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落内円は落ちている  作者: 七風


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302/601

有料視聴

 ヒロバトが発売されてから、しばらく。


 エキドナでは、いつものように様々な配信が行われていた。


 商品紹介。


 質問配信。


 雑談。


 モンバトの配信。


 ナナリーの歌配信。


 どれも基本的には無料だった。


「じゃあ、今日の配信はここまで!」


 ナナリーが手を振る。


『お疲れ様ー!』


『今日も無料でありがとう!』


『次の配信も楽しみにしてる!』


 配信が終わる。


 そんな光景も、すっかり日常になっていた。


 しかし――。


「マドカちゃん、次のライブについてなんだけど」


 ナナリーが屋敷の会議室で口を開いた。


「うん?」


「そろそろ、本格的なライブをやりたいなって」


「いいね!」


 マドカが即答する。


「私もやりたい!」


「私も賛成です」


 アリシアも頷いた。


「ただ、今までのようにモンバトコロシアムを使うだけでは、少し規模が大きくなりすぎるかもしれませんね」


「そうなのよね」


 リゼットが資料を眺める。


「観客を入れるだけなら問題ないけれど、音響、照明、映像、それに会場運営まで必要になるでしょう?」


「商業ギルドに任せるんだよね?」


 マドカが聞く。


「ええ。その予定よ」


「じゃあ、会場はどうするの?」


「今のところはモンバトコロシアムを使えばいいでしょう」


 リゼットが答えた。


「公爵領の新しいライブ会場が完成するまでは、そこを使うことになっているわ」


「じゃあ次のライブは、そこで決まり!」


 マドカが笑った。


「問題は――」


 アリシアが資料を見る。


「配信ですね」


「配信?」


 ナナリーが首を傾げる。


「今まで通り無料で流せばいいんじゃない?」


「今回のライブは、今までの配信とは少し違います」


 アリシアが説明する。


「長時間の音楽ライブですから」


「ああ……」


 ナナリーも気付いた。


「出演者だけじゃなくて、会場もスタッフも必要だもんね」


「音響や照明、映像の人達にも仕事をしてもらうことになります」


「それに商業ギルドにも運営をお願いするしね」


 マドカが指を折る。


「お金、いっぱいかかる?」


「かなりかかるでしょうね」


 リゼットが答えた。


「今までの配信は、基本的にエキドナの活動の一環だったから無料でも問題なかったけれど――」


 そこで資料を指差す。


「今回は、普通に興行として扱った方がいいわ」


「つまり?」


「チケットを売る」


「おお!」


 マドカが目を輝かせる。


「ライブのチケット!」


「会場へ来る人から料金をいただくわ」


 リゼットが続ける。


「そして――」


 一枚の別の資料を取り出した。


「EVでも有料配信をする」


「え?」


 ナナリーが目を丸くする。


「有料配信?」


「ええ」


 リゼットが頷く。


「会場へ来られない人にも見てもらえるようにする。ただし、今回のライブは無料配信にはしないわ」


「なるほど」


 アリシアが納得する。


「会場に来る人と、EVで見る人の両方からチケット代をいただくわけですね」


「そういうこと」


「じゃあ、EVの方はいくらくらい?」


「会場チケットの半額程度でいいでしょう」


 リゼットが答える。


「現地に来る必要がない分、安くする」


「それなら買いやすいね!」


 マドカが嬉しそうに言った。


「でも、どうやって見るの?」


「エキドナショップで配信用チケットを販売するわ」


「チケット?」


「購入すると番号が発行される」


 リゼットが説明する。


「その番号をEVに入力すると、ライブ配信を視聴できるようになる」


「へぇー!」


 ナナリーが興味深そうにEVを見る。


「じゃあ、買った人だけ見られるんだ」


「ええ」


「情報塔には?」


「流さないわ」


「後から見られるようにも?」


「しない」


 リゼットははっきり答えた。


「今回のライブは、会場に来た人か、配信用チケットを買った人だけが見られるものよ」


「それなら、特別感あるね」


 ナナリーが少し笑う。


「普段の配信は無料だからこそ、今回だけ特別って分かるし」


「そういうこと」


 リゼットが頷いた。


「今までの配信を有料にするつもりはないわ」


「そこは変えないんだね」


「ええ」


「じゃあ今回だけ?」


「特別な公演や、有名な出演者が出るような大規模なものなら、この方式を使うことになるでしょうね」


 リゼットが答える。


「普段の配信とは別物よ」


「なるほど」


 アリシアも頷く。


「そうすれば出演者への出演料や、会場、スタッフの費用もきちんと賄えますね」


「そういうことね」


「なんか――」


 マドカが考え込む。


「今までずっと無料だったから、ちょっと不思議な感じ」


「でも、無料でやる必要もないでしょう?」


 リゼットが笑う。


「仕事としてライブをするなら、それに見合う対価をいただくのは普通よ」


「そっか」


 マドカは納得したように頷いた。


「じゃあ、やろう!」


「ええ」


 こうして――。


 トライアングルの次回ライブは、初めての本格的な有料公演として開催されることになった。


 そして、その告知がEVを通じて行われる。


『トライアングル特別ライブ開催決定!』


『会場チケット発売!』


『同時にEV有料配信チケットも販売します!』


 その文字を見た視聴者たちは――。


『え!?』


『今回、有料なの!?』


『エキドナの配信で有料って初めてじゃない?』


『でもトライアングルのライブなら見たい』


『会場行けないからEVチケット買うわ』


『会場チケットの半額なら普通にありだな』


『情報塔では見られないの?』


『マジでチケット買った人だけ!?』


『今回、本当に特別公演なんだな』


 これまで無料だったからこそ、その反応は大きかった。


 だが――。


『買った!』


『俺も!』


『現地行けないからEVで見る!』


『当日楽しみ!』


 次第に、期待する声が増えていく。


 エキドナにとっても、初めての試みだった。


 そして――。


 トライアングルの特別ライブ当日がやってくる。


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