃんと過ごしていた時――」
クリスティーナが少し笑う。
「この子に『美魔女』と言われましたの」
『美魔女www』
『マドカちゃん、それ言ったの!?』
『クリスティーナ様に!?』
「だって美魔女じゃん」
「ふふ。そういうところですわ」
クリスティーナは嬉しそうに笑った。
「年齢を重ねても若々しく見える女性、という意味だと説明してくれましてね」
「うん」
「私はもう若いとは言えませんから、素直に嬉しかったのですわ」
『これは嬉しいな』
『マドカちゃんの褒め方、独特だけどちゃんと刺さってるw』
「その後、エキドナの配信を見ているうちに、少し心配になりまして」
「私?」
「ええ」
クリスティーナがマドカを見る。
「マドカちゃんは悪気なく、相手を怒らせてしまうことがありますでしょう?」
「……ある?」
「ありますわ」
『即答w』
「でも、皆様の配信を見ていて分かりましたの」
クリスティーナは穏やかに続ける。
「マドカちゃん自身には、誰かを傷つけようという気持ちはほとんどない」
「うん」
「それでも、立場や価値観の違いから、知らないうちに敵を作ってしまう可能性はある」
「だから――」
クリスティーナはマドカを見る。
「私が守ってあげたいと思ったのですわ」
『なるほど……』
『それで養女に』
『ちゃんとお母さんだな』
「次です!」
『クリスティーナ様から見て、マドカちゃんはどんな娘ですか?』
「本当にかわいい娘ですわ」
クリスティーナは迷いなく答えた。
「何より、嫌なことは嫌、できないことはできないと、はっきり言える」
「分かりやすいでしょう?」
「ええ」
クリスティーナが笑う。
「貴族社会では、親の期待に応えようとして無理をする子供も多いのですわ」
「マドカちゃんは、そこを無理しない」
「うん。嫌なものは嫌だもん」
『マドカらしいw』
「そして最近は、私を頼ってくれるようになりましたでしょう?」
「うん」
マドカが頷く。
「お母さん、何でもお願い聞いてくれるし!」
『何でも!?』
『クリスティーナ様大丈夫?w』
「もちろん、ダメなことはダメですわよ?」
「うん。そこも分かりやすい!」
『ちゃんと教育されてるw』
「次です!」
『マドカちゃんが娘になった今、何をしてほしいですか?』
「公の場では、最低限の礼儀作法を覚えてほしいですわ」
「それ以外は?」
マドカが聞く。
「好きになさい」
『自由w』
「劇でもアイドルでも、ダンジョンでも食べ歩きでも」
「やった!」
「ただし――」
クリスティーナが少しだけ真剣になる。
「必要のない喧嘩はしないこと」
「さっき王様にも言われたね」
「ええ」
「気をつける!」
『本当に二人から同じこと言われてるw』
「もし、マドカちゃんに無茶な要求をしてくる方がいたら?」
「その時は私が対応しますわ」
クリスティーナが穏やかに笑う。
「マドカちゃん本人が背負う必要はありませんもの」
『強い』
『公爵夫人の盾だ』
「では最後です!」
ビアンチがコメントを確認する。
『クリスティーナ様にとって、マドカちゃんはどんな娘ですか?』
「規格外、ですわね」
『やっぱりw』
『そこは即答なんだw』
「発想そのものが、私の常識から外れていることがありますの」
「でも、頭はとても良い」
「うん」
マドカが普通に頷く。
『本人が否定しないw』
「そして善良ですわ」
クリスティーナが微笑む。
「ただ、貴族社会であれば普通は、自分の功績を広めて立場を上げようとするでしょう?」
『確かに』
「マドカちゃんは、そういうことをほとんど考えない」
「欲しいから作る」
クリスティーナがマドカを見る。
「面白いからやる」
「うん」
「それだけなのですわ」
「だって、欲しいものがあったら作るじゃん?」
『これぞエキドナw』
『功名心ゼロw』
『クリスティーナ様、完全に娘の性格を理解してるな』
「では、最後にマドカちゃんへの質問です!」
ビアンチがコメントを拾う。
『新しくお母さんができたマドカちゃん自身は、クリスティーナ様をどう思っていますか?』
「お母さんって、何でもお願い聞いてくれるんだよね」
マドカが笑う。
「でも、ダメなことはダメって、ちゃんと教えてくれるから分かりやすいよ」
「危険なことをしたら、配信でもちゃんと注意してくれるし」
『ちゃんと見てたのかw』
「それに、エキドナのことを利用しないって、ちゃんと契約までしてくれたし」
マドカはクリスティーナを見る。
「本当に心配してくれてたんだなって分かった」
「マドカちゃん……」
クリスティーナが少し目を細める。
「それに、他の貴族家だと、娘になってもあまり干渉しないところもあるんでしょう?」
「ええ。そういう家もありますわね」
「でも、お母さんは公爵領のお屋敷とエキドナの屋敷を転移で繋いだじゃん?」
「ええ」
「毎日のように来てくれるし!」
『毎日w』
『距離感がおかしいw』
「私、お母さんみたいな大人になりたいって思ってたから」
マドカが少し照れながら笑う。
「本当に嬉しいよ」
「……」
クリスティーナはしばらく何も言わなかった。
そして、優しく笑う。
「私も、嬉しいですわ」
「では、次の質問です!」
『マドカさん、どうして王様に無茶ぶりするんですか?』
「できるんじゃないの?」
『wwwww』
『出たw』
『それだけ!?』
『マドカ理論w』
「王様なんだから、できるんじゃない?」
「そういう考え方なのね……」
クリスティーナが苦笑する。
「じゃあ、王様に何かしてほしいことは?」
「特にないね」
マドカがあっさり答える。
「自分達である程度できるし」
『強いw』
『王様への要求がないw』
『さっき土地とか転移陣とか頼んでた人とは思えないw』
「では、最後の質問です!」
ビアンチがコメントを見る。
『新しくできた家族について、マドカさんはどう思っていますか?』
マドカは少し考えた。
「お母さんも、お兄ちゃんも優しいし」
「お兄ちゃん?」
ビアンチが聞き返す。
「うん。ルーデウスお兄ちゃん!」
『ああ、公爵家の長男か!』
『ルーデウスさんね』
マドカは少し笑う。
「義理でも大事にしてくれるしね」
そして、素直に言った。
「本当の家族みたいで、あったかいよ」
クリスティーナが優しく微笑む。
トロイも、少しだけ表情を緩めた。
「そうか」
それだけを静かに口にした。
『いい話だ……』
『家族になったんだな』
『マドカちゃん嬉しそう』
『クリスティーナ様も嬉しそう』
「では、本日の質問はこの辺りで――」
ビアンチが締めようとしたところで、コメント欄が一気に流れた。
『まだ聞きたい!』
『王様のエキドナ話もっと聞きたいw』
『二周年祭どうなるのか教えてw』
『クリスティーナ様とマドカちゃんの普段の話も聞きたい!』
『ルーデウスお兄ちゃんの話も頼むw』
「……まだまだありますね」
ビアンチが苦笑する。
「どうします?」
「もう少しなら構わないぞ」
トロイが答える。
「私もまだ時間はありますわ」
「私も!」
マドカが嬉しそうに手を上げた。
「じゃあ、もう少し続けよう!」
こうして――。
王城から始まった三人の特別配信は、予定を大きく超えて、まだまだ続いていくことになった。




