マドカの体質
幻影が消えた訓練場。
しばらく、その場にいた誰もが言葉を失っていた。
やがてリゼットがムサシへ声をかける。
「ムサシ、どうかしら? 私の弟子は」
「想像以上すぎて、言葉にもなりませんな」
ムサシは、まだ先ほどまで幻影が立っていた場所を見ている。
「ふふ。そうでしょう? あの子、異常なのよ」
「お姉ちゃん、異常って……」
マドカが少し不満そうな顔をする。
「ああ、悪い意味じゃないのよ?」
リゼットが笑う。
「あなたのステータスの問題、少し分かってきたのよ」
その言葉に、周囲にいた者たちも興味を示す。
「問題ですか?」
エレノアが尋ねる。
「ええ。マドカは魔力が異常に多いけれども、外部に出すのが下手くそでしょう?」
「確かに、マドカの魔法は子供以下だな」
グレタも頷く。
「それはマドカが特異体質ではないかと考えていたのよ」
リゼットはマドカを見る。
「放出系が、ほぼ使えない。では、その放出できない魔力はどこで消費すると思う?」
「そうですねー。体内に残り続けるしかないのだったら……身体強化でしょうね」
「そうね、マドカの異常に速いスピード、体力、回復力。マドカって、怪我なんてしたことがないのよ。昔からすぐ直るのは気づいてたけれどね。」
「再生能力もあるということですかな?」
「そーだっけ?」
「さすがに部位欠損がすぐに治るというものではないけど、かすり傷程度ならすぐに治ると思えばいいわ。防御力も上がっている。もちろん、攻撃力も。常に身体強化をしている状態なのよ」
「なるほどー!疲れにくいとは思ってた!」
「そして、先ほどの戦闘ですな。異常なまでの学習能力ですか」
「ええ。目も強化されているのよ。だから観察して、それを吸収して、自分のものにしてしまう。おかしいと思わない?9歳で保護した時この子ほぼ休みなしで体動かしていたのよ?私の組んだ訓練メニューを。それに最近だとダンスなんかも早かったでしょう?」
エレノアが思い出したように言う。
「確かに、そうかもしれませんね」
「んー!何か見てると、出来そうだなって思ってしまうんだよね」
「マドカよ。それが出来るのは、天賦の才を持つ者だけなのだ」
「師よ。その代償に、マドカちゃんは放出系がダメダメだということなのですか?」
「多分だがな」
ムサシは腕を組む。
「マドカのステータスは魔力S。それで魔法があれほど苦手なのはおかしいと、私もいつも思っていましたが……そういうことですか」
「ふーん。筋肉バカとか言われなくてよかった!」
と、妙なところで安心した。
「まぁ、これは私の憶測にすぎないけど、まぁ、ほぼその通りじゃないかしら」
そして、ふとマドカのステータスを確認する。
「……あら?」
「どうしたの?」
「ステータスに、宮本流って出てるわね」
「何それ?」
マドカが首を傾げる。
「宮本?」
「ムサシ?」
「なに?」
ムサシが目を見開いた。
「宮本武蔵?」
その言葉に、訓練場の空気が変わった。




