宮本流
「まぁ、私も詳しくは分かんないよ?」
マドカが少し考えながら話す。
「私が自分の前世を思い出したのは、九歳の時なの」
「九歳……」
ムサシが静かに聞いている。
「その直後に、お姉ちゃんと出会ったんだよね」
「その時に、何かに『この世界に生まれ変わらせますね。好きなスキルを選んでください』って言われてそこで時間停止を選んだのよね?」
リゼットが補足する。
「うん」
マドカが頷く。
「それ以降は、九歳からの記憶しかないの。だから地球にいた頃の歴史を詳しく覚えてるわけじゃないんだよね。学生ではあったけど軽くさらっと宮本武蔵って有名な人がいたくらいしか覚えてないね!ただ剣術家と言えば宮本武蔵って一番に出てくるかも」
「なるほど、もしかしたら、ムサシもその神か何かに出会った記憶があるのかしら?」
「確かに……何かと話した記憶がありますな」
ムサシは目を閉じ、昔の記憶を探る。
「ですが、ほとんど覚えておらんのです」
「じゃあ、ムサシも転生した時のことは曖昧なんだ」
「ええ。ただ――」
ムサシは自分の手を見る。
「自分が日本に生まれ、剣術をしていたこと、マドカの言う時代に生き、宮本武蔵であったという記憶はあります」
「そっか」
「ですが――」
ムサシは穏やかに笑った。
「ワシが日本で歴史に残る人物であった。それだけで充分でしょう」
「え?」
「今のワシは、ムサシですからな」
「じゃあ……宮本さんとか言った方がいい?」
「ムサシでよい」
「んー」
マドカは少し考える。
「じゃあムサシ!」
「ああ」
「ムサシ、かっこいいし弟子にしてよ!」
「ふははは!もちろんだとも!」
「やった!」
「ようやく決まりましたね。師よ!」
ガイルが苦笑する。
「それでマドカ。その『宮本流』というのはなんなんですの?」
「私もそれが気になる」
ムサシは少し考えてから答えた。
「第二王女よ。それは、この世界で新しく出来た流派だとワシは思う」
「この世界で?」
「うむ」
ムサシは自分の刀を見る。
「ワシが日本にいた頃の剣術と、今のワシの剣術は同じではない」
「そうなの?」
「この世界では、魔法やスキルというものがある」
ムサシは先ほどまでの戦いを思い出す。
「ワシはそれらを駆使して剣を振っておる。身体強化もそうですな」
「なるほど」
「だから、実際の二天一流とは動きが違うのだよ」
ムサシはマドカを見る。
「そしてマドカは、先ほどそれを見て、そのまま模倣した」
「うん」
「ならば――」
ムサシはステータスに表示された文字を見る。
「それは二天一流ではない」
「宮本流?」
「そういうことだろう」
ガブリエルが目を輝かせる。
「なるほどですわー!」
「私がムサシの今の剣を真似したから、宮本流になったってこと?」
「おそらくな」
「へー!なんかすごいの覚えちゃったね!」
「ふははは!」
ムサシがまた笑った。
「何を言う! ワシの弟子が、ワシの今の剣を受け継いだ証ではないか!」
「そっか!」
マドカも嬉しそうに笑った。




